5


 満月から数日が過ぎていた。


 サヴォラの塔が立ち並ぶ帝都の北街区から中央区にかけて、空気が塔と塔の間を通り抜ける時、それが強い風となる。


 今晩みたいな風の強い日にその巨大な建造物の間にでも立とうものなら、余程幸運でない限り、翌朝固い石畳の上から起き上がることは出来ないと言われているくらいだ。そしてその塔はたったの二つではなく、両手両足の指の数以上は優に越していた。当然、風は乱れる。その為に、昼間は全ての尖塔において風を軽減する動力環が作動し、くるりくるりと回転しながら刻まれた術式文字レファンティアングを浮かび上がらせ光っているのだが、夜はその殆どが動作を停止させ、残っているのは宮殿方面の一つ二つだけだ。中等学舎に通っていたこともあってラナは勿論レファンティアングを読むことが出来るが、如何せん距離が遠すぎるので、動力環に刻まれたものまでは判別不可能だ。


 己の手で強風軽減のレファンティアングを手持ちの魔石に刻むことも出来るが、庶民が所持している魔石など、大きくても握り拳の中にすっぽり納まる程度だ。故に威力は弱く、尖塔の間では火魔石の灯程度の力すらも出せない。夜はいつも風が強い。それで命を落とす庶民も、シルディアナ住民の中には少なくなかった。


 命を落とすといえば、あの五人組の不吉な会話を聴いてから一月が経っていた。


 その間、商人居住区で出会った美しい青年イークは、何度も「竜の角」に来店し、毎回結構な量の料理を腹に納め、帰る頃合いには必ずサフィルスという名の迎えが、サヴォラと共に酒場の軒先で腕を組んで待っていた。自分を連れて行けと主張していたあの青年は、いつも何らかの理由で抜け出す己の主人に対し、毎回同じような注意を繰り返し聞かせていた。


 主従だろうか。しかし、不思議な客だった。店一番の美人であるサイアではなく、必ずラナを給仕に呼び、他愛のないことを話し、時々微笑み、色々なことを聞かせ、訊いてくるのだ。


 ラナは、自身の歳や生まれ月のこと、サヴォラ乗りになることを目指していたが母の死により断念せざるを得なかったこと、父がどんな人物だったか覚えていないこと、酒場「竜の角」で働くのは楽しいということ、母の形見の腕輪のこと、昔の記憶を夢でよく見ていること、もしかしたら兄がいるかもしれないことなどを話した。心地の良い相槌だったから、思っていることがいつもより沢山滑り落ちていったかもしれない。話の最中、机の上に置いた手をそっと握られたことは、三回あった。母、父、見た夢について話している時だった。


 イークは特に、夢の話を聴きたがった。ラナは、自身が飛んでいる部分と、遥か遠い自身の過去の記憶であろう部分しか口にしなかった。ラライーナとイェーリュフや、約束を還せと繰り返し訴えかけてくる白い竜の像や、死んでしまったかもしれないアーフェルズの名前は言わなかった。夢の最初の部分以外は、何故だろうか、誰かに言ってはいけないような気がしていた。


 彼はまた、帰り際に席を立つ時はいつも、何か言いたそうな表情で、しかし次の瞬間にはエルカのような控えめな笑みを見せて、また来る、と言った。微笑んでみせる傍らで何か途方もなく大きなものを背負っているような気がして、そんなイークの顔を見る度に、ラナの胸の中で言いようのない何かが生まれ、不思議な熱となって、どうしようもなく心をかき乱し、気が付いたらぼうっとしていることが多くなった。


「あの人のこと好きになっちゃったの?」


 含みのある笑顔を浮かべたサイアにそう訊かれて動揺した日もあった。


 そして、そんな日々の合間に、何度も翠光に抱かれて自分が飛ぶ夢を見た。両親と思しき自分の名を呼ぶ男女も、自身に向かって白い竜が言う言葉も、小さな誰かの泣き声も、幼子が呼ぶアーフェルズという名も、すっかり覚えてしまった。


