実験室編50

俺たちは白魔女から神と呼ばれる場所で修業を無事に終える

しかしそれは本来の予定期間を

8ヶ月短縮するというものではあったが

バーバラやフロ-ラル様の協力もあり

以前とは比べ物にならないくらい力はつけたと思っている

そしてみんなが待っているところへ戻ってくる…


そこにはみんなが待っていた

それに白魔女や黒魔女だけじゃない

地下で捕らわれていた者たち…

そして実験室で敵同士だった魔族もいた

みんな大歓声をあげる

「待ってたぞ!!」

「無事に強くなれたか!?」

「前のときは言えなかったけどありがとう-!」

「ありがとう-!!」

さまざまだった

この光景を見ると本当にあの戦いはあったんだと思えてくる

実はこの修業した1年間あの実験室での戦いは夢だったんじゃないか?

そう思えるときが多々あった

でも、みんな俺たちを笑顔で迎えてくれている

この笑顔を守るためにも何としてもドクターベルケルの野望を打ち砕かなければならない…

そう思うのだった


そしてフロ-ラル様は言った

「皆さん!」

「修業終えたワタルたちは無事に帰ってきました!」

「説明した通り予定より大分早くなりましたが見送ってあげて下さい!!」

「うおおおおおおお-----!!!!!」

その場が揺れた


そしてフロ-ラル様は言った

「幸いここまできてはいませんが

ムズガルド帝国は最近急激に力をつけ辺りの国を滅ぼしていると聞いています」

「十分注意してください」

「それと…」

「あなた達はまだまだ弱い…」

「それは自負していると思います」

「この先幾多の困難があなたたちを待っていることでしょう」

「だから見つけなさい」

「心から信じあえる仲間を…」

「仲間と一緒ならどんな困難でも共に乗り越えられるはずです」

「そして私は昔…少しだけですが仲間と旅をしたことがあります」

「もしかして助けてくれることがあるかもしれません」

「このペンダントを持っていきなさい…」

「もしこのペンダントをしていれば私に何か関係があるの者なのかと気づくいてもらえやもしれません」

「そしてもし私の仲間に会うことができたのなら…」

心を込めて言った

「私は元気です…そう伝えてください」

そう言うとフロ-ラル様はペンダントを俺にかけた

俺は断ろうとしたが、素直にフロ-ラル様の好意に甘えることにした


そしてバーバラも言った

「ワタル…」

「あんたに基礎の魔法は叩きこんだつもりだけど大地の力については教えてあげれなかったね」

「正直私にも分からないんだ…」

そう言うとバーバラはある紙切れを俺に渡す

そして言った

「ここに地図が載ってる…」

「そこに詳しい者がいるはずさ」

「そこを当たってみな」

そうバーバラは言った

「ありがとう」


そう言い終わり気づくといつのまにか

俺たちの周りを囲んでいたみんなは道を開けていた

旅立たちへの道を…


そして俺は言った

「バーバラ…」

「フロ-ラル様…」

「本当にありがとう」

そしてミネアとマ-ニャにも言った

「元気でな…」

「楽しかったよ^^」

そう笑顔で言った

しかしミネアとマ-ニャは浮かない顔をしてじっと下を向いたままだった

あの事を気にしてるのだろうか…?

