黒魔女、白魔女編3

朝起きるとツバサもちょうど目が覚めたみたいで、

昨日のことで少しお互い取り乱してしまったことを恥じていた

大広間に行くとみんな集合していたみたいで

ツバサと目を合わせお互いコクリと頷いたあとみんなの前でこう切り出した

「ツバサ…」

「うん」

「みんな昨日は取り乱してしまって申し訳ありませんでした」

ツバサと二人で深々と頭を下げた

「何も謝ることはないですよ」

「そうだ、誰しも愛する人が殺されればそうなるさ」

「フローラル様、ミネア…」

「よし、この話題は終わり!」

「しみったれた感じになるしな!」

と明るく振る舞いバ-ジェットが答えた

「バ-ジェットもすまなかったな」

「な-に謝ることでもね-よ」

「それで…」

「ああそうだったな」

マ-ニャの方をチラリと見る

みんなの視線がマ-ニャに集まる

マ-ニャが決心したように小さく息をはいた

「私は皆さんご存知だとは思いますが黒魔女です」

「申し遅れましたが敵対関係にある私を助けて下さりありがとうございます」と言い頭を下げた

「私は実験台として捕まっていました」

みんなが固唾をのむ

「徴兵として徴兵された先で…」

「!?」

一瞬みんな混乱したようだった

自分もだ

えっ徴兵された先で!?

戦争で人界に攻め込むために徴兵していたのではなかったのか!?

