第161話

 アルバイトが見つからないまま、そんな生活をさらに一週間続けた。


 五月の中盤。状況は、やはりなにも変わらない。


 あがりもしなければ、さがりもしない。前進も後退もなく、ただただ日々がすぎていく。


 ここまでなにもないと、ただ時間を浪費しているだけのようにさえ思える。


「それなら……」


 すぐそばのわずか上空から丹波がいう。その日も、学校帰りにいっしょに電車にのっていた。


「明日かあさって、気分転換でもしようか」


 ちょうどその日は金曜日。明日かあさってということは、土日のどちらかということだ。


 つまりデートのさそい。しかも相手は、とびきりのイケメンだ。


「ああ……」


 ふつうに嬉しい。


 だが私の場合、まだアルバイトが見つかっていない。交通費もすでにかかり始めている。先立つものがなにもない。


 返事に窮していると丹波は金髪の奥の目を細めて笑った。

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