ワードローブ! お祭りの夜に

★サイドストーリー

竿灯最終日の夜、フェアリーリングの3人は屋台村へ。そこには夜だというのにサングラスをかけた3人の女の子がいて……本編では触れなかったアンバサダーたちのもうひとつの物語です。



      ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



★大町エリア屋台村


 ふぅー……

 ようやく涼しくなりましたねぇ。朝から忙しくって大変でした。

 でも、夕方からはフローラのみんながステージに戻ってきて、私たちフェアリーリングの3人はお仕事が終わってから竿灯祭りにみんなで来たんです。お祭りの間、今日以外OFFの日がなくって。3人で外で遊ぶの久しぶりです。


 「りさちゃん、竿灯まつりってきたことある? 私、ちゃんとみるの初めてなんだ」


 舞ちゃんは千葉から引っ越してきたんですよね? 私は大町におばあちゃんが住んでるんで、小さいころから何度も見てるんですよ。


 「そうなんだ。彩音さんは?」

 「私は、去年は観光ボランティアしてて…… あ、ついたよ、ほら」


 彩音さんがいってた屋台村ですね。

 わ、結構混んでますよ?

 


 「やっぱり混んでますねぇ」

 「最終日ならすいてるかと思ったんだけどなぁ」

 「んー、席ぃ空いてないねぇー」



 あ、あの女の子たちも……

 あれ?

 もう夜なのに、なんで3人ともサングラスしてるんでしょう?


 「どこか、あかないかなぁ……」

 「佐竹ちゃん、あそこの6人組の席、空きそうですよ」


 サイドテールのお姉さんも席を探してるみたいです。


 あ、席を立ちましたよ。

 とられないように、それ~っ 



★仮設テーブル



 「えっと、3人組み同士だから、席を半分こしたらいいんじゃいかな?」

 「そうですね。じゃあ、こっち半分使わせてもらいますね」


 彩音さんと、サイドテールのお姉さんが声を掛け合って一緒のテーブルに相席することなりました。


 それで、席の順番で私は真ん中なんですけど、正面に私とおんなじぐらいの背の子が座ってます。でも、なんだろう? 流行ってるのかな? 夜なのにサングラスのままですよ?


 あの、サングラス、暗くないですか? 


 「す、すみませぇん、外せないんです……」

 

 ああ、そ、そうなんですか? 余計なこと言ってすみません。


 「いえ……」

 

 ………


 ……



 「3人とも、りさちゃんとか舞ちゃんと同じぐらいの感じだね? 高校生だよね?」

 「私とねぇ、この子は高校生だけどぉ、この子はまだ中学生だよぉ?」

 「そうだね。じゃあ、そんなに違わないし、遠慮しなくてもいいよ?」

 「だってぇー いいよねぇ?」


 黒髪のお姉さんが一緒のお二人にそう言ってますけど……

 なんでしょう? なんかすごい警戒されてる気が……

 あ、舞ちゃんがサイドテールの子に話しかけるみたいです。


 「……えーと、あの、秋田の人ですよね?」

 「はい…」

 「高校も秋田のですか? 学校はどちらですか?」

 「ご、ごめんなさい、お答えできないんです」

 「ええ!? あ、ご、ごめんなさい!」

 「いえ、その、こちらこそ……」


 ひょっとしたら相席が迷惑なのかな?

 他に席……あいてるわけないですよね……

 それに、なんか、さっきより混んできた気が……


 「ひょっとして、目とかに障害をお持ちとか…?」

 「ええ!? 」

 「いえ、ずっとサングラスをかけてるから……」

 「あ、ごめんなさい、そういうわけじゃないんです」


 舞ちゃん、逆に恐縮して黙っちゃいました……



 「えー、コホン。それじゃあ、私たち何か買ってくるから、そうだなぁ……りさちゃん、席を見張っておいてくれる? 何か食べたいものある?」

 

 はいっ、わかりましたっ! あの、できればお好み焼きを……


 「うん、わかった。じゃあ、舞ちゃん、いこう?」


 ――ガタガタッ


 あ、あっちのグループも……


 「よし、私たちも何か買ってこよう。わかば、席見ててね?」

 「え!? あ、私が行きますよ!? 」

 「わかばじゃもってくるの大変でしょ? いいよ、わたしが一番お姉さんなんだし」

 「す、すみませーん」

 「はいはい、何か食べたいものある?」

 「あの、じゃあ、お好み焼きを……」

 「OK、さつき、行くよ?」

 「はぁーい。まっててねぇっ」



 ――― えーっと……


 し、知らない女の子と二人になっちゃいました……


 お、お話とかしたらいいのかな……


 あ、あの……


 「は、はい!」


 あ、秋田に住んでるんですか?


 「そうですっ」


 ここから近いんですか?


 「え!? ご、ごめんなさい!」


 ええー? 


 一緒の人たちは……


 「あ、あの、ご、ごめんなさいっ!」


 それもダメなの!?


 あう……


 何をお話したら? ここまできて無視するのも、なんか変だし……


 個人情報とか今厳しいから、それでお話しできないのかな……


 ……


 …


 あ、そういうえば、個人情報ってこの前トレーニングの時……


 SVさんが「住所とか学校とか簡単に教えちゃダメ」って教わったなぁ……

 たしか、秋ぐらいからアンバサダーを増やすみたいな話も噂で聞いたし……

 ひょっとして……


 あの、ひょっとして、あなたもアンバサダーなんですか?


 「あ、あんばさだー!?」


 はい、アーニメントの……


 「ち、ちがいます! あの、アーニメントはお姉ちゃんが……」


 あれ? 違うの? 

 すごい首振って否定してますけど……


 あ、サングラス!



 ――― カタンッ


 サングラス落ちちゃいましたよ!?

