第七話 はじめてのダメージ

不意に襲い掛かってきた。

緑色のモンスターだ。いわゆるゴブリンだ。

ゴブリンは大きく振りかぶって、僕の肩のあたりを強く殴った。


「痛い!」


痛い、痛い、痛い、すごく痛い、とても痛い、ヤバイ、気絶する。死ぬ。お亡くなりになる。記憶を失う。

正気を保てない、意識が飛びそうになる。


と錯乱状態で何を考えているのかもわからない状態になっていた。

殴られるというのはこんなに痛いものだったのか


思い返してみれば、人に殴られた経験も当然ないし

自分も殴ったことがなかった。

格闘技をやったこともないし、喧嘩もしたことがない。

勉強やプログラミングばかりやっていたように思う。


魔法はゲームや工作みたいで、とても楽しかったんだけど

忘れていた、そうかこれは現実だった。

ゲームみたいなのは、魔法が出るという仕組みなだけで

実際にはこの身体はリアルなのだった。


VRMMOとかではなかったんだ。


とにかく痛い、意識を保てない。

そして、怒りに変わってきた。

これ以上殴られるのは耐えられない。


自分の意思ではない、怒りと恐怖だけで動いていた。


「うおおおおおおおお」


殴られた方の肩をかばいながら

ゴブリンに向かって、ファイヤーを放つ


「ファイヤー(MP大、スピード中)」


残ってるMPを全て使って炎を出した。


「あ、バカ!」


ラクスの声が聞こえたが、うまく聞くことは出来なかった。

大出力の炎が燃え尽き消えた。


「やったか?」

燃え尽きた保脳のその先を見る。


いない、ゴブリンがいない。

一体どこへ!

ファイヤーが大きい動きだったので、ゴブリンは避けていた。


「し、しまった!」


意識を振り絞って、視線でゴブリンを探した。右を見て左をみた。

緑色の物体をとらえた。

右側にいた!


みつけるのが速いか、ゴブリンが速いか


跳びかかって来た。


「うあああああああ」


これはヤバイ、これをもう一回受けたら、多分死ぬ。

異世界に来て、いきなり死ぬのか。

魔法の使い方がわかって調子にのっていたから、なんてことだ

もっと魔法の研究したかったのに。

もっと慎重にやっていれば

もっとラクスと旅がしたかったのに


僕としたことが全然僕らしくないことをしてしまった。

魔法が楽し過て夢中になりすぎてしまった。

もっと知りたかった。


と、その刹那

ゴブリンが切断されていた。

ラクスが高速に移動し、ゴブリンを一刀両断していた。


「ググググ」

ゴブリンのうめき声が聞こえるやいなや、ゴブリンは消えた。


「た、助かった」

「あ。ありがとうラクス」


と、頬に痛みが走る

「バカ!しっかりしないとダメじゃない」


ラクスが思いっきり頬を叩いていた。


なぜ、叩かれたのかがわからない。

「あなたが死んだら私は悲しいわ」

「もっと自分を大切にして!」

と胸に飛びかかってきた。もうそんな戦いかたしないでよね。


「うん、ごめん、気をつけるよ」

こころの底からそう思った。もう、こういう戦いかたはやめよう。

「ちゃんと魔法を学んでラクスと戦うよ」


僕がそういうと、涙を拭いてラクスは笑った!

「さ、反省したら明日も修行よ!」

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