この物語を一読して感嘆したのは、丁寧な描写です。情景描写と人物描写を結びつけて書き出すことで、作中の登場人物たちが生き生きと描き出されています。メンデーレフ夫人(のちの老夫人)が感情を露わにするあたりの描写などは、本当に秀逸に感じました。
この物語の前半は、ゲルマ爺さんという人物が主人公です。彼がいかに本好きであったかが、その半生を通して語られます。
そして、後半ではその孫であるテルルの物語となります。本の虫である彼が、ひとりの少年と出会い……その続きがどうなるかは、皆さんの目で確かめてください。
祖父から孫に受け継がれるもの。少年が知識を得て、大人の階段を一歩登る過程。それらが鮮やかに、そして丁寧に描き出された物語です。最新話の末尾に「おわり」と記されているため、これで完結なのでしょうが、個人的にはテルル少年がこの先どうなるのか、それが非常に気になります。