 ごめんなさい、変なこと聞いたから……


 今拾って……んしょ……


 あの、どうぞ、これ……

 あ、あれ?


 「す、すみません!」


 …………


 ……


 テレビで見たことがある気がする……

 それも今日、フローラのみんなの中継を楽屋で……


 ……ひょっとして、ローカルアイドルの……わかばちゃん?


 「!? いえ! あの、その!!」


 どうしたんでしょう?

 すごい周りを見てますよ!?


 「あの、すみません、ごめんなさい、私は、その……」


 あ、そうか、そうなんだ。


 まわりの人にバレて騒ぎになるのが困るんだ。


 大丈夫だよ、周りにはバレてないですよ?

 あの、私もお仕事でテレビとか出たことあるし、大丈夫、騒いだりしません!


 「え? テレビ、ですか? じゃあ、あなたもアイドル?」


 アイドルじゃないですけど……あの、アーニメント・スタジオのアンバサダーっていうお仕事で……


 「アンバサダーですか!? じゃあ、フローラの皆さんのこと知ってるんですか?」

 

 うん、いっしょにお仕事してますよ……あれ? 知ってるんですか?


 「私、今日、フローラの皆さんに助けてもらって……それで、お礼を言いたかったけどスケジュールで……」


 あの収録のあと、ステージの予定があったんです。

 ……そのサングラス、変装のためのだったんですねぇ


 「はい。人の多いところでバレちゃうと囲まれて動けなくなっちゃうんで……」


 じゃあ、いっしょのお二人も……


 「さつきちゃんと佐竹ちゃんです。……2年ぐらい前までは街の中にいても声なんてかけられなかったんですけど……」


 アイドルって大変なんだ……

 私、まだ、テレビもあんまり出てないし、フローラのみんなみたいに全国放送の番組に出たりしたことないし、そういうことないから、気にしてなかったなぁ。


 「私も、最初の頃はそうでしたから。人気が出ることはいい事なんですけど、ちょっとさびしくなる事もあります。本当はお姉ちゃんともいっしょにお出かけしたいんですけどね」


 あの、わかばちゃん……あ、ちゃん付けとか失礼ですよね!?


 「いえ、いいんです! 私たち、同じ中学生ですし」


 え!?


 あの……私、高校生です……


 「ふえぇ!? す、すみませぇん! わたし、てっきり同じぐらいかとぉ~」


 いえいえ、そんなそんな、去年まで中学生だしそんなに違わないですよ~

 ……ふふ、わかばちゃん、なんだかかわいいですね~


 「そ、そうですか? あ、あの、フローラの王子さまのことなんですけどぉ」

 

 王子様!? 誰の事だろう……

 フローラに男の人はいないですよ?


 「いえ、王子様はきれいな女の人です! あの、背の高くて……」


 背が高い?

 いずみさんのことかな? 


 「そ、そうです! いずみさんです! あの、どんな人なんですか?」


 いずみさんのことかぁ…… いずみさんはですねぇ、元モデルさんで……

 それでね……






 ――― 10分後



 しばらくお話してたら、彩音さんと佐竹さんが戻ってきました。


 「お待たせ、りさちゃん、わかばちゃん、はい、お好み焼きだよ」


 あ、ありがとうございます……あれ?


 「ふふ、さつきちゃんたちとね、席も同じだし、じゃあ、手分けして一緒に買いましょうってことになって。舞ちゃんはさつきちゃんと一緒に飲み物買に行ったよ」


 そうなんですか。あ、わかばちゃん、これどうぞ。

 焼きたてですよ、これ!


 「そうですね! おいしそうです!」


 サイドテールのお姉さんが、不思議そうにしてます。


 「あれ? わかば、その子と知り合いだったの? 仲良いみたいだけど」

 「いえ、今、仲良くなったんです。ね?」 


 はい! 仲良くなりました!



 

 ―― お話して分かりました。

 

 テレビに出るようなアイドルさんも、普段は私たちと同じ普通の女の子なんですね。私たちも、人気が出たらわかばちゃん達みたいに変装しないといけなくなるのかな?


 ……こうやって一緒にお出かけしたりするのも大変になるのかなぁ?


 それはちょっとさびしいです……


 ……


 

 わかばちゃん、いろいろ大変だけど、お仕事楽しい?


 「はい! 楽しいですよ! りさちゃんともいつか一緒にお仕事して、それで同じスージでゅおしゅごと……噛みました」


 ……


 ふふ、そうですね、わかばちゃん。

 いつかいっしょにお仕事しようね。


 もちろん、いずみさんたちもいっしょにですっ!






★そういえば……


 「ところで、広森さん。私たち、名前教えてなかったですよね?」

 「ふふ、それはね、佐竹ちゃん。魅力的な女の子には独特のオーラがあるものなのよ? 顔を隠していてもオーラを隠すことはできないの」

 「へえぇ、すごいねぇー さつきのオーラもぉ わかったのぉ?」

 「もちろん。すぐにわかったわよ。くひっ」

 「……」


 佐竹さん、なんかドン引きしてませんか?

 

 「いや、えーと、最初から気が付いてたとか思うと……」

 「えー? 私、誰にもばらさなかったでしょ?」

 「……」


 広森さん、なんか、すごいですねー

 変装見破っちゃうなんて……

 あれ? 舞ちゃん、どうしたんですか?


 「え? なに? なにがあったの? なんでみんな仲良くなってるの??」

 

 舞ちゃんだけ、事情が分からないみたいで困ってるみたいです。

 ふふ、わかばちゃん、教えてあげても大丈夫?


 「はい。りさちゃんのお友達なら……」


 舞ちゃん、驚くかな?






     ―― あのね、舞ちゃん、実はこの人たち……






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