頭を必死に整理しようとしているとマ-ニャが見図ったかのように言った

「混乱してるとは思いますが人界に攻め込むために徴兵している…」

「これは事実だと思います」

「ただその一握りの徴兵された者が目的はよく分かりませんが

実験台として捕らえられているのです」

「そんな…」

ハッとして聞き返す

「この前の暗黒魔道師のやつか!?」

「はい、そうです…」

「そこは…もう…もう…地獄としかいいようがありませんでした…」

「うっ…」

マーニャが泣いている

「そんなひどい…」

顔をしかめながらそうミネアが答えた

「マーニャ無理するな…もう少し落ち着い…」

「大丈夫です!」

顔をしわくちゃにしながらマーニャが答えた

「みんなが…みんなが…」

「死ぬかもしれない…」

「いや恐らく死ぬであろう辛い目にあっているのに

私だけここにいるなんてできません!」

マ-ニャの目は必死に訴えていた

「黒魔女だけではありません」

「白魔女も捕まっています…他のモンスターたちも…」

ザワザワ

「やはり我々の仲間たちもつかまっているのか!?」

ミネアが言った

「はい、名前は分かりませんが死体の方を含めると数十名…」

「すいません…」

「何も謝ることはない!」

みんなが一斉にそう答えた

「それとさっきの暗黒魔導師の上にドクターベルケルというものがいます」

「ドクターベルケル!?」

「バージェット知っているのか!?」

「ああ知ってるも何も魔界軍の幹部だ」

「イカれた奴で有名でな…捕まったやつは

生きて帰って来ないってもっぱらの噂だ」

「しかも魔科学にも精通していてその実験になったモンスターや村、

都市が数知れないと聞く」「はい…私が捕まった先に怪しげな装置も数多くありました」

「しかし何で徴兵先で捕まえることができるんだ!?」

「人界に攻め込むために徴兵してるんだから他の幹部は黙っていないだろう!?」

「私も分かりません…しかし他の幹部も見てみぬしてるように感じられました…」

「命をかけて徴兵に参加してるんだぞ!」

「俺たちの価値って何なんだ!」

「マ-ニャ教えてくれ…その実験の場所へ!」

すると手をグッと捕まえられた

振りかえってみると真剣な顔をしたツバサがいた

「もう、どうしてワタルはすぐ熱くなっちゃうのさ!」

「気持ちは分かるけどワタル1人で行ってどうなるのさ!」

「でも…」

「でもじゃない!」

「いい?よく聞いて!」

「今回ばかりは1人で行ってどうにかなる問題じゃないよ!」

「これまでとは違う…魔界軍の幹部だよ!?」

「勝てっこないよ…」

「じゃあ…じゃあ…どうすればいいんだ!」

しばらくの沈黙のあとミネアが答えた

「再確認するが捕まっているのはマーニャ以外にも黒魔女もいるんだよね?」

「はい、います…」

「それならバーバラ様のもとへ…」

バーバラと聞いてフローラル様の顔が激しくひきつったのを感じた

「バ-バラはダメです!!」

「バーバラ?」

「ちょっと待ってバ-バラって誰なんだ?」

ミネアとマ-ニャが悲しそうな顔をしている

しばらくしてミネアが下を向きながら答えた

「バ-バラ様は黒魔女の…リ-ダ-です…」

「何故なんだフローラル様!」

「白魔女と黒魔女捕らえられて実験台にされてるんですよ!」

「このまま何もしなければ…これからもずっと貴女の仲間たちは…!」

「フロ-ラル様にとって白魔女は大事な仲間なのではないのですか!」

「それでも…それでもバ-バラとは手を組むことはできないのです!」

フロ-ラ様はもちろん、ミネアや他の白魔女たちを見ても悲しそうな顔をしている

敵対してるとはいえ今は一大事のはずだ

一時休戦してもいいとは思う

一体フロ-ラル様がバ-バラとこれほどまでに拒絶する理由は一体なんなのだ…

そう思ったときフロ-ラル様は重い口を開いた

「バ-バラは…私のお母様を殺した魔女なのです!」

辺り一面静まり返った

フロ-ラルの気持ちを瞬時に理解できた

フロ-ラル様にとってバ-バラは自分の母親を殺した憎き仇なのだ

絶対ないだろうが自分が村長を殺したバルクスと手を組めと

言われればどう思うだろうか…

何を言っているんだと当然の如く拒絶するだろう

それをフロ-ラル様にぶつけてしまった…

しかし…しかし!

もし村民の命がかかってるとすればどう思うだろうか…

自分にも分からない…ただアイツだけなら分かってくれそうな気がする

いつも自分のそばにいてくれて

自分を正しい方向へ導いてくれてきた

そう…ツバサだ!