 夜、ラナはどうしてか眠れずに、窓の外に見えるサヴォラの群塔の方にぼんやりと視線を彷徨わせていた。今日の朝の客が、乱れる風に塔が耐えられるのは火を扱う術士の精錬技術と、遥か東のケールンという国から輸出されてくるフェークライト鉱石とがあるからだ、と言っていた。だが、こんな強風では火術士の生み出す炎もあっという間に消えてしまうだろう。夜だけではなく、今朝からずっと窓はガタガタ鳴りっ放しだ。


 明日もまた早いのに、と思いながらラナは小机の上の腕輪を手に取った。暗闇の中で、淡い緑の蔓模様が微かに光を帯びている。竜の角の従業員皆で、すぐ南の港がある海近辺にある洞窟へ行った時に見た夜光虫ハキミアそっくりだった。


 酒場の方からは笑い声と歌声が聞こえる。のびのびとした透き通る鳥のようなそれはサイアのもので、今日に限って真夜中まで働いているようだった。ナグラスやフローリシェはいつも四刻分しか休みを取らないのに元気だが、サイアは七刻分眠らないと翌朝寝坊する筈だ。それもこれも強風のせいだろうか。


 ラナはベッドの上で身を起こし、じっと耳をすませた。怒鳴っているわけではないナグラスの雷のような大声が、薄い壁の向こうから腹の底まで響いてくる。様子を見てみたいと思い、サンダルを履いて紐を緩く結んだ。


 少しだけにするつもりだった。起きていることがフローリシェにばれた時、咎められるのは面倒だった。いつもは優しい女主人の説教は長い。


 失くしたくなかったので、ラナは腕輪もはめた。


 酒場と奥の部屋を隔てている扉を、音をたてないようにして少しだけ開き、ラナは隙間からそっと様子を窺った。昼働きの労働者が薄い酒のグラスを持って酔っ払い、三人の帝国軍兵士の人間がそれを呆れたような目つきで苦笑しながら眺めている。兵士のうち一人は二の腕に術士の腕章を、両腕に美しい魔石の腕輪をつけていた。赤い色から、火術士だということがわかる。


 と、後ろで微かな音がして、ラナは咄嗟に振り返った。


 だが、そこに見えるのは暗闇ばかりだ。きっとネズミか何か、小さいものに違いない。ここから更に穴を掘った、とかなんとかいう三日前の台詞が頭に蘇ってきたが、それは有り得ないと思ってすぐさま打ち消した。


 ラナは兵士達を観察した。三人ともゆったりとした表情で、酒を水で薄めながら飲んでいる。いつも「竜の角」で応対する顔馴染はそんなことを一切やらない。イークが初めて「竜の角」に来た時、後から入ってきて酒を薄めて飲んでいた三人の男達、あれも兵士だったのかもしれない。酒を控えろという規律でもあるのか、と不思議に思った時だ。


 ガタガタと風でやかましい音を立てていた酒場の入口の扉が爆発のような音を立てて開き、はね返り、再び開いた時に闇のような姿がランプの光の中に飛び込んできた。


 その場にいた者は皆何事かと振り返る。入ってきたのは黒衣の人間、蒼く輝く瞳だけしか見えない。背の高さと身のこなしは男、彼は三人の兵士に気付き僅かに身を引き緊張した目つきとなった。


 しんと静まり返った瞬間、外で誰かの叫び声が響き、石畳に木霊した。黒い男は弾かれたように背後を振り返り、次いでラナへと鋭い視線を投げ、腰に手をやる――


「――黒のアルジョスタ・プレナ! 観念しろ、この先は行き止まりだ!」


 外からの声に、くつろいでいても反応したふたりの兵士が武器をとる。軍の術士であるらしい三人目は手を構え、短剣を抜いた黒衣の男をひたと見据えて、その両手からレファンティアングを迸らせ――火の強化術式を腕輪に嵌め込んでいる――炎を飛ばした。


