暁桜編〈DOLL服研究班〉
祥焔のマンション、その一室。
薄明りの中、起動した祥焔のDOLL“白雪”が声を発する。
『……………祥焔(かがり)、起きて』
最近流行りのアプリでDOLL機能の一種、“Always together(いつも一緒)”で、声の主、緋織の言葉を伝える。
このアプリは相手の名前を言うだけのリアクションで、承認なしにお互いの音声や画像を伝えられる機能だ。
「……ん、どうした?」
シングルベッドにくたびれたジャージ姿という、残念な出で立ちで寝ていた祥焔が、眠たそうに起き上がり、それを感知した天上のLEDライトがゆっくりと明るさを増してくる。
『……あきれた。なんて恰好で寝てるのよ。せっかくの美人教師が台無しよ? 生徒が見たら幻滅されちゃうわ』
「ほっといてくれ。高校で緋織(おまえ)に出会ってからとっくに“女”は辞めた」
ベッドの上で頭をボリボリ掻く姿はまさにボスザルのようだ。
『……まったくもう。まだそんな事を、……あなたみたいな真っ直ぐな人に好かれるほど私は清くも正しくも弱くもないの。知っているでしょ? 私は虐待する実の父親を貞操と引き換えに「止めろ!! 口にしなくていい」……祥焔』
「そんな話はいい。それよりこんな夜更けにどうした?」
祥焔があぐらをかいて白雪に向き直る。
『ごめんなさい。そうだったわね。実は今日、“八咫鏡(ヤタノカガミ)”にprimitive(プリミティブ)からの感情逆流(マインドリバース)があったの』
祥焔が口に拳を当て、怪訝そうに聞き返す
「うん? まさか“天の岩戸”が開き始めたのか?」
『そう。そして今日はどんな高度なA・Iでも成しえなかった、本来はあり得ないはずの感情が観測されたわ』
「……どんな感情だ?」
『“生存本能”よ』
「な!!……んだと? 本当か?」
『ええ。事実よ』
「……A・Iに“生”を教えることはできる。だが、それは単にプログラムによる行動パターンの一種の従属(トレース)と一緒で、真に“理解”させるのは不可能とされていた事のはずだ」
『その通りよ、だから私はprimitiveと八咫鏡を同調接続(ミラーリンク)させてみた』
「脳波接続か。……その昔、α(アルファ)波を人工的に発生させることで、気分をリラックスさせたり、果ては超能力の開発なんて馬鹿げた事までしていた原理の応用だったな」
『そうね、相手が“意識のある”状態では、微々たる影響しか与えられなかった。でも意識のないprimitiveと八咫鏡なら互いに大きく影響すると私は考えていたわ』
「そうか。お前の理論が実証されたと言う訳か。大昔、ヘレンケラーが“水”を理解したように、ついにA・Iも“生”を理解したか」
祥焔は腕を組み、大仰にうなずく。
『そう。――それで祥焔には、これから“八咫鏡”の情報を一部流すから、つぶさに観察して貰いたいの』
「平凡な公立高校の安月給教師にはちょっと荷が重いか。とはいえこの事の電脳界における付加価値は計り知れないな。――判った、引き受けよう」
『ありがとう祥焔。……本当なら開発を進めていて、もうじき完成する軍用DOLLにやらせようと思ったけど、予想以上に八咫鏡の感情変化が急激で、DOLLの完成が間に合いそうもないの』
「軍用? まさか緋織、“あの理論”も実践したのか?」
祥焔が立ち上がり、興奮気味に問い詰める。
『……彼が水上――“水の神”なら私は“水の悪魔”ね』
白雪からは諦めた様な、あるいは悟ったかのような緋織のつぶやきが漏れる。
「バカな!!、お前は自分の手を血で染めて、そんなにまでしてあの男に尽くすのか!!」
ベッドを平手で叩き、白雪がピョコンと跳ねる。
『そうよ。だから“あの人”が生涯大切にしてきた彼女を、“そっちの世界”にいる祥焔や彼らに見守って欲しいの』
祥焔の激昂には反応せず、淡々と答える緋織。
「それでお前は報われるのか?」
緋織の反応に軽く肩を落とした祥焔が力無げに聞き返す。
『さあ?、どうかしらね』
「愚か者め……」
祥焔が今度こそガクリと肩を落とす。
