第34話

 最初の男のあごと私に対して背中をむけて立っている遮蔽物の肩のラインが一直線に揃った。


 いや。正確には揃いそうになった。だからきっと揃っていない。揃う瞬間、遮蔽物の肩からにょきっと金髪が飛びだしたからだ。


 今の今までしたにむかって落ちていた転入生がいきなりうえにむかってジャンプした。


 これにはさすがに見ている私も意表をつかれた。あっというまに金髪の頭が背後にいた男のあごに深く突き刺さる。ずんと空気が重く揺れる。


 湿った音がした。


 男の顔が縦にわずかにつぶれて見えた。


 だが、転入生は身体を伸ばす勢いをとめない。


 頭だけでなく顔全体が遮蔽物の肩から飛びだした。


「……っ」


 声にならない悲鳴がきこえた。


 あごをえぐられた男がのけぞる。


 腰を低い位置に落として顔を押さえる。


 伸びあがる勢いで転入生がなにかしたのだろう。正面の背中をむけていた男が沈んだ。


 遮蔽物が消えた。


 ひざからくず折れて地面に倒れた。


 ひとり目が片づいた。


 左右からきていたふたりは状況を理解し切れていない。


 判断が遅れているということが、離れた場所で見ている私にも動きのにぶさと雰囲気でつたわった。だからふたりはいまだ重力のまま地面にむかって身体をたたみこんでいる。


 そこへ。


 身体を伸ばし切った転入生が攻撃を仕かけた。


 まず左側の男の首にひじを落とす。


 男はバランスを崩す。


 あごの先から地面に落ちる。


 同時に。


 転入生はひざをあげる。不良の落下にタイミングをあわせる。


 ばっちりあった。


 そのひざが倒れこむ男の顔面に突き刺さる。


 あっけない。


 これでふたり片づいた。

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