ワードローブ 信じるか信じないかは貴方次第

★サイドストーリー 


パークのオペレーションを体験したアウローラのメンバーたち。STARの3人は清掃する予定だったレストルームについて、いや~な噂を聞いて…… 本編では触れなかったアンバサダーたちのもうひとつの物語です。





      ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


★アドベンチャーラグーン・ブレイクエリア


 今日は朝から忙しかったなぁ~

 こまちもつばさも、さすがに疲れてるみたいだ。

 さて、今日は残すところグリーティングだけだし、一息入れたら頑張るか。



 「うー、さすがに疲れた……」


 珍しくつばさの元気が切れかけてる。まあ、さすがにしょうがないか。


 レストルームのクリンナップまでやったからね。

 さすがに、つばさも疲れたでしょ?


 「そら、ね。あー、でも、キャストらしいこと今までやってなかったし、勉強にはなったな。ほら、なにごとも経験だよー」

 「経験値! LvUP」


 こまちはいつもポジティブだな。

 でも、どうせ掃除するならもっとこう、テーマパークっぽい場所をやってみたかったなぁ。

 

 「あー、それさー。さっきSVに聞いたら、なんか最初は他の場所のトイレを掃除しようとしてたらしいよ」


 なにそれ?


 「なんかねー、掃除のお姉さんにその話したら、『そこはやめておいた方がいいですよ』って言われたって」

 

 んん?? 

 なんか、気になるな。

 それってどこの事?


 「ほら、ステージの向こうにアトラクションの出口あるじゃん? 『ジャングルトレイル・ミート&ディスカバリー』のやつの」


 あの、洞穴というか風穴だっけ? 出口そんな作りだったよね?

 

 「うん。うちが聞いた話だと、手分けしてやる予定だったみたい。いずみんたちと合流したの、それが理由っぽいよ?」


 そうだったのか。

 でもさ、理由が引っかかるよな……


 「だろ? でね、アドベンの楽屋でダンサーの先輩から聞いたんだけど、昨日の夜から、なんか怪しいことがいろいろあったらしいよ?」

 「陰謀!?」

 

 なんでそこで陰謀だよ……

 怪しいことってなに?


 「それがさあ……夜遅くにリハに行ったとき、洞穴の方から煙が立ち込めてたとか… それだけじゃなくて、その煙の中から怪しい人影が見えたとか」


 人影って……

 ホントに? なんか別の意味で怪しい……


 「聞いた話だと、なんか『ゴスロリ』っぽいシルエットだったとか……」


 なにかの見間違いじゃない?


 「霊……?」

 「まあ、そういうことなのかな?」


 ま、まさかぁ~……本当のジャングルじゃないんだし……

 でもな……噂だけなら聞いたことあるな……

 具体的な場所は知らないけど、昔、東南アジアにさまよっていた霊が、雰囲気が似たこの場所にたどり着いた……とか。なんかプロップスをアジアで買い付けてきて、その中に怪しげなランプがあって……


 「あー! あー! 聞こえない! うちは聞こえないぞー!」


  ん? あれ? つばさ、こういうのだめなの?


 「おばあちゃん、霊感強い人で、小さいころからいろいろ聞かされて……」


 いろいろ?


 「京都のおばあちゃん家の前の通りを兵隊さんが行進してる話とか、東京の親戚の家の近くでお侍さんがいつも笑ってるお墓を見かけたとか、いつも、急にそういう話するんだもん! しかも、その場所で!」


 あはは、意外だなぁ。つばさ、そういうの信じなさそうなのに。幽霊なんて何かの見間違いでしょ? 幽霊の正体見たり……てね?


 「うちもそう思うけど、ものすごい古いお墓にお花とか"のりたま"とか備えてあれば気になるって!」


 お墓にのりたま……?

 何のことだかわかんないけど、なんかこういわくありげな雰囲気だとそんな気になる時はあるな。でもさ、そういうのは結局心理学的には……


 ―― ガチャッ


 「あ、STARのみんな。朝はお疲れ様」


 あー、掃除のお姉さん。お疲れ様。

 まだ仕事してたんですか?


 「うん。今日病欠の子がいてね。私、今日は暇だったからついでに……」


 それはホントにお疲れ様ですね。


 「朝はホントに助かったわ。おかげさまで、あの後もきれいに維持できたし。ゲストから御礼言われちゃった」


 それは手伝ったかいがありましたよ。

 あ……そうそう、今そのレストルームの話をしてたんです。

 

 「昨日の夜におまじないしてるのが見えたとか。なんか煙がゆらゆらと……」

 「おまじない……? なるほど、その話ね」

 「やっぱり、なんかあるんですか!?」

 「あー、最近ね、よく出るって」

 「出るのか……」

 「うちのロケーションの子も、何人も目撃したっていうし」

 「目撃……」

 「それに、このまえ、飛び掛かってきてひっくり返っちゃった子もいたし……」

 「襲ってくるの!?」


 つばさが珍しくうろたえてる。

 いや、かわいそうだけど、ちょっと面白い。

 だって、こまち? なんか出るみたいよ?


