第30話

 薄暗がりになっているので奥まではっきり見えないが、そこに人の塊がある。集団になっているといったほうが正解だろうか。どれもこれもが若い男の子ばかりだ。そこに停まっていたバイクの所有者だということがひと目でわかった。


 男の子たちはなんというか、がらが悪い。


 私の位置からでは手まえにいる数人のうしろ姿がまず目にうつった。


 どれもこれもが派手な頭にヤンキーチックな服装をしている。


 私はじっと目をこらした。


 数は五人か六人。


 詰めている集団が男ではなく男の子だと思った理由は、そのうちの何人かがどこか私の知らない学校の制服を着ていたからだ。


 と、そんなことを思っていると集団に動きがあった。


 男の子たちが散開した。


 だしぬけだった。


 路地の奥にむかってばらけて、輪をつくるように広がった。


「なあ」


 おそらく入口近くにいるからだろう。路地からの声が、のぞきこんでいる私のところにまできこえてきた。


「やっちまおうぜ」


 それはヤンキーたちの嘲笑するような声だった。


「こいつ……」


 その一連の男の子たちの動きとせりふで、なんとなくの状況がわかった。


 おそらくヤンキーたちはもめている。

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