【六章後半①までのあらすじと登場人物】
*ここまでのストーリーのネタバレが多く含まれています。直前話までご高覧いただいたのちに、閲覧することをおすすめいたします。
ムスタール軍を撃破し、仲間たちが続々と氷狼騎士団の砦へと合流する。
そんな中、ブレイヴの元にとある要人が訪れる。彼はクレイン家の一族であり、クレイン家は聖騎士に力を貸すという。数年前に侯爵を失ったクレイン家には後ろ盾となるものがなく、さらには聖騎士にイリア・ルーファス・クレインを救出してほしいと要望する。ルーファスは王女レオナの傍付きだった騎士だが、ムスタールに留まり現在はムスタール公爵家に囚われている身である。
一方、王都マイアの白の王宮では元老院が聖騎士フランツに出陣を迫っていた。
老将軍オルグレムの裏切りにムスタール公爵ヘルムートの敗北など、予期せぬ事態に元老院は焦りつつも、ランツェスやオリシスに聖騎士討伐を命じる。元老院のやり口に嫌悪を覚えつつも、王の盾としてフランツはおなじ聖騎士であるブレイヴを迎え撃つために動き出す。
そしてブレイヴの祖国アストレアでも、叛乱軍討伐の王命が届けられていた。
白の王宮の監視下にあるアストレアには、かつてブレイヴの上官だったランドルフが居座っていた。蒼天騎士団を率いる団長トリスタンはブレイヴの母エレノアの騎士である。我が子と戦うことを迫られたエレノアの心中を推し量りながらも、トリスタンは出陣を決意する。
白騎士団が本格的に動き出すより早く、ブレイヴたちは南へと出立する。
ルダやオルグレム将軍の騎士団、氷狼騎士団やクレイン家の参戦に加えて様々な仲間が集ったこの集団は叛乱軍ではなく連合軍と呼ばれていた。
治療部隊や
ルダの公女アイリスたちと行動をともにするレオナは、戦場にてディアスと邂逅する。
西のラ・ガーディアで別れたディアスはランツェスに戻り、その後王命にて聖騎士討伐を命じられたのだった。ディアスの異母兄ホルストは、独断で北の敵国ルドラスと協力関係を築いたものの、彼らの父親である公爵はいまも変わらぬ忠誠を王家に誓っている。むずかしい立ち位置に置かれたディアスを前にして、レオナは一歩も退かずにルダとともに戦う。それは後衛部隊を守るための時間稼ぎでもあった。
複製部隊を任されていた異国の剣士クライドは、功を焦る新兵たちを止められずにいた。勝手に戦闘をはじめた新兵たちは白騎士団の策に嵌まってしまう。壊滅を避けるために、おなじ部隊に属するフレイアとともにクライドは戦った。
やがて戦況がブレイヴのところにも届く。
混沌とする戦場で聖騎士を守るために戦う仲間たち、軍師セルジュは撤退を申し出る。しかしそれにはしんがりを務める者が必要であり、オルグレム将軍の他に適任者はいなかった。
氷狼騎士団の砦まで後退したブレイヴは、合流したグランの王子レオンハルトにこの敗北を責められる。竜騎士部隊が間に合わなければ後衛部隊は全滅し、彼の妻であるアイリオーネまで失うところだった。
助かった者もいれば失った者もいる。皆を逃がすために残った老将軍オルグレムは
打つ手がなくなったかのように見えた連合軍だが、白騎士団は突如撤退する。
イレスダートより南に位置するユングナハルが動き出したからだ。国土の大半を砂漠に覆われたユングナハルは
ブレイヴの騎士ノエルは、アストレアの蒼天騎士団と接触するために
しかしその途中で奇妙な現象を目の当たりにする。蒼天騎士団の騎士たちが森のなかで眠りこけていたのだ。何かの罠を疑いつつもノエルは祖国の仲間たちを捕縛し、これにて蒼天騎士団との戦闘は避けられたのだった。
オリシス公爵アルウェンの妹ロアは、王命に従い聖騎士の首を狙っていた。
まだ若く実直な騎士であるロアは兄を殺したのが聖騎士だと疑わず、
ルダの魔道士部隊でも戦闘がはじまる。広範囲の無差別攻撃はそこに王女レオナがいるとわかっていて、彼女だけは助かる見込みで放たれた魔力だった。激しい攻防戦のあと、白騎士団がレオナとアイリスたちに降伏を勧告する。しかしレオナは王女の声を持って、白騎士団を下がらせたのだった。
ブレイヴと白騎士団との戦いが激化する中で、ムスタール公爵ヘルムートは未だ動けずにいた。
叛乱軍との戦い破れたヘルムートは一命を取り留めたものの高熱が続き、体力を著しく失う。王命に従うために戦場へと戻ろうとするヘルムートだが、酷使した体は彼に自由を許さず、いまのヘルムートは病人に等しい状態だった。
ヘルムートの妻コンスタンツは、白の王宮からの要望を夫に伝えずにいまはとにかく身体を休めるようにと虚言する。叛乱軍は王都マイアに近付きすぎているため、まもなくこの戦いも終わりのときを迎えていた。
軍を王都へと進めるブレイヴにマイアの騎士団が襲い掛かる。
厳しい戦いをつづけてきたブレイヴの剣がついに折れたそのとき、また一人の友が参入する。ウルーグの鷹エディ。彼はここに来られなかったフォルネやサラザールの思いも背負って、ここまで駆けつけたのだった。
そしていよいよ聖騎士と聖騎士が相対する。
ブレイヴの声はフランツへと届かず、最後の戦闘がはじまるまさにそのとき、現れたのは彼らの王だった。
アナクレオンはイレスダートの未来のために、アストレアやルダに犠牲となるように声を落とす。すべては北の敵国ルドラスと戦うために必要な戦力として、聖騎士ブレイヴが贄となる。絶対的な主君の前に声を失うブレイヴだったが、レオナはこのアナクレオンを偽物だと見破っていた。
魔力を解き放ち、正体を現したのは竜。
敵味方と入り乱れていた戦場で、彼らは力を合わせて竜と戦う、しかし圧倒的な力で人間を蹴散らす竜の前には刃が立たず、ブレイヴを庇ってレオナは深手を負ってしまう。絶望するブレイヴに届いたのはやさしく諭す声。本物のアナクレオンはブレイヴを立ちあがらせ、ふたたび竜へと立ち向かう勇気をあたえてくれたのだった。
【登場人物紹介】
ブレイヴ
21歳。ブレイヴ・ロイ・アストレア。主人公。イレスダートの聖騎士。イレスダートを追われたあと、西の大国ラ・ガーディアや山岳地帯のグラン王国の要人たちと誼を結んだ後、イレスダートへと帰還。
レオナ
19歳。レオナ・エル・マイア。ヒロイン。ブレイヴの幼なじみ。イレスダートの王女。上の兄妹二人とは母親がちがう側室の子だが、
ディアス
22歳。ディアス・ブラッド・ランツェス。ブレイヴとレオナの幼なじみ。赤い悪魔の異名は士官生時代に付けられた渾名。
アナクレオン
30歳。アナクレオン・ギル・マイア。イレスダートの王。レオナの異母兄。
ソニア
22歳。ソニア・リル・マイア。イレスダートの王女。レオナの異母姉。八年前にガレリアとルドラスのあいだにて消息を絶っているが……?
