[旧版/比較版]乱舞るロンドはエンドを望む

佐久良 明兎

【扉文】

約束の10の扉から(全ボツ)

拝啓、親愛なる皆様。


 皆さん、元気にお過ごしでしょうか。

 こちらは。

 私たちは、元気です。




========

(草稿)



 あの夏の日、私たちはまだ何も知らなかった。


 偶然か必然か、運命か宿命か、一瞬のようで永遠のような。

 言葉を尽くそうと思えば、いくらでも抽象的な言葉を並べることはできる。

 だけどあの時、運命とか永遠とか、哲学じみたことはどうでもよくて。

 そんなことを思う暇などなく、ただただ私たちは、目の前の現実を生きることに一生懸命で、精一杯で、いつまでもこんな日々が続くような気さえしていた。


 偶然も必然も運命も宿命も、過ぎ去ってしまえば同じもの。

 未来は現在になり、現在は過去になる。過ぎ去った日々は戻ることはないし、願ったとしてもやり直すことはできない。

 それでも、一瞬のようで、永遠のようなあの日々は、あまりにも眩しくて鮮烈な記憶を人の心に残していった。

 まるで打ち上げ花火のように。


 あの夏の日から始まる一連の物語を思い返すとき。陳腐で使い古された言葉ではあるけれども、私たちはこう話すことがある。

 まるで、奇跡のようだった、と。

 こう称しても許されるのではないかと、そう思ってしまうのだ。


 思えば。

 あれは、たった八日間の出来事から始まったのだった。



 ……




========




「……駄目だ、陳腐だ……」


「別に。いいんじゃないの。扉文なんて、単なる感傷なんだし」


「まぁ、そうかもしれないけどさー」


「いいから。変なとこ拘ってないで、さっさと先を書いてあげなよ。一体いつまで待たせてるのさ。余分な方を書いてる暇あったらこっち進めろ。

 早くしないとタイムリミット来ちまうぞ」


「はぁい」


「ていうか。その部分、要るの」


「うーん。せっかく、だし。感傷は感傷なんだけどさ。

 やっぱ、それらしきものを。少しは残して、仕込んでおきたい」


「ま。だったら、いいけどさ。

 いい加減、間に合わなくなるよ」


「……きりきり書きますっ!」

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