第11話

「あっ」


 続いて階段のほうから声がきこえた。今度は男の子の声だ。


 私はこの声のぬしを知っていた。これは私と理子のおおきな差のひとつ。なんといっても理子は大満足の学校生活を送っている。その証拠に、理子のとなりにはいつも男の子がいるのだ。


「おはよう。宮沢さん」


 そういってひとりの男の子が理子のあとから階段をあがってきた。のぼりきって理子の横に立つ。


 名前は天野涼あまのりょう


 ほっそりした長身で、髪は黒のヴェリーショート。セルフレームのめがねをかけたやさしい顔のさわやかさん。声がちょっと低めでかすれていて、そのギャップがかっこういい。うっすら濡れている私に気づいてたずねてくる。


「またあいつらに?」


 天野くんは、そういって心配してくれるが、それだけだ。とくになにもしてくれない。


 もともと内部の生徒である彼が矢野たちに注意することはもちろんできないし、だからといって私を守るためにおおっぴらに私と仲よくしてくれることもできない。


 そんなことをしようものなら、自分が矢野たちのターゲットにされる可能性がでてくる。

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