第225話

「うあっ」


 黒スーツの男たちのあいだでも声があがった。


 おそらくあわててよけたのだろう。がさがさとぶかっこうな音がして黒スーツの男たちが左右に散っていくのが視界の端で確認できた。


 ぶつかった。


 破裂音がした。


 横すべりしたビッグスクーターが先頭の車につっこみ、爆発、炎上した。


 目のまえの景色が瞬時、赤くなる。


 ぽかん、だ。


 私は口をあけた。目までおおきく見ひらいた。


 フリーズしていた。


 左右では私の身体にまとわりついていたちんぴらの残りが、それでも腕を引っぱり続けているが、ほとんど力を感じなかった。


 おそらく誰も彼もが私とおなじ表情をしているのだろう。


 まばたきするまもなかった。


「うおおおおおおっ」


 私の目のまえにひとつの影が躍りでた。雄たけびをあげながら、ぶっとい腕が顔のまえにフレームインしてきた。


 私の腕をつかんでいたちんぴらが束になって横に飛んだ。


 私はフレームインしてきた腕の根もとのほうに視線をやった。


 そこにいたのは。


「矢野っ」


 私専用のいじめっ子だった。

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