 刹那、開きっ放しの酒場の扉から数人、新たに黒衣の人間が飛び込んできて躓き炎に巻かれ、おぞましい悲鳴を上げる。最初の男は体勢を崩し転んだが、酒場の床で前転し炎を避け――


「ここだ、逃げたぞ!」


「アルジョスタ・プレナの拠点だ、潰せ!」


 突如なだれ込んでくるのは帝国軍兵士の群れ。焼けただれた顔を覆い転げまわる黒衣の者の身体にたちまち三本の剣が生え、鮮やかな血飛沫が壁に走った。サイアが叫んでグラスの乗った盆を落とし、ナグラスが怒鳴る。


「店で何をやるつもりだ!」


「殺せ、皆だ! 誰も逃がすな!」


 白と金に彩られたシヴォライト鋼製の対魔強化鎧を身に付けた兵士が大声で指図した瞬間、その場は阿鼻叫喚の戦場と化した。


 哀願する下層市民達の腹や首から次々と鮮血が噴水のように散り、床を染めた。最初の黒衣の男の短剣が折れ、その切っ先が近くのテーブルについていた中年の男の腕を掠る。ラナは動けなかった。サイアがこちらに向かって走り来るその後ろで、フローリシェが煮えたぎる鍋の油を軍の侵入者に撒き散らしている。ナグラスはありったけの包丁を手に投擲を始めていた。


 ラナは後ずさり、サイアより先に地下へと逃げ込もうと梯子に手を掛けた。


 掛けた時だった。


「――大人しくしろ」


 不意に耳元で聞こえた声が身体を凍らせ、ラナは動けなくなった。振り返ろうとした瞬間手で口を塞がれ、手に力を入れれば締まった腕で背後から両腕ごと捕えられ、身動きが出来なくなった。悲鳴が口の中で行き場を失い、ラナは絶望した。尚も耳元で低い声が、囁く。


「……暴れるな、動くんじゃない。じっとしろ」


 刃の冷たさも鋭い痛みも未だ来ない。扉の向こうで悲鳴が絶え間なく響き、それが開いた瞬間、サイアが光と共に寝室へと駆け込んできた。そのまま彼女はラナと“誰か”がいることにも気付かず、扉を閉め、鍵を閉め、小さな窓についている鍵を小刻みに震える手で弄り始める。


 ラナを捕まえる者の腕に力が入った。怒声とともに数人の若い兵士が寝室への扉を蹴破り、開いた窓から逃げようとするサイアの足を荒々しく引き床に倒した。恐怖におののく彼女の瞳と兵士の姿にラナは声を上げそうになったが、口を覆う大きな手が一層何かを込めてくる。まだ見付かっていない二人の目の前でサイアが床の上に仰向けで束縛され、ひとりの兵士の篭手が布を裂いた。


 三人の帝国軍兵士の下卑た笑みがサイアの悲鳴と身体を舐めとり、あらわになった白い肌は忌々しい汚れた手によって犯されていった。ラナは嫌悪感と恐怖と罪悪感にまみれ、溺れ、涙を流していることにも気付かなかった。断末魔の叫び声が耳の中で絶え間ない雷鳴のようにがんがん響き、目を固くつぶっても吐き気は込み上げてきた。


 目蓋の裏に蘇ったのは風の精霊王フェーレスの笑顔。


 愉しみに走る兵士と泣き叫ぶサイアの前でどのくらい動かずにいたのだろう、ラナを捕まえている者の顎がふと何かに気付いたように動く。続く悲鳴は殆ど消え、呻き声と話し声、金属の触れ合う音が代わりに酒場の客として招かれていた。


 新たに聞こえてきたバサリ、バサリと布を広げる時のような音を混乱した意識の中に迎えながら、いつの間にか黒い衣に包まれていたラナは出せない声の分まで涙をとめどなく流した。ナグラスとフローリシェはどうなったのだろうという思いが頭の隅をちらりとよぎる。イークの美しい笑みが何度も目蓋の裏に蘇った。


