実験室編40

俺はバ-ジェットたちの問いに答えることができなかった

そしてもうどうしていいのか分からなかった


「どうすれば…」

ミネアは俺に見かねたように言った

「時間が必要ね」

「時間…」

「ええ」

「みんながある程度落ち着くには時間が必要」

「そして時間をかけて問いかけていけば

もしかしたら協力してくれるかもしれない」

「……」

俺はある考えにいたる

そして言った

「ミネア、マ-ニャ…」

「頼みがあるんだけどいいか?」

「なに?」

「なんですか?」

二人はワタルに問いかける

「ここに捕まっていた人たちやここの魔族たちは

行き場のなくなった人たちだ…」

「無理を承知で言う」

「白魔女、黒魔女のみんなで匿ってくれないか?」

「!?」

ミネアは驚きながらも言った

「捕まっていた人たちは分かる」

「でもここにいた魔族たちを匿うとはどういうことか分かってるの?」

「裏切るかもしれないのよ!?」

ワタルは答える

「俺はここで戦って感じたんだ」

「ドクターベルケルやハイデルの部下だと言っても全てが悪じゃない」

「勝手だということは分かってる」

「何と思ってくれてもいい」

「でも…俺は信じたいんだ」

「心の奥底にあるものを…!」

するとツバサとバ-ジェットは諦めたようにそして少し嬉しそうに言った

「あ-あ、もうこうなったら無理だよ」

「ミネア、マ-ニャ覚悟しな…

こうなったらうちの大将はテコでも動かねえからな(笑)」

するとマ-ニャはふふっと笑う

そして言った

「お姉ちゃん…」

「私がワタルたちに助けてもらったときのこと覚えてる?」

「ワタルたちは敵であるはずの私を助けてくれた」

「そしてそのときのツバサやバ-ジェットもこんな気持ちだったんだと思うよ」

「でもそのお陰で今の私がある」

「信じるということはとても危険だと思う…」

「裏切られる可能性があるわけだから」

「でも信じなければ相手も自分たちのことを信じてくれて

そして分かりあえるなんてことは絶対ない」

「私たちもワタルたちが信じてくれたように信じてみることにしよ?」

するとミネアは諦めたように言った

「ああもう分かったよ…」

「私の方からフロラル様やバ-バラ様に直接言ってみることにする」

「お姉ちゃん…」

「ミネア…」

そして俺は話を続ける

「ただもちろん強制はできない」

「行く行かないは自由だ」

「当然故郷やドクターベルケルの元へ帰りたい者だっていると思う」

「分かった」

「分かりました」

みんなこくりと頷いた

「完璧だな」

「お前が言うな!」

すかさず突っ込む

俺とバ-ジェットのやり取りを見て三人とも笑っていた

そして考える

これからどうしようか…

取りあえずここに留まるのは危険なので

フロ-ラル様やバ-バラと合流し

今後の捕まっていた人たちの事を相談し

そしてみんなのアジトへ帰ることにした



アジトへ帰ってから…

地下にいるみんなや魔族のことは

フロ-ラル様やバ-バラと合流してから話していた

俺が二人に話しそれからミネアとマ-ニャが必死に擁護してくれた

そして初めは驚いていたが

みんなをアジトで匿ってくれることを約束してくれる

ミネアやマ-ニャの熱意に負けたのだろう


そしてみんな一同に集合していた

フロ-ラル様とバ-バラが

みんな…そして俺たちの前へと出る

深々と頭を下げた

「みんな…ありがとう」

「死を覚悟したが何とか無事に帰ってくることができました」

するとマ-ニャが慌てて前へと出る

そして言った

「やめてください!」

「それにお礼を言うのは私のほうなんです!」

「みんな私の言うことを信じて仲間を救出するために

本当に命をとして手伝ってくださいました!」

「本当にありがとうございます!」

マ-ニャは必死に頭を下げた

それだけで気持ちがひしひしと伝わってくる

みんなは無言でマ-ニャのことを見ていた

しかしそこにはもうマ-ニャの悪口を言う者は誰一人としていなかった

そしてバ-バラは言った

「頭を上げな…マ-ニャ」

「もうそんな必死に頭を下げなくていい」

「みんな…もう分かってるから」

そして再び懺悔するように言った

「バ-バラ様…ズィ-ダはもう…」

どうやらマ-ニャはその後白の百虎隊や黒の護衛衆のみんなからズィ-ダの死体はなかったらしいと聞いていたようだった

「お前のせいじゃないよ…」

「もう…いいから…」

そうバ-バラは力なく言った

だがみんなのマ-ニャに対する瞳が優しさに溢れていた


そしてバ-バラは俺に言った

「ハイデルを倒したそうだね…よくやった」

「やめてください」

「この戦いはフロ-ラル様、バ-バラ…」

「そして…」

俺は周りを見渡す

「みんなの力なければ勝つことはできなかった…」

「この勝利はみんなで勝ち取ったものです!」

「それにフロ-ラル様やバ-バラがあの上級魔族を倒してくれなければ…」

「ここにいる全員生きて帰ってこれなかったと思います」

すると途端にフロ-ラル様とバ-バラの表情が険しくなった

そしてみんなの表情も険しくなる

あの上級魔族の異質に纏う空気はみんな感じとっていたようだった

ハイデルも十分強かったが

あの上級魔族はさらに別次元の強さを纏っているように感じた

するとフロ-ラル様とバ-バラは言った

「最後にあの上級魔族は気になることを言っていたんだ…」

みんなゴクリと息を飲む

そしてバ-バラは話を続ける

「詳しくは聞き取れなかったが

多分また会おうって言っていたんだと思う」

「!?」

「私も…そう聞こえたと思います」

フロ-ラルも深刻な表情をして言った

ざわざわ…

みんなざわつく

当然だろう

あんな化け物と今後再び戦うことになるかもしれないからだ

しかしフロ-ラル様とバ-バラは言った

「私たちは確かにあの上級魔族に勝った…」

「それは間違いありません!」

「また来たとしても絶対負けません!」

バ-バラも鼓舞するように言う

「こんなときに暗くなってどうする!」

「それに今度は私たち二人だけじゃない!」

「お前たちの力も借りる!」

「あんなやつ何かに私たちの故郷を絶対好きにさせるもんか!」

「それまでの間に私たちだけじゃない…!」

「お前たちも…もっとともっと強くなるんだ!」

「あいつなんかに負けないために!!」

「そうだねみんな?」

「おぉおおおおおおおお------!!!!!」

みんな一斉に拳を闇空にかざし叫んだ



そしてもうそこには以前感じた白魔女や黒魔女という理由で憎しみあっていた関係はない

そして地下に捕らわれていた人たち…魔族も誓いを立てている

種族の概念やその全ての垣根を超えて一つになっていた

そしてそれは約束の丘から実験室へ向かうとき以上の結束を感じる

もうみんな大丈夫だ…俺はそう思った

そしてある決断をしようとしていた

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