第253話

「なんかさ、まえにくらべて雰囲気よくなったよね、うちのクラス」


 それはそうだ。矢野たちがいじめを全面的にやめたのだ。


 あのあとの病室での入院生活のなかで、私は矢野と何度か話しをし、こんないじめはもうやめてくれと直談判をした。


 その結果が、これだった。


 矢野は最初、不機嫌な顔をしたが、べつの遊びを見つけるからいいやといってしぶしぶ了解してくれた。


 あとはとりまき連中だが、彼らの場合、とくにポリシーなんてない。矢野がいじめをやめれば、ほかのみんなも自然にいじめをしなくなる。


 だから無関心を決めこんでいた二十数名のクラスメートにとっては、ある日とつぜん事態が改善されたというようにうつっているのだろう。


「それでさあ……」


 となりの席の女の子は言葉を続ける。


「もうすぐ終業式じゃん? それが終わったら、イヴの日にクラス全員でクリスマスパーティをやるって話しなんだけど、初乃も参加するでしょ」


 どうやらその会合は矢野たち不良グループが主催しているらしい。


 違った遊びか。


 クリスマスパーティならば健全で生産的な遊びではあるが、とうぜんのように飲酒喫煙は解禁されているんだろうな。

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