 彼女を捕える者共々息を殺し、ひたすらに闇の中で、待った。


 聞き覚えのない男の声とともに布を広げる音は止み、水を踏む足音が酒場に木霊する。だんだん近付いてくるそれは三人の兵士とサイアに気付いていて、そして怒気を孕んでいるようだった。


 凄まじい音を立てて床に倒れた扉が踏み抜かれた瞬間、ラナが見たものは、漆黒の巨大な影が怒鳴る所だった。


「お前達、何をしている!」


 三人の兵士は飛び上がって声の主を振り仰ぎ、次いで即座に息を呑む。そこで仁王立ちしているのは三日前にラナが見た竜人族で――


「ギ、ギレーク竜騎士団長!」


 身だしなみをすぐさま整えたひとりの兵士が直立し、後のふたりもそれに倣う。ギレーク竜騎士団長と呼ばれた竜人族の男は燃えるような瞳でそれを睨みつけ、床でさめざめと泣くサイアを見下ろす。


 酒場の方から漏れてくる、生き残った火魔石の照明が照らしているのは、漆黒の鱗に覆われた腕、脚、手や足。翼の鉤爪は赤い光を鋭く反射し、突き出た額の骨が眉から側頭部にかけて角を形成している。竜人族の中でも大柄だった。


「……こんなことをしろ、と誰が言った」


 誰も答えなかった。竜騎士団長の背後から幾つかの巨大な影が現れ、寝室に足を踏み入れる。全て竜騎士だ。


「答えてみろ、誰が言った」


 尚怒気を孕む声は、ラナの心をもすくみあがらせた。


「……私はアルジョスタ・プレナの者を捕えろという命を受け取った、お前達は他の人間の部隊ではあるが、同じ命令を受け取っている筈だ……市民まで手にかけるほど帝国軍は落ちぶれたのか?」


「それは……」


「そして、女を犯すようにしつけられたのか、良い育ち方をしたものだ」


 猛々しいものを放つギレーク騎士団長はひとりの兵士に近付き、その鎧に留め金で固定された外套をさっと外して広げ、跪いてサイアを抱き起こし、血の染みが所々に広がるそれで身体を包む。騎士団長はもう大丈夫だ、と声を掛けたが、助け起こした筈のサイアに近付くなと言わんばかりに頬を殴られ、途方に暮れたような表情になった。暗がりの中の横顔は精悍で、黒くぬれた瞳は何処か憂いを帯びている、とラナは思った。


「タニア」


「はい」


 竜騎士団長に呼ばれて返事をしたのは竜人族の女だ。タニアはガチャガチャと鎧の金属音をさせながらサイアに近付き、自分のやるべきことはわかっていると口に出す代わりに仲間の方を振り返り、頷いた。


「さあ、もう大丈夫よ」


 サイアは女の声に顔を上げ、更に激しくすすり泣いた。タニアがその肩を抱き促すと、彼女は竜騎士の女に抱きついてその肩に顔を埋める。やがて二人は絡み合う二本の木のように寄り添いながら立ち上がり、ゆっくりと歩いて酒場の出口の方へと消えていった。


 女二人を見送っていた竜騎士団長が、その場に残った者達に視線を戻した。その顔つきは険しく、新たに使命を帯びた瞳はランプの光に一瞬黒く煌く。


「さて」


 ギレークの口調は、サイアに話し掛けた時とは打って変わった固いものとなっていた。不思議なことに此方の存在には気付いていないらしい、身体を包む黒いマントに何かあるのだろうか、とラナは思う。


「言いたいことは後に回す、今はただ探せ、この酒場の隅々までな……隠された場所にまだアルジョスタ・プレナの者が潜んでいるかもしれん。殺さず、捕らえろ、私の部隊の者も含め、十人もいれば不足はない筈だ……殺したら、お前の首を落とす、心得ておけ、それが責任というものだ」


