第六十六話 魔導の塔と瞬殺の剣

瞬殺。


まさに瞬殺。

ラクスが一瞬で三体のホブゴブリンを倒した。

そもそも、ラクスが斬る時間自体は一瞬なのだ。


斬る時間だけだと毎回数秒だ。

一発で終わらせるタイプのスピードと瞬発力の戦い方だ。


ラクスの剣はそういうもので、タイミングを見つければ

一瞬で斬ることができる、そういうタイプのしなやかさと

スピードの高い剣が特徴だ。


その代わりガルクのように力の強い敵と

撃ちあうということには向いていない。

ガルクの力技は心強いときがある。


それは個性、方向性、いろいろ言い方はあるが

人それぞれに違う特徴なのだ。


それを活かして、上手く戦える方法を見つけると

今回のように瞬殺となるのだ。

圧勝となるのだ。


何度も何度も、ホブゴブリンと戦ってきて

やっと見出した。

僕とラクスの良さが最大限に生きた高い方だ。


バンドの練習なんかで、すべての楽器が揃うと

すごく気持ちがいいグルーブを生み出すというが

こういう戦いにも似ているだろう。


それぞれの良い所が良い感じに混ざり合うことにより

巨大な力を発揮する。

まさにそういう連携が取れた。


やっとこのチームでグルーブ感のある戦い方が

できるようになってきたということだ。


魔導の塔を1回から上がってきて

ゴブリンを4階まで、一人ずつ倒し

5階でキャットシーに出会い。

6階から一匹ずつ増えるホブゴブリンを倒してきたことによって

まさに、レベルの高い連携を取ることができた。


一つに、毎回信じられなくなるほどレベルがあがるので

相手を甘く見なかったということが、結構重要なのではないか。

おそろしく長い道のりをやってきたようだ。


毎階大ピンチなので、相手の隙を狙う正しい戦い方を試行錯誤している


「おーい、ナオヤ、忘れてないか!」

そうこう考えていたら、ガルクの声がした。

ガルクはもう一体のホブゴブリンと戦っていた。

ホブゴブリンとガルクの力の対決


そうだった。ラクスが倒したホブゴブリンは3体で

最初からいたホブゴブリンは4体だった。

最後に届かなかったホブゴブリンと現在ガルクが戦闘中だ。


「ああ、ごめん」

思考に集中して忘れていた。


ホブゴブリンとガルクが剣を撃ちあう。

キン、キン、キン


重い音が響き渡る。

重量級の戦いだ。

ガルクがホブゴブリンの剣を弾いた。


その瞬間

ラクスが走りこんで、ホブゴブリンを斬った。


「なんとか4体倒せたわね」


「オレのおかげだけどなァ」

ガルクは言った。


「4体目はね」

僕は笑った。

ラクスの鋭い剣戟で


「わたしの出番がなかったのです!」

「クククク、ほとんどオレもなかったら大丈夫だァ」


「次はホブゴブリン5体かしら」

ラクスは笑った。


「次はお待ちかねの1回めのボス戦だよ」

僕は、キャットシーの言葉を思い出してそう言った。

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