『****…………祥焔にはこれからの事もあるし、彼の近所に家を買うからプレゼントさせてちょうだい』
緋織が何か言いかけたのか、白雪が口をパクパくさせるが、動き始めた白雪の口から出た言葉からは感情が読み取れなかった。
「はっ!! さすが数々の闇特許のノウハウを軍に売っている科学者は、経済状態がケタ外れだな!!」
両手を開いてオーバーリアクションで緋織を責めるように言う。
『そうよ。様々な権限もね。それだけこの計画は私達にとって重要なの』
だが緋織は決然と答える。
「ちっ、すべて納得ずく(all-or-nothing)か……はぁ、、、判った。野郎の監視(ノゾキ)は趣味じゃないが仕方がないな」
唇を噛む祥焔に、下を向いた白雪から、愁いを帯びた口調で緋織が答える。
『…………もし輪廻転生があるなら、私が母親の羊水に包まれることは未来永劫ないでしょうね』
翌朝。
「……わたし、“DOLL服研究班”に入ろうと思うの」
チャリの後ろに乗る涼香が呟く。
「おお? そうか。なら付き合うから入部を申し込む時は、一緒に行くときは声をかけてくれ」
「ふふ、もうお兄ちゃんは心配性なんだから♪」(ぎゅうっ)
「当然だろ」
そんな朝のやり取りから、この二日間何事もなかったように日常に戻る。
フラれたことを単純に割り切れるわけではないが、様々な苦難を共にした俺達には、そんな事すら些細な出来事になっていた。
(ふ、もう本当の兄妹だな)
おそらくは、これこそが涼香の望んだ落としどころなのだと思う。
そのやり取りを、チャリのカゴで聞いていた“さくら”と“一葉”が笑いあっていた。
学校に着き、左腕のツインを使い、フローラと圭一にもその件を伝えると、二人も付き合うという。
『じゃあオレも一緒に行って、人見知りの涼香が他人に立ち向かう雄姿を拝ませてもらおうか』
と、面白がるのは圭一。
『ほう、涼香がな。土日にずっと一緒だったようだが何かあったか?』
と、共有(GPS)情報履歴から鋭くツッコんでくるのはフローラ。
「ん、まあね。“一葉”にブルーフィーナスの主人格(メインパーソナルキャラ)を入れたから、色々とインスピレーションが刺激されたみたいだ」
フローラのさすがの洞察力にドキリするが、詳しく説明すると、薬品事故で裸にした(ひんむいた)事とか、幼い頃の事まで話が及びそうなので適当に受け流す。
(まあ、フローラには話してもかまわないけど、俺だけの事じゃないからなあ……涼香に聞いてみていずれ話そう)
――そうして放課後。
四人で待ち合わせ、“DOLL服研究班”の部室に向かう。
「さて行くか」
そう声をかけてきたフローラの今日の服は、“阿南には無い駄仏”とか意味不明な日本語のロゴが背中に描かれた、ウエスタンショートジーンズの上下に、ほとんどブラジゃーの様なバスト下10センチくらいの、真っ白でフリフリなキャミソールを着ていた。
目立たない青系のワンピースの涼香に、太めの鎖付きダメージスラックスと、襟を立てた赤いシャツの圭一、ジーンズと白黒横ラインポロシャツの俺。
そんな俺達とは対照的な彼女を見て思う。
(……“息をのむような美人”ってフローラの為の言葉だな、本当に)
„~ ,~ „~„~ ,~
DOLL服研究班、通称(DOLLコスプレ)Dコスは二部門あり、デザインを主に担当するデザインチームと、制作担当のお針子チームがあり、最初のうち、一~二年生の時はそれぞれ得意な方面のチームに所属する。
「涼香はデザインとお針子、どっちに入るつもりだ?」
部室前に立ち、あらかじめ聞いてみる。
「わっわたたししは、おっ、、はは針子ののほっ方へへ、、いいいい行ここうととオオ思うっ……」
その返答にみんなとひとしきり笑い、お約束を実行。
(まったくコイツは…………)ナデナデ。
そうして落ち着いた頃、深呼吸して涼香がドアをノック。声をかける。
「すっすすすっっいませ(ガラッ)あひゃ~~~~~~~~!!!!!!(ピシャン)………………(ガチャリ)」
