第133話
「関係ないんでしょ、私なんか」
つい声を荒げてしまう。なんでこんなにむきになっているのか、私自身わからないが感情が抑えられない。
「怒っているよな」
丹波はそういう。
だが、たとえ私が怒っていたとしても、そんなことはこの男には関係ないはずだ。
私が怒ろうが泣こうがへこもうが、さらわれようが、キスされようが、集団に犯されそうになろうが、雨に打たれようが、バイトをクビになろうが、それは私だけの問題だ。友達ですらない転入生には、なにも関係なんてない。
私はただただいらついた。
「傷つけたこと、間違ったこと、ごめん」
「はあ?」
わけがわからない。
「なあ」
丹波はいう。
「しつこいっ」
私は叫ぶ。そういってふたたび振りむき、丹波の顔をにらみつける。きれいなふた重のなかにあるアンバーの瞳がじっとまっすぐ私を見ている。
その目がやさしい。それがむかつく。ただの軽い口約束で守るなんていわれたことを本気にしてよろこんだ。さらわれたときだって、もしかしたらなんて甘い期待をした自分がいた。そのことを思いだしてさらに腹が立った。
入学してすぐのころ、卒業するまでは決して折れないようにと自分自身に誓ったはずなのに、ひとりきりで耐えていこうと決めたはずなのに、たすけてほしいとあのとき願ってしまった自分の甘さがゆるせなかった。
その結果が、こうしてころっとだまされた。
そして期待したぶん、悔しい思いをしているのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます