エピローグ

第252話

 半年がたった。


 私の家の事情はあいもかわらず最悪だ。私は変わらず、学校に通っている。


 アイボリーのつるつるした質感の廊下を抜け、二年三組の教室にはいる。暖房がきいている教室はウール素材のコートを着ていると汗ばむくらいの暖かさだ。


 私はコートを脱いで、それを教室うしろのハンガーにかける。そして窓ぎわの自分の席につく。


 毎日ひと桁台の寒さだというのに、クラスはわいわい騒がしい。誰も彼も元気がありあまっているといった感じだ。


 チャイムが鳴った。ホームルーム開始五分まえの予鈴である。


 教室前方のドアがひらいた。登校してきた男が私の席まできて声をかける。


「おっす。宮沢」


 おおきながたいに、つんつんの茶髪頭。


 矢野だった。


 私は「ん」とだけいって、簡単な朝のあいさつを終える。


 矢野は「さみい、さみい」と大騒ぎをしながら、教室後方の自分の席にむかう。


「ねえ、初乃」


 となりの席の女の子が声をかけてくる。

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