涼香が声をかけた瞬間、引き戸が開いたかと思うと、二人がかりで腕を掴まれた涼香が、エコーを響かせつつ、あっという間に部室に引きずり込まれてしまい、俺達を締め出したまま扉も閉まるとそのままカギをかけられてしまった。
「「「……………………………」」」
あまりの早業に呆然とする俺達3人。
「…………はっ!、って涼香! オイこら! なんで涼香だけ拉致るんだ~~!」
扉をバンバン叩くが返答はない。それどころか、モノがひっくり返るような音と、涼香の悲鳴が聞こえる。
『ひゃ~~~~!!、うきゃ~~~~~!!』ドタンガタン
それらに混じって他の女子の悲鳴も聞こえてくる。
『イタ~~~~~! なにこのDOLL、人に向かってライトスタンかましてくる~~~~!!』
『~~~~どっDOLLは厚手のビニールで包みとれ!!』
『ひゃ~~~!! はっ、はいっ!! ハンチョー!!』
『涼香に寄るな!! 無礼者!! 次は最大出力(マキシマム)で、あっっ……モガモガ』
「オイ! Dコス!! 涼香に何やっているんだ! 開けないと扉を壊すぞ!」
「そうだゼ! 今すぐ開けやがれ!」
『まずいわ、あの連中はやるわよ!! ハンチョー』
中からの会話にフローラが答える。
「その通りだ! あと5秒数えるうちに開けろ! 5…4…3『まっ、待て、危害を加えてるんじゃない!!』…………………どういうことだ?」
『男子禁制にしたいだけだから、フローラ君だけなら入ってもいい』
「「「……??」」」
三人で顔を見合わせると、フローラが答える。
「判った、開けろ。……じゃあ裕貴と圭一は待っててくれ」
「まあ、フローラが入るならいいか、なあ圭一」
「ああ、俺をノした金色夜叉(シャインデビル)だもんな。問題ない」
「ふっ、任せろ」
『じゃあ開けるわよ』
ガラガラッ
扉が開き、フローラが入るが、二人が黒い布を掲げて奥が覗けないようにされ、中を覗くことができなかったが、その頃には騒ぎも収まっていた。
「「…………………………………………………長いな」」
カタカタ、ガタガタと物音がする工作室の廊下で待つ。
この班は班員が多いので、二部屋分のスペースのある工作室を使い、さらに物置用の専用班室もプレハブ棟に持っている。
工科系学校の班の花形で数々のイベント参加や入賞実績を持っているので、学校側にも絶大な影響力を誇っている。
涼香がそんな班の班長のお眼鏡にかなったというのだから、俺らにしても興味津々だ。
ガラガラッ
「待たせたな。いいぞ」
扉が開き、笑っているフローラが声をかけてきた。
「待ったゼ~~」
しびれを切らしていた圭一が先に入り、声をあげる。
「おおおっ!!」
「どうした?」
圭一の後ろから前を覗き込むと、そこには。
まったく同じデザインの、純白のウェディングドレスを纏(まと)った涼香と一葉が居た。
涼香の方は鏡を呆然と見つめ、一葉はそんな涼香の周りをグルグルと回り、撮影しているようだった。
そんなドレスのデザインは、ビスチェドレスタイプで、バストのすぐ下から床まで三角に広がったスカートは、肌が見える位の薄いレースメッシュで幾重も重なり、その下の下着の様なアンダーは、スリーインワンの純白で統一されていた。
「「……………………………」」
「どうした? 二人とも! びっくりして声も出ないか?」
フローラがニヤニヤしながら感想を求める。
「ヤッタ~~!!はんちょー!!! イェ~~~~イ!!!」
やたらテンションの高い中背ポニテ女子が、はんちょーと呼ぶ大柄な金縁メガネワンレン女子にハイタッチを求めた。
「ああ、見慣れた男子二人の反応がコレなら、今期のドールショーのテーマはやっぱりコレで決まりだな」
その女子に応じつつ、安堵したように淡々と答える。
「よし! みんな! 今期のテーマは“ウェディング”に決定だ。頑張って秋のショーに向けてガンバろー」
「「「「「「オ~~~~~~!!!!」」」」」」
そうして周りにいた10数名の班員が散り散りになり、それぞれパソコンや縫製台やミシンに向かって作業を始めた。
そうして部屋の真ん中に俺達4人と班長とポニテ女子が残されると、班長呼ばれていた女子が衝撃の宣言をする。
