第201話

「おまわりです。おまわりがきました」


 嘘に呼応するかたちだ。


 同時に、がたがたと音がした。らせん階段のうえからだ。


 丹波とその場にいた不良数人が階段数段ぶんを転げ落ちた。


 そうとうあわてたのだろう。もともと警戒していたので反応は早かった。重なりあって二階の踊り場でとまる。


 何人かが起きあがった。


 あるものは手すりをこえて飛びおり、またあるものは残りの階段を転げ落ちる。


 丹波は動かない。倒れたままだ。


 不良たちが散っていく。


「どけっ」


 数人集まっていたやじうまの列を跳ねのけて走り去る。その場に詰めていた不良たちはものの数秒間で、ひとり残らずいなくなった。


 私はそんな不良たちの流れに逆らって、ひとりらせん階段に近づいた。ワンフロアぶんだけだが、前日のように階段をあがる。


 二階のフロアの踊り場で倒れる丹波に近づいた。


「丹波、大丈夫?」


 近づいて声をかけた。


 丹波は顔も服も血まみれで、綺麗な金髪は汗でべったりひたいに貼りついていた。


 だが、気絶しているというわけではなかった。


 階段を転げ落ちたときもしたにいた不良がちゃんとクッションになっていたからだろう。意識もはっきりしているようだった。

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