実験室編39

それからミネアはあっ!?と思い出したように言った

「そういえばフロ-ラル様とバ-バラ様は!?」

みんな一同に下を見る

マ-ニャは指をさして言った

「あっあそこにいるよ」

みんな指先の方向を見る

「本当だ」

「二人とも無事でよかった…」

俺たちは安堵する

そしてフロ-ラル様とバ-バラは俺たちに気づいていたみたいで

目が会うとにっこりと微笑み手をふってきた

俺たちも手を振り返す

そして二人はけが人たちを治療するためか

人混みの中に消えて行った…



それから俺もあることを思い浮かんだので口に出す

「ずいぶん早かったな」

「地下のみんなや捕らわれてるかもしれない人たちは…?」

「それに…」

俺は辛い思いを思い出させてしまうだろうと

あえて黙っていたある言葉を口にしようとする

すると俺の言わんとしようことを察知してかマ-ニャは言った

「私たち少しの間みんなを探すついでに

ズィ-ダを探したのですけどいませんでした…」

「そして百虎隊や黒の護衛衆のみんなが言ってくれたんです」

「ここは私たちにまかせてワタルの元に行ってくれって

「そうだったんだ」

「はい

俺はみんなが早くここに来た理由について納得する

続きをミネアは言った

「一部だが捕らわれてる人たちはハイデルがいた部屋から

さらに地下の部屋に閉じ込められてる方たちがいた」

「まだまだ多くのみんながいるかもしれない」

「私たちを殺したあとにまた実験を開始するつもりだったんだと思う」

「それとすでに避難の誘導は始めている」

「そろそろ地下に捕まっていたみんながゾクゾクと出てくるでしょう」

「それに…」

「ドクターベルケルはおしまいだろう」

「?」

「これだけ多くの者たちが出てきたのだからあっという間に噂は広まる」

「その噂が広まって…」

そこまでミネアが話をしていると

マ-ニャは否定するように話に入ってきた

「お姉ちゃん…多分それはないと思う」

「えっ?」

俺たちは一瞬止まった

それはミネアが言ってることに何の矛盾もないと思ったからであった

「私たちがハイデルに捕まったときに

他のリ-ダ-や幹部らしき人たちは見てみぬフリをしていました」

そしてマ-ニャは身体を震わせながら言った

「そう…こうなることは知っていた」

そして声を荒げて俺たちに訴えかけてきた

「普通の戦場ならあり得ないことなんです!!」

「それに…それに…!」

「全てを知っていた」

「そして」

「私たちを…見捨てた…んです」

「そう初めから私たちの存在なんかなかったかのように…」

「そんな人たちが果たして黙っているでしょうか?」

「私たちが騒いだところで逆に噂を立てられるのを怖れて私たちを殺そうとするかも…」

マ-ニャは心底心配そうな顔をする

「みんな…多分それは分かってる」

「しかもドクターベルケルは幹部」

「だから報復を怖れみんな何も言わないんじゃ…」

「そんなことは間違ってる!」

俺はすかさず反論する

「幹部だからなんてそんなものは関係ない!」

「ドクターベルケルは残虐非道な許されざる行為をしている!」

「それに恐るべきあの実験のことも…!」

俺は声を大にして言った

「ここで行われていたことをみんなに話せばきっと分かってくれる!!」

するとツバサは言った

「ワタル…物事はそんな簡単じゃないんだよ…」

そしてバ-ジェットも真剣な顔をして言う

「ワタル…お前は俺たちの大将だ」

「お前がそう言うなら死ぬまで付いていく覚悟はできてる」

「それなら…!」

しかしバ-ジェットは手をワタルの頭に乗せ

勢いよくワタルの顔を城外へ押し出した

「よく見てみろ!」

ワタルは何を言ってるのかよく分からなかった

「だからみんな喜んで…」

「そうじゃねえ!」

バ-ジェットは一喝する

そして改めて言った

「目えかっぽじってもっとよく見てみろ!」

そして俺はある重大なことに気づく

「あっ…!?」

そこには喜びに歓喜する人たちとは別に、

死体となって骸になった人たち…

重傷をおい呻き声をあげそのまま倒れてる者たちが大勢いた

それに地下から解放され喜びを噛みしめつつも

今でのショックからかまともに思考できない者もいた

「いいか…これが現実なんだ」

「確かに…!お前の理争論はすばらしい」

「俺たちみたいにそれに感化され

これからお前に付いて行こうって者たちも現れるだろう」

「だがツバサも言った通り物事はそんな簡単じゃない」

「俺は今まで数多くの戦争を見てきた」

「みんなお前や俺たちみたいには強くない」

「戦争は悲しみや怒り…希望…憎しみ…屍の上にたってる」

「お前は全てを背負えるのか?」

「白魔女や黒魔女だけじゃない…

今ここにいるみんなを…

そしてその屍の上を歩いていける覚悟はできてるのか?」

「戦争の影で傷ついてる者たちがいることを忘れないでくれ」

「………」

「みんなそんな強くない…それにやはり自分が傷つくことが怖いのよ」

そうミネアが言った


俺はみんなの問いに答えられずにいた

戦争とは何だろう

なんて無責任なことを言ってしまったんだろう

でも、やはりドクターベルケルのやってることは到底許されるものではない

様々な葛藤が自分の中にあり

そして俺にはもうどうしていいのか分からなかった

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