シャークハンター!
あゆつぼ
シャークハンター Blade Shark
序章 南洋諸島
世界は、サメに包まれていた。
一九三六年夏。
大日本帝国が統治する南洋諸島の一つパラオ島。その南西四〇〇キロの空を、日本海軍の三座水上偵察機が大きな弧を描いて旋回しながら飛行する。
空は厚い雲に覆われていて、雨は降っていないが時折雲の合間に稲光が走る。
南洋諸島では突然の悪天候も良くあることだ。
しかし、今日の空模様はいつもの悪天候とは違う何かを感じて、パイロットは操縦桿を握り直し、後部座席の航法士に尋ねる。
「進路は間違ってないか」
「問題ない。島の位置は確認している。ここから先は真っ直ぐだ」
生真面目な航法士は地図とコンパスを確認して帰路を示す。
ようやく地上に戻れる。パイロットは曇天の水平線を真っ直ぐに見据えて機体を直進させた。
「水面に何か見えました」
観測を任していた無線手が突然声を上げた。
「報告は正確にしろといつも言って――」
航法士が説教をたれようとした瞬間、機体が揺れる。
いや、揺れたのではなかった。
空中で突然分解し、真っ二つになった機体はきりもみ状態のまま海面へ向かって落下しているのだ。
何が起こった?
誰もその問いに答えられる者はいない。
ただ、操縦席から背後を振り返ったパイロットの目には、雲間に轟いた雷鳴の明かりに照らされた、その巨大な影が大きく映った。
「――サメだ」
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