セルジュ
28歳。ブレイヴの軍師。
アステア
16歳。魔道士の少年。セルジュの弟。
レナード
18歳。アストレアの騎士。
ノエル
18歳。アストレアの弓騎士。
ルテキア
20歳。アストレアの騎士。レオナの傍付き。
シャルロット
14歳。オリシス公爵の養女。
デューイ
22歳。自由都市サリタで出会った青年。旅の案内役を務めた。
クライド
21歳。異国の剣士。砂漠の国ユングナハル出身だが、各地を放浪している途中でブレイヴと出会い、その後も同行を続ける。
フレイア
18歳。フォルネの王女。同行する理由はブレイヴの借金の取り立て。
クリス
23歳。白皙の聖職者。フレイアの従者。
フランツ
27歳。白騎士団の団長。ブレイヴとおなじく聖騎士。王の盾として王都マイアから離れられない。
ロベルト
21歳。氷狼騎士団を率いる将軍。ブレイヴとは士官学校で同室だった。
ヘルムート
33歳。ムスタール公爵。黒騎士ヘルムートの異名を持つ。
コンスタンツ
24歳。ムスタール公爵の妻。
ルーファス
24歳。レオナの傍付きとして付き従っていたが、王命に従いムスタールに残る。その後、教会に軟禁状態のところをコンスタンツに救われる。
アイリス
19歳。ルダの公女。アイリオーネの妹。
アロイス
15歳。ルダの公子。アイリオーネとアイリスの弟。
マリアベル
24歳。イレスダートの王妃。身重の状態でイレスダートの北部ルダへと預けられる。
バルト
アナクレオンとマリアベルの息子。イレスダートの王子。産まれて半年くらいのやや子。
オルグレム
62歳。王命によりルダ侵攻を任された老将軍。マリアベルの伯父。
レオンハルト
23歳。グランルーザの王子で竜騎士。ブレイヴより三つ上の友人。声が大きいし説教が長い。
アイリオーネ
22歳。レオンハルトの妻。ルダの公女。
セシリア
21歳。グランルーザの王女でレオンハルトの妹。
エレノア
42歳。ブレイヴの母。亡き夫に代わってアストレアの城主を務めている。
トリスタン
32歳。アストレア蒼天騎士団の団長。エレノアの騎士。
ランドルフ
44歳。城塞都市ガレリアにてブレイヴの上官だった騎士。王命により、自由都市サリタの攻略を任される。ブレイヴとの確執はつづいている。
仮面の騎士
ランドルフの
ホルスト
27歳。ランツェスの公子。ディアスの異母兄。
エセルバート
年齢不詳。ガレリア侵攻の際にルドラスを指揮していた聖職者。ランツェスを監視している。
オスカー
25歳。ディアスの麾下。ランツェスの名門パウエル家の跡取り。
アルウェン
30歳。オリシス公爵。白の少年によって、暗殺される。
テレーゼ
20歳。アルウェンの妻。
ロア
18歳。アルウェンの妹。オリシス騎士団を引き継いだ。
シオン
33歳。西のラ・ガーディアが国のひとつイスカの戦士。獅子王スオウの妻女。
エディ
17歳。ウルーグの鷹。西のラ・ガーディアが国のひとつウルーグの王子。
ランスロット
22歳。敵国であるルドラスの騎士。銀の騎士の異名を持つ。ブレイヴとの密会後、ルドラスの覇王に講和の声を届けると約束する。
エルレイン
19歳。ルドラスの王女。王家の姫君であるが庶子の子のためか、王都から離れたところで暮らしている。上の兄たちが病や戦争で死んだため、王位継承者第一位である。
オリエッタ
15歳。エルレインの妹。我が儘な気質は兄たちに甘やかされて育ったためで、俘虜としてルドラスに連れて来られたウルスラを敵視している。
ウルスラ
16歳。ランツェスの公女でホルストとディアスの妹。独断でルドラスと同盟を結んだ兄ホルストにより、ルドラスに送られた。
ユノ・ジュール
白の少年、または白の司祭。
イシュタリカ
女神の名を持つ魔女。ユノ・ジュールと行動を共にしている。
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