でも俺はこの先ずっとミネアとマ-ニャが生きてる…

それが本当にうれしいんだ

「それじゃあ…みんな!!」

そう言い終わると俺たちはムズガルド帝国への道を進んだ

そして振り向き改めて言った

「みんな…ありがとう---!!!!」

みんな笑顔で手を振っていた

しかし残念ながらミネアとマ-ニャが見えなかったのが心残りだ

そして、みんなが視界からいなくなった


しばらくしてツバサは名残惜しそうに言った

「あ-あ、ミネアとマ-ニャ絶対仲間になってくれると思ったんだけどなぁ」

すると少し困った表情でバージェットは答える

「まぁ大人の事情でいろいろとあるんだよ」

「なぁワタル?」

「ああ…そうだな」

俺は答える

「ええ…!何その大人の事情って言うの…?」

ツバサはふてくされたように言った

「まぁ大人の事情は大人の事情だ!」

バージェットは必死にごまかす

そしてツバサは突然真顔になり前を向いて言った

「楽しかったね」

「ああ…そうだな」

マ-ニャを助けハイデルと戦いそしてミネアと出会ったこと

実験室での戦い…修業…

今までの出来事が走馬灯のように甦ってくる


そして俺はふと考えた

ミネア…マ-ニャ幸せにな

みんなも…


そしてツバサは思い出したように言った

「ねえねえここからムズガルド帝国って近いの?」

俺は答える

「えっ遠いよ」

「バーバラに聞いて場所も確認ずみだ」

二人はきょとんとする

そしてバージェットは言った

「ああ…それをずっと俺は思ってたけどどうするつもりなんだ?」

俺は答える

「えっ借りるよ」?