「涼香君ようこそDOLL服研究班へ、早速だが君には副班長のポストについてもらう」
「「なんだって~~~」」
「What??」
俺、圭一、フローラが声を上げる。が、当の涼香が微動だにしない。
不審に思い声をかける。
「涼香? どうしたおい!! っておわあ!!」
ユラ~~ッと倒れ始めたので、慌てて抱きかかえる。
「……はあ、今の宣告で気を失ったわ」
一葉がブーケを持った手でベールを取り、抱えた涼香の上に飛び乗ってきた。
„~ ,~ „~„~ ,~
仕方なく、涼香を長椅子に寝かせ、代わりに話を聞くことにした。
「じゃあ一葉、涼香が気が付いたらこの話をしてやってくれ」
「判ったわ」
「じゃあまず自己紹介だ。私が“DOLL服研究班”班長、工業デザイン科3年の“湖上舞乱華(こがみまい らんか)”こっちがマネージャーの工業デザイン科2年の“熊谷灯吊(くまがい ひつり)”だ」
金縁眼鏡女子が班長、ハイテンションポニテ女子がマネージャーと紹介され、こちらも紹介しようとするも、マネージャーに手を上げて制止される。
「3人とも知っているわよう。名島圭一君は中二の時の柔道インハイで県の3位だし、水上裕貴君は同じ小中学校だったし、あとプリシフローラちゃんを知らない人間はこの学校にはいないわね♪ そして、この学校でのあなたたちのコンビっぷりもね」
「フローラや圭一はともかく、なんで年下の俺なんか知っているんですか?」
それには班長が答えてくれた。
「正確には君だけじゃなくて、涼香君とのセットで有名だったな」
「!!、そうだったんですか……判りました」
「それはどういう「それは愉快な話ではないし、当の涼香君がこれだから割愛しとこう、聞きたければ、……そうだな、涼香君の了解を得て彼女に聞けばいい」…………Yes」
フローラの言葉を遮り、周りで聞き耳を立てていた連中に目配せをして咎め、さらには俺でなくて涼香の方に聞くよう的確に答えて事を収め、その頭脳の回転の良さと気遣いに感心し、同時に無神経に聞き返して墓穴を掘った自分に反省する。
「て事で、だ。副班長に任命したのは、そもそもうちの班は実力主義で、春先に各自、作品やデザインを提出して、各班員が自分以外の作品に1票入れ、顧問の先生や各専科の先生の意見と評価で決定している」
「おお!!、じゃあ涼香が選ばれたってのは、この間さくらに作った服を考慮に入れたって事か、納得だゼ~」
「そういう事だ。班員でなかった彼女を副班長に推した全責任は私が持ち、もし班に入らなかったら、私が責任を取って辞めていただろう」
「それほど評価してもらうのは涼香の友人として嬉しい話だが、湖上舞先輩はそこまでして推すだけの技量が、涼香にあると考えていたのか?」
フローラが不思議そうに聞く。
「もちろん。ただまあ、彼女の気性が班に入ってくれるかどうかの方が、私には不安だったがな」
そう言って、涼香の横に立ってそっと手を握り、心底安堵したように微笑んでくれた。
(これなら心配はなさそうだな。――よかった)
「いやあ~~ハンチョ―、時期的に決まるのが遅れて不安だったけど、テーマも決まってわたしゃ一安心だよ~~」
「ああ、そうだな、これでやっと資材関係の調達にGOサインが出せる」
「ちょっといいですか?」
「ん? なんだね? 水上君」
「涼香に着せたのがテーマを決めるイベントだったってのは判るんだけど、なぜ人間にコスプレさせる必要があったんですか」
「それはだな、ドールショーでは、班長が自らコスプレして宣伝しながら売り子になるんだが、私はその、インパクトに欠ける……イヤ、別な意味で変なインパクトが……なあフローラ君……」
歯切れ悪く喋る班長にダブって、英断即決才女系ハンサム女子のウエディング姿を想像した。
(タカラ〇カみたいなイメージならいいかもしれないけど、さすがにデザイン系の活動ではリスクが高いって考えたわけか……)
「つまり涼香の方がウェディングドレスがサマになるから。ですか」
「………(コックリ)」
フローラが解説して答え、班長が大きくうなずく。
“涼香がコスプレして宣伝!?”