そう思った途端ツバサが口を開いていた

「フロラ-ル様!」

「お気持ちは凄いよく分かります」

「もし自分が母親を殺された相手と手を組めと言われれば断るかもしれません」

「ただこのままならこれから必ず捕まるであろうかけがえのない仲間がたくさんいること」

「それと今現在も白魔女の仲間…そしてマ-ニャの仲間たち、

モンスターたちが捕まって酷い拷問や実験にあっていること

死ぬ運命であろう人がたくさんいる…そのことを忘れないで欲しいのです!」

「僕に言えることはここままです…」

フロ-ラル様がガクリと肩を落とし崩れ落ちた

「うっうっ…」

少し時間が流れ

「私なんてバカなことを考えていたのかしら」

「仲間たちや同じモンスターが苦しんでいる…」

「それなのに私ったら意固地になって自分のことばかり…」

みんなが心配して言った

「フロ-ラル様…」

「リ-ダ-失格ね…」

「そんなことないですよ!」

「誰だって苦しいときは自分を抑制できなくなります」

「何もリ-ダ-だからという理由でみんな付いてきてるんじゃないと思います」

「辛ければみんなを頼ったっていいんだと思います!」

「周りを見てください」

周りを見るとみんながフローラルを囲んでいた

「フローラル様…」

「フロ-ラル様…」

「ありがとう…うん…うん」

「何だかツバサに慰められたみたいだね」

「いやっ…そんなことないですよ(汗)」

ツバサが照れている

「ふふふっ」

さっきまで落ち込んでいたフローラル様の姿はなかった

「それでは一刻も早くバ-バラの元へ行きましょうか!」

燐とした表情でフローラル様は言った

「その前に…説明しておきたいことがある」

そう答えるとワタルたちの前に出た


「気づいてたかどうか分からないが私も元は黒魔女だ…」

そう聞いて俺とツバサ、バ-ジェットは絶句する

そういえば何か違和感があったんだ

いろいろなできごとに気をとられてたとはいえ

白魔女の姉と黒魔女の妹…

種族が違うのに何故姉妹だと不思議に思わなかっただろう

その時ふとバ-ジェットが言っていたのを思い出した

「ただその中には黒魔女もいて黒魔女からいろいろな事情があって

抜けた魔女でも仲間に迎えてくれるんだそうだ」


「アッ---!?」

「そうか!ただひとつ引っかかることがある…」

ミネアとマ-ニャに目をやる

ミネアは白魔女特有の肌白で艶やかな出で立ち

マ-ニャは黒魔女特有の褐色の肌で健康的な出で立ちである

どう考えてもミネアは白魔女

マ-ニャは黒魔女なのだ

種族が違うのだから姉妹には見えない

俺が考え込んでいるのを見透かしたようにミネアが答えた

「大分考え込んでいるようだね」

「私は元黒魔女だと言ったよな?」

「ああ」

「転生したのだよ黒魔女から白魔女へと…」

「転生!?」

「ああ」

「フロ-ラル様の浄魔の儀式によってな」

「浄魔の儀式!?」

「白魔女に入る条件は3つある」

「黒魔女から抜けて命を狙われてでも白魔女に入りたいという覚悟があること」

「フロ-ラル様の浄魔の儀式を受けること」

「そしてもう1つある」

「もうひとつ?」

「命と魔力をかける覚悟があること…」

「命と魔力…」

「そう浄魔の儀式はそれほど大変なことなんだ」

「黒魔女からの間者を防ぐためでもあるが」

「確かに…誰でも黒魔女から白魔女になれれば

白魔女の情報が筒抜けになってしまうな」

「それと命と魔力って…」

「浄魔の儀式に失敗すると命はなくなってしまう…」

「命の覚悟をもって浄魔の儀式を受けないといけないというわけか…」

「そうだ」

「それは間者が入り込めないわけだ…」

「あと魔力というのは?」

「例え浄魔の儀式に成功したとしても現在持っている魔力の半分は消失してしまう…」

「魔女にとって魔力とは命でありそして生命線だ」

「今の魔力を得るためにたゆまぬ努力や修練をしてきただろう」

「それを半分捨てろということなのだ」

「俺も今まで鍛練してきた剣技を半分捨てろと言われれば…」

「そうだ…並々ならぬ決意と覚悟がないと無理だろう」

ミネアを見ると何も語らないが魔力が溢れでてきてるのが分かる」

それこそ白魔女になってから今まで血の滲む努力をしてきたのだろう…

「そういえば何でミネアは黒魔女を抜けたんだ?」

「それは…すまん…」

ミネアは困った顔をした

しばしの沈黙が流れ

「ごめん…今聞く質問じゃなかったよな」

「もし話せるときがきたら話してくれ」

「ありがとう」

ミネアにも言いたくない事情というのがあるのだろう

自分が軽々しく浅はかな質問をしてしまったことを反省して

それ以上は何も言わなかった


「よし!」

「バーバラの元へ行こうか!」

そうフロ-ラル様が言った刹那何処からか大声で叫んでいるのが聞こえてきた

「大変です!!」

「どうした索敵班!?」

緊迫が走る!

「索敵班?」

「ああ白魔女のテリトリーにトラップ魔法をしかけそこを通過したものをここから視認することができる!」

「あくまで通報のためなのでダメージを与えることはできないがな」

「万一に備え索敵班は24時間体制で監視中だ!」

「それよりどうした!?」

「く、黒魔女の大軍がやってきます!」

「黒魔女の大軍だと!?」

「30、50、100、いえ500人はいる!」

「ああ!」

「どうした!?」

「しかも先頭にバ-バラが!」

「バ-バラが!?」

「えっ?えっ?えっ?あっ…ああ!!??」

索敵班がすっとんきょうな声を発している

索敵班がこちらを何度も見なおしてうろたえている

「だから、どうしたんだ!?」

俺が我慢できず叫んだ

索敵班が驚愕の表情でこう叫んだ

「バーバラの横に…マ、マ-ニャがいます!!!」

その瞬間全員が凍りついた

背筋がゾクリとしたのを感じた

「確かにマーニャなのか!?」

「はい間違いありませんマーニャです!」

マーニャをみんな一斉に見る

マーニャを見ると下を向き表情が分からない

しかし、どういうことだ!?

今いるマーニャは一体誰なんだ!?

さっきまで涙目ながら訴えそして話していたバ-バラは一体誰なんだ!?

全員がそしてミネアでさえもマーニャから一瞬で離れマーニャに向き直し武器を構える

「お、お前は誰なんだ!?」

マーニャが不気味に暗黒の微笑で笑ってるように感じた

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