第18話

 私はさらに担任の言葉から頭のなかをサーチした。


 アイリッシュ系ということは、もとアイルランド人。ヨーロッパ北部にある国アイルランドからアメリカにわたった民族だ。


 となると、彼はその血が混ざったクオーター。ならばやはりコーカソイドのイメージも間違いではない。


 たしかアイリッシュ系のアメリカ人というやつは、気性が荒いというイメージが私のなかでなんとなくある。


 さらに担任はざっと続けて転入生を説明した。


 その説明によれば、丹波の両親(といっても彼の家は片親なので母だけだそうだが)は、ごくごく最近、日本から祖母の家のあるアメリカに引越したのだそうだ。


 理由はふせられていたのか、説明がなかったのでわからないが、急に決まった引越しだそうで、この転入生はこれまた理由がわからないが結果的に単身日本に残ることになったのだという。


 今まで母とふたり暮らしをしていた借家をでて、ひとりでアパートを借りた。そのついでに学校も変わることにした。


 その結果がこの転校だそうだ。


 どおりで、こんな四月末なんていうへんてこな時期に転入してくるわけだ。それも編入のための受験までしたというのだから、なんというかとんでもない。


 たまたまうちの学年に定員があいていたのかもしれないが、それでももっと気楽にはいれる公立高校なんていくらでもあっただろうにご苦労なことだろうと思う。


「とりあえず」


 担任が教室奥に指をさす。

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