 と、ラナの胴に回っていた腕の力が一瞬にして弱まった。ここで自分は解放されるのだろうか、と彼女は思ったが、口はまだ塞がれたままだ。成り行き通りに事が進めばラナは助かる筈だった。しかし、彼女を捕えている者は音も立てずに彼女の身体を横に引きずった。


 一瞬、この男は何をするのか、とラナは恐怖を覚えた。だが、一人の人間の兵士がこちらに近付いてきた時には、恐怖よりも強い絶望が彼女の心を雲のように厚く覆い尽くした。ラナは兵士達がサイアにしたことを全て見ている。目の前に迫ってくる者の息遣いは汚らわしく、憎いものでしかない……そして彼らは先程まで、敵も市民も関係なく殺めていた。


 ラナは暗がりに慣れた目で周囲に素早く視線を走らせる。帝国軍の者達が物音を立てている今、口を覆う手を振りほどきこっそりと逃げるのもありかもしれない。だが、自分をこうやって今も束縛している者は、敢えてこうすることによって自分の命を助けているのだという事実にラナはすんでの所で気付き、思わず胴に回された腕を掴んだ。


 アルジョスタ・プレナの者として処理されることもあり得る。


 上から押さえつけられた兵士の鬱憤晴らしに殺されるかもしれない。そして、自身を抱きかかえている男が殺して逃走しようとした、などと言うかもしれない。


 ラナは恐ろしい想像に呑まれそうになった。


「――地下だ」


 と、耳元で囁かれ、ラナは微かに頭を動かした。口の覆いがとかれた。声のない言葉は再び落ちてくる。


「合図をする、地下へ走れ」


 飛びついたら触れられる距離に兵士がいて、別の方向を取りつかれたように見つめていた。その視線の先にあるものが地下に通じる梯子だとラナが気付いた時、腰のあたりで金属のこすれる音がしたかと思えば、次の瞬間、きらりと光る何かが投げられ、目の前の兵士の首から闇に向かって生温いものがほとばしった。


「――行け!」


 背をとん、と押され、兵士の恐ろしい呻き声が響く中をラナは梯子に飛びついた。半ば落ちるかのようにして駆け降りた時、上から人影が降ってきて地下室の床に見事着地する。怒声が木霊し、それを聞きながらふたりは向き合った。


 背の高い若い男だ、ということに、ラナは気付いた。しかし、何故自分を助けたのかは全くわからない。男は地下室の一番奥を見やり、再び上に視線を走らせ、あっちだ、と抑えた声を出した。


「抜け穴だ、かなり遠いが地下の下水道に繋がっている、そこから上に出るぞ……先に行け、後ろから行く、速く」


 その声は最近何処かで聞いた覚えのあるものだった。ラナは言われた通りに走り、手探りで穴を探した。果たしてそれは胸ほどの高さの所に掘られており、彼女は手を突いて体を浮かせる。若い男が後ろからラナの腰を支え、穴の中へぐいっと押した。


「あそこだ、抜け穴から逃げるぞ!」


 ラナは狭い抜け穴の中を這うようにして必死に進んだ。背後から荒い息とブーツの音が聞こえてきて思わず振り向けば、彼女を助けた男の焦ったような声が先を促す。


「振り返る暇があったら行け、速く!」


 怒声が迫ってくる。ふたりは必死で進んだが、こんな道を行くのに慣れていないラナが前を行っていたせいで、あっという間にシヴォライト鋼製の対魔強化鎧が擦れるガチャガチャという音がすぐそこまで追い付いてきた。


 帝国兵だ。


「槍だ、魔装槍を出せ!」


「短剣はないか!」


 兵士達が得物を取り出そうとしている、まずい。ラナがそう思った瞬間、すぐ後ろで機械仕掛けの何かが広がり切って伸びる音がした。次いで聞こえるのは石と石が擦れ合って取り出される音、振り返ると自分を助けた黒衣の男が魔石のはめ込まれた赤く輝く篭手と一体化した弓を構えて素早く矢を放ち――

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