追想ー5

0ー4 願い

 もう今日で何日経っただろうか。

 私は今もさまよい続けている。

 私が見える人に何度か会った。

 でもみんなすぐに逃げた。

 恐怖に顔を歪めて走っていった。

『怖いのは私の方なのに......』

 彼、彼女は誰かと話せる。

 その恐怖を誰かに話せる。

 恐怖を外に逃がせる。

『でも、私は......』

 誰とも話せない。

 誰も側にいない。

 日々頭に浮かぶ銀色の恐怖に震える。

『一人の私はそれを一人で抱えている......』

 そこで、私は気付いた。

『ああ、そうか......』

『私は、誰かと話がしたいんだ......』

 私はようやく一つの願いを見つけた。

『誰か、お話ししましょう......』

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る