第192話
いくつかのコール音のあと、理子が着信にでた。
ディスプレイに公衆電話と表示されたからだろう。警戒心まるだしの声が硬い。
「はい」
私はいった。
「ごめん、理子。私、初乃」
まず名のった。
「ああ、なんだ」
理子の声が明るくなった。
「初乃か。びっくりした。公衆電話からかけてくるんだもん。でようかやめようか迷ったよ」
あまりにもしつこく鳴っていたからでてよかった。理子は嫌味っぽくそういった。
ちゃりんと音がして、最初の十円玉が電話機にのみこまれた。まだ十五秒くらいしか話していないのに。
私はきいた。
「今、なにしてる?」
理子はいう。
「ふつうに涼ちゃんといっしょにいるけど」
とうぜんのようにデートらしい。
「理子」
私はいった。
「なによ」
とつぜんの私からの電話に理子はまるで要領を得ないといった感じだ。
それもそうだ。番号を交換してから今まで一度もかけたことがなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます