第12話
天野くんは高校一年のとき、外部から入学してきておなじクラスになった理子にひと目惚れをして告白してつきあったらしい。いじめられっ子の私と理子の差はスタートからずいぶんとひらいているのだ。
「あーあー、びしょびしょじゃん。あんた」
そういって心から理子は心配してくれる。
「タオル貸してあげるから、ちゃんと拭きなさい」
鞄のなかから自分のハンドタオルをだした。おおきく広げて、私の髪をわしゃわしゃしてくれる。理子のそのやさしさに嘘偽りはない。
「これもつかっていいよ」
となりにいる理子の彼氏もポケットからだしたハンカチを私に貸してくれた。すごく嬉しくて、ありがたいことだが、やはり私と彼らはクラスが違う。こういう場でしか仲よくしてくれない。ドライで薄い関係。それが暗黙のルールなのだ。
「まったく」
ポーズだけで理子はぷりぷりする。そして天野くんに話しを振る。
その後、理子と天野くんは私を蚊帳(かや)のそとにおき、ひとこと、ふたことその場で会話のやりとりをした。
内容は「なんとかしてあげなよ」という旨を理子が天野くんにいい、それに対して「無理いうなよ」と彼氏が返事をする、いわばテンプレートの社交辞令だ。無関心の距離感といってもいいだろう。
「涼ちゃん、まえにやられて怪我したもんね」
理子がいうと、その話はやめてくれよと天野くんがいう。いちゃいちゃ。そんなふたりの姿を見て私は苦笑いするしかできない。
「とにかく」
理子がいう。
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