第200話
そのさいげんのなさには、さすがの丹波もへとへとのようだった。
どれくらい戦っているのだろうかわからないが、長時間の攻防になっているのだろう。遠くからでも、動きがにぶってきているのがわかった。
丹波の傘がじょじょに大振りになってくる。
不良がよけた。
金属質の音がきこえた。私のところまで響いてきた。そうとうな勢いだったのだろう。丹波の振った傘が手すりを全力で強打した。
丹波の目のまえにいた不良が頭を低くさげて、スイングされる傘をやりすごしたのだ。
おもいきりひしゃげた。
傘と、丹波の左腕が。
痛そう。というより私自身も腕に激痛が走った気がして、おもいきり顔をしかめてしまった。私の位置からだと折れる傘と、あらぬ方向に曲がる丹波の腕が見えたからだ。
空気が振動した。
丹波の動きが一瞬とまった。
このチャンスを不良たちが逃すはずがなかった。
殺到した。
先頭の不良が立ちあがって丹波につかみかかった。
もみあいになった。
引きずりおろされる。丹波の身体が。
やばい。
そう思った。
私は走った。
「おまわりさん、こっちです」
無我夢中ででたらめに叫んだ。
叫びながら、わざと目立つようにらせん階段に近づいていく。十メートルの距離を一気に詰める。
「やべえ」
その声はらせん階段にむかおうとしている不良少年たちの耳に届いたようだ。私の嘘を信じこんで、誰かが叫ぶ。
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