1年1組は妖怪学級!
梨香
1年1組妖怪学級
第1話 1年1組妖怪学級
大阪のど真ん中にある月見が丘小学校には、少し訳ありの子ども達が通っている。もちろん、普通の人間の子ども達も通っているが、ドーナッツ現象で人数は少ない。訳ありの子ども達は全校生徒の3分の1を占めている。
桜が満開の4月に、月見が丘小学校に元気な新1年生が入学した。1年2組と3組は普通の人間の子どものクラスだ。1年1組は、妖怪や半妖怪の子ども達が、2年生になるまでに人間の社会に馴染む練習をすれクラスだ。
「みなさん、おはようございます!」
大阪の小学校なのに、標準語で挨拶をするのは、色白で寂しげな美女の
「先生! おはようございます!」
号令を掛けた、少し目がつり上がったハキハキとした女の子が、級長の
月見が丘小学校の先生は、妖怪の子どもたちを人間社会で暮らせるようにしたいと考えるぽんぽこ狸の田畑校長先生の理念に賛同した先生ばかりだ。普通の人間の子ども達や保護者も、訳ありの子ども達が通っていることを承知している。妖怪の子どもたちを受け入れる事が無理な保護者や子どもたちは、他の小学校に通っている。
1年1組には、半分妖怪の子どもたちもいる。両親のどちらかが人間だったり、祖父母の誰かが妖怪だったり、人間社会に溶け込んだ家族がいる生徒は、割りと失敗は少ない。
しかし、両親とも妖怪の子どもたちは、その特徴によっては、なかなか人間社会にとけ込めない場合もある。
猫娘の珠子ちゃんは、純粋な妖怪だが、人間社会によく馴染んでいる方だ。人並み外れた運動神経と、聴力の良さはあるが、ごく普通の女の子に見える。
そう、女の子はしっかりしているので、化けの皮が剥がれることは少ない。
「銀次郎くん、耳が出ていますよ」
鈴子先生は、国語の教科書を読ませながら、教室を回っていたが、ゴンギツネの銀次郎くんの席の横で、小声で注意する。
「わぁ! 今朝は尻尾をちゃんとしまえたのに!」
慌てて耳を隠すが、今度は尻尾がポンと出てきた。
「銀次郎くん、尻尾が出てるでぇ」
お調子者の河童の九助くんが騒ぐものだから、銀次郎くんは余計に慌ててしまう。鈴子先生は、静かに! と騒ぐ生徒に注意する。
「銀次郎くん、落ちついて深呼吸しましょう」
白い顔の銀次郎くんは、真っ赤になっていたが、数回深呼吸して、尻尾を隠した。
鈴子生徒がやっと授業を進めた途端に、キンコンカンコンと休憩時間の鐘が鳴る。
『一時間目の国語は、全然進まなかったわ……』
昨夜、今日の授業をどのように進めるか、鈴子先生は考えてきたのだが、第一段階の本読みだけで終わってしまった。教えるべき内容まで進んでいないのを苦にする。
ぽんぽこ狸の田畑校長は、新米の鈴子先生には1年1組の妖怪学級の担任は荷が重いのでは? と心配そうに授業の様子を眺めていた。
「米倉PTA会長の推薦でしたが、新米の鈴子先生では無理かもしれませんね。ベテランの先生でも苦労されるのですから……」
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