第130話

「どういうこと?」


 私はわけがわからなかった。なぜ、矢野ではなく丹波が私のケータイ電話を持っているのか。


 黙っていると丹波はいう。


「おととい、屋上で拾ったの」


 ああ……


 なるほどと思った。


 あのとき雨のなか、私が先に帰ったあと、すぐに見つけて丹波が拾ったのか。どおりで屋上にいってもないし、落としものとしても警備員室にも届いていないわけだ。


 もっといえばこの学校の清掃員である母もケータイについて家でなにもいっていなかったし、矢野の机にもなかったわけだ。


 丹波は矢野たちの手にわたるまえに、私のケータイを拾って持っていてくれたようだ。


「ふーん」


 すべて理解はできた。


「ありがと」


 種明かしすれば簡単だ。社交辞令の言葉を私はなるべく感情をおさえていった。


 不思議だった。


 なぜだろう。すごくいらつく。


 丹波が拾っていたとわかったとたん、腹のうち側がぐらぐらしてきた。


 丹波の手からケータイ電話を奪って、きびすを返す。階段をおりようとする。


「待てよ」


 そんな私の手首を丹波がつかんだ。私は振りむく。

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