 「お姉さん!? 目撃!?」

 「あ、私も何度か見たよ。あれは怖かった」

 「ひい!!」


 つばさ、顔青いよ?

 なに、そんなにダメなの、そういうの?

 でも、お姉さんまで目撃してたとなると……

 ホントのホント?


 「うん。それでね、最近ホントに出るというから昨日の夜から"お祓いを"ね」

 「ひえええ! あのレストルームにそんな恐ろしいことが!」



 ――― 「知ってた」



 え? こまち知ってたの?


 「目撃! 遭遇!」

 「こまちもあってたのかよ!?」

 「黒い! おっきい! 飛ぶ!!」

 「ひええええ」



 お姉さんがみたの、同じもの???


 「うん。さすがにあれは怖いよ。殺虫剤とかいろいろ試したんだけどねえ」

 「殺虫剤が効かない!? そんな狂暴な……ん? 殺虫剤?」

 「うん。トラップとか仕掛けたんだけど、あんまり効果なかったみたいでね。業者さんも煙使うしかないって。昨日の夜からファイアさんとかセキュリティの人とかが報知器止めに来たりとかしたんだ」


 ……………


 ……


 ――え?


 それっておばけじゃないの?


 「ええ!? おばけの話だったの!?」


 つばさの目に輝きが戻った!


 「じゃあ、よかった! おばけじゃないんだね!?」

 「おばけ!?」


 いや、なんでこまちまで驚いてるんだよ。

 えーと、お姉さん、つまりなんのお話なの?

 


 「……私には正直おばけより怖いんだよね。なんか他ので見るより大きいし」


 なにそれ?


 「や、だから、……イニシャルG」


  Gって、あのG?


 「チャバネじゃなくてクロの方らしいよ」


 …………………


 …………


 「ぎゃー!! おばけもGもどっちも大嫌いだー!!」


 おわ! つばさ、落ち着けって。

 うわ、本気で怖がってるじゃん!


 「あはは、しばらく大丈夫だよ。かなりがっちり駆除してたから」


 ひょっとして、それで私たちが入れなかったの?


 「うん。お薬まいた後は業者さんが作業してたし」


 なるほど……


 「うう……あのあたりでもグリーティングするのに……」

 

 おばけよりは現実的な脅威だなぁ。おばけの方がマシだった?


 「いや、その比較はおかしい」


 ……そこは冷静だな。


 

 ――ガチャ



 あ、城野さん。


 「はいはい。そろそろ次のグリーティングの準備して」


 はーい。

 ほら、つばさ、気を取り直して。


 「む―…… よし、じゃあ、トイレいってくる……」

 「あ、じゃあ、私は仕事に戻らなきゃ。じゃあ、またね」


 はーい、お姉さん、お疲れ様ー。



 しかし、幽霊のうわさも実際はこんなもんなのかな?

 まあ、知らずにトイレから煙が出てれば驚くよね……

 それにしても、こまちもイニシャルGを見てたの? そんなに大きいの?


 「イニシャルG?」


 いや、だってさっき見たって


 「見た」


 うん。そのゴキ…の事だよ


 「ゴキ?」



 ………………


 

 …………

 


 ……


 ――― ちがうの?


 「?」


 なんで首かしげるんだよ!?

 ゴキじゃないとすれば、ねずみ?


 「ねずみ?」


 ねずみでもないのか……じゃあ……?


 「?」


 見たんだよね?


 「見た」


 ねずみでも、ゴキでもないの?


 「??」


 や、だから、なんで首かしげるんだよ……


 ちがうのか……


 てことは……



 …… 


 いや、まさかね……


 ……


 つばさには黙っておこう……




 ――がちゃん!


 「さて、いくかー。うー、Gが出ませんように!」

 

 こまち、さっきの話はつばさには内緒な?


 「らじゃ!」


 「えー、なになに? うちに内緒の話かよ!?」


 さっきのGの話なんだけど?


 「ぎゃー! パスパス! 聞かないよ!」


 その方がいいよ。


 こまち、本当に見たのか……?

 いや、科学的にありえないし!

 心理学的にはそういう心霊現象には認識機能に……


 ……


 やめよう。



 こまちが、キャラでいってるだけかもしれないし。

 他の虫とか害獣の話かも。

 そうだよな、うん。

 こまちみたいな秀才キャラそういうの信じるとは思えないし……


 


 ★おわかりいただけただろうか?



 こまち:


  ――― いい子……無害……


        いつも、笑顔……

 

          翼の生えた、ゴスロリ少女……


          大丈夫、大丈夫、無害……ふふふふっ―――

          

 

                






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