さらに聞く。
「理由は理解したけど問題は涼香の性格(キャラ)なんじゃ……」
俺の言葉に全員が卒倒している涼香を見つめ、同時にため息を漏らす。
「「「「はあ~~~~~………………………………」」」」
そんな空気を破り、ブーケをブンブン振り回した一葉が意気揚々と答える。
「大丈夫、涼香はこうしてDOLL服研究班まで来て、入るって自分で決めたんだから何とかなる!、何よりアタシが付いてる!!」
「そうか、そうだったな、じゃああらためて頼むぞ一葉」
「当然よ!!」
俺と一葉のやり取りにマネージャーが思い出したように反応する。
「ねえ、この子のキャラ、普通と全然違うんだけどどこのキャラ?」
「「「!!!!」」」
俺、圭一、フローラがギクリとする。
「そうだね、さっきもマスター庇ってライトスタンかましてきたし、ちょっとあり得ない行動をとるDOLLだね」
班長も訝しむ。
「あ~~、実は一葉と俺のさくらには、ブルーフィーナスの抽選で当たった、新開発のモニタリング用キャラがインストールしてあるんですよ。それでまだテスト中だから普通とちょっと違うんです」
一葉をインストールしたおりに考えていた言い訳(デッチ上げ)を語る。
「ほう。そうか、たしかにレアなキャラだな。表情もリアクションも豊富だから、ポーズを取らせたらコンクールとかでは武器になりそうだ。テストが終了して一般配布されたら教えてくれ」
「はい、判りました」
さくらと一葉、二体を見ると、さくらが微笑み、一葉が親指を立てた。
「それじゃあ、涼香君も疲れているだろうから、今日の所は頃合いを見て連れ帰ってくれ。そして、ドレスの方はショーまで取っといてくれたら、そのまま彼女にプレゼントされるしきたりだから、と伝えておいて欲しい」
「判りました」
〈Japanese text〉
――――――――――――――――――――
ママへ。
今日はなんと、一葉がさくらを親友認識してくれたよ。
実際はどうなるのかな~って思っていたら、
一葉が喜んだり、怒ったりすると30%の、
感情の共感(シンパシー)が起こるの。
たぶんこれからもっと数字が上がると思う。
一葉は、昨日は涼香と裕貴を応援するような感じだったけど、
本当はゆーきとの関係をはっきりと二人に自覚させたかったみたい。
きっと一葉はこれが予測できていたんだわ。
人としての感情はさくらの方が豊かだけど、
A・Iとしての性能は一葉の方が上だものね、
二人が今みたいに落ち着いてくれて本当によかった。
涼香がライバルになったら“さくら”は絶対敵わない。
さくらも涼香が好きだから、
もしゆーきと涼香が恋人同士になったら……
ううん、考えるのは止めよう。
とにかく今はゆーきの事を一番にして考えるわね。
――――――――――――――――――――
〈kasumisakura_a.i_alpha.ver000a〉
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