「誰に?」

二人は一斉に疑問の声をあげる

そして俺はバージェットに指をさす

「えっ俺?」

バージェットは俺が何を言っているのかよく分かってないようだった

そして答える

「ランバ-ド」

そう言った瞬間二人は納得したようだった

そうこのランバ-ドのお陰でバージェットとの戦いの後に

村の異変に気づき早く帰ってくることができたのだ

しかしバージェットは言った

「俺頼みかよ!」

「えっ大丈夫でしょ?」

俺はさも当たり前の態度で言う

「ちっ全く…」

バージェットは顔に手を当て諦めの表情をする

「まぁ呼べばくるとは思うが…」

「ただ…」

バージェットは真顔に戻る

「ランバ-ドの呼び方忘れちゃったんだよなぁ」

「呼び方忘れたのかよ!」

俺はすかさず突っ込む

「あっ、あと操縦の仕方もね」

「ラーメンのあとの、

あっおばちゃん餃子も追加ねみたいなノリで言うなよ!」

すかさず突っ込む

ツバサは笑っていた


そしてみんな真顔になり前を進み始めた

そう…俺たちは進む

どこまでも…



しかしこのときワタルたちがこの先魔界全土を揺るがす

ある大事件をおこそうなどとは誰も思いもしなかった



















ワタルたちがみんなの元を去った後…

「あーあ行っちまったね」

「そうですね」

バーバラとフロ-ラルは感慨深そうにしていた

「ふふ…騒がしい奴らだったね」

「ええ」

「でも楽しい時間だった」

「ええ」

二人はまっすぐ見えなくなったワタルたちを見て言った

「ところで…」

バーバラはまっすぐ前を見つめながら言った

「何で泣いてるんだい?」

「う゛ぇ…う゛ぇ…」

「えぐっ…ひぐっ…」

横には地面に崩れ落ち、泣き崩れているミネアとマ-ニャの姿がそこにはあった…

二人はもう言葉にならないくらい泣きくずれていた


そしてバーバラは言った

「お前たち…何か私らに隠し事してるね?」

二人はドキっ…!と心臓が止まるのを感じた

そして言った

「私たちがお前たちの様子に気づかないとでも思ったかい」

「ええ」

バーバラとフロ-ラルはやはり気づいていたようだった

「どうせワタルが何か口止めなんかしたんだろ?」

それが当然のように言う

「全くあの子は…」

呆れた表情で言った

ふふっとフロ-ラルも苦笑いをした

そして言った

「でもね…」

「言いたくないなら言わなくたっていいんだよ」

「ここにいるみんなそんなことでいちいちお前たちを咎めたりはしないさ」

周りを見るとみんなコクりと頷いていた

しかし付け加えるように言った

「どうせ私たちのことを心配してるんだろ…?」

バーバラはお見通しと言った表情をする

「でも言いたくなったらいつでも言ってくれたらいい…」

「ワタルたちが私たちのことを心配してくれてるのは分かる」

「でもね…」

バーバラは真剣な表情をし語尾を強めて言った

「そんなもんはクソくらえだ…!!」

「ワタル…ツバサ…バージェット…」

「あの子たちは命をかけて私たちを救ってくれた…」

「救ってくれたんだよ…!!」

「私たちが苦しんできた過去…」

「それにワタルたちがいなかったらまだ私たちが無駄にいがみ合っていただろう…未来」

「それも全部ひっくるめて救ってくれたんだよ!!!」

「この借りは一生あったって返せやしない…」

「一生あったってな゛ぁ゛…」

「ぐっ…!」

バーバラは泣いていた


「えぐっ…えぐっ…」

ミネアとマ-ニャは嗚咽のようなものを漏らして泣き崩れていた

そして何とか声を振り絞りみんなに訴えかけるよう懺悔するように言った

「ワタルは私たちに仲間になってくれないかって誘ってくれました」

「こんなどうしようもない私たちを誘ってくれたんです」

「でも私たちはその誘いを断りました…」

みんなが一心に見つめる

「でも…!」

「でも゛……!!」

心の叫びを

全てを解き放つように叫んだ

「あの時ワタルは笑って許してくれたんです…」

「ツバサやバージェットも笑って許してくれた」

「この先のことを考えれば一人でも多くの仲間を欲しいはず…!」

「ここにいるみんなを是が非でも連れて行きたいはずなのに…!?」

「はずな゛の゛に゛!!」

「でも…それを゛しながっだ…!!」

思いを込めて必死に叫ぶ

「ぞれ゛はワダルたちの優じさ!!!」

「私だちの命のごとを思っで…!!」

「ごんな温かいも゛のに今ま゛で出会っだごどがな゛いよ゛ぉ」

「う゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛----!!!!」

泣き崩れ自分の心の中の全てを吐き出したようだった


しかし彼女たちが更に苦しむことがもうひとつある

それはドクターベルケルの実験のこと…

もしバーバラやフロ-ラル様があの実験内容を知れば

是が非でもワタル達と行動を共にしようとするだろう

それではワタルの気持ちを無駄にしてしまう…

だから言えなかった

2重に苦しんでいたのだ


えぐっ…えぐっ

ワタルたちの気持ちを知りみんな泣いていた


そしてある者が言った

「私たちはワタルに助けてもらいました」

「もしワタルがいなければみんなこうやってこの場にはいません」

「ワタルは私たちの命の恩人…命の恩人なんです!!」

そして決意した表情で言う

「もし…ワタルが力を貸してくれというのなら我々は命の全てをかけて戦います!!!」

「この…」

みんな合わせるように胸に手をやり叫ぶ

「この命燃え尽き…全てが朽ち果てようとも!!!!」


そしてバーバラは前を見据え言った

「お前たち…!」

「この恩…決して忘れるんじゃないよ?」

「はい゛!!!!」

フロ-ラルも言う

「みんな…!」

「心に刻みつけておいて下さい…このことを!!」

「おおおおお----!!!!」

拳を振り上げ…みんな誓いあった







そしてしばらくするとバーバラとフロ-ラルは突然厳しい顔つきになる

「いるんだろ……?」

「出てきな!!」

するとバーバラたちの後ろの森にあるとある木の上に影のような者がいた

しかしぴくりとも動かない

一気に辺りの天候は崩れ薄暗くなる

するとバーバラは言った

「この辺りで私たち黒魔女と白魔女と争うもう一つの勢力…」

「魔呪師!!」

するとその影は動く

そしてバーバラは不適な笑みを浮かべ言った

「い-やこう言った方が分かりやすいかね」

「元黒魔女NO2…」

「魔呪師ジェルチェ!!!」

そう言い放ったとき…!

雷がズド-ン!!と近くに森の木に落ちた!

もう辺りは完全に暗くなり雨が降っていた

みんながどよめき立つ

ミネアやマ-ニャも訳が分からずその場に茫然と立ち尽くす

そして再び雷が落ちた時…

その光でその影の正体があらわになる…!

それは紛れもないジェルチェ本人だった

そしてジェルチェは木の上で

バーバラたちを見下ろすように不気味に嗤っていた

            <実験室編 完 >

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