黒魔女、白魔女編

あれから北の森に向けてしばらく進み

たき火を囲み夜営をしてる時にツバサが聞いてきた

「ねえワタル?」

「何だ」

「北の森に行ってそれからどうするの?」

俺はツバサの意図を瞬時に察した

「大丈夫、いくら初めにみんなで行こうとしてたからって

そこに永住しようとは考えてないよ」

「敵を討つのが先決だしお前の親やル-ツのことも

探し出さないと行けないわけだしな」

「ありがとう」


「北の魔女良い人だったらいいね…」

「そうだな」

「北の魔女ってどんな魔女なんだろ、やっぱり強いのかなぁ」

すると今まで黙って聞いていたバ-ジェットが答えた

「白魔女たちは強いぜ」

「少数ながら黒魔女と敵対してる勢力らしい」

「ワタルやツバサたちと似てるな」

「ハハハハ確かにそうだね」

「ただその中には黒魔女もいて黒魔女からいろいろな事情があって

抜けた魔女でも仲間に迎えてくれるんだそうだ」

「へえ…」

「それと少数なのに何で互角に戦えてるのか不思議に思わないか?」

「戦力的には圧倒的に不利だろ?」

「確かに…俺らはブラックゴブリンとあくまで敵対はしてなかったから

侵略はなかったけど、敵対してたらあっという間に全滅だろうしね

「あと別のあだ名があってだな消える魔女とも呼ばれてるらしい」

「消える!?

「そう、消えるらしいんだ」


「黒魔女たちが白魔女たちをアジトらしいところに

追い詰めても忽然と姿を消すらしい」

「魔法を使った痕跡もないらしい」

「それで消える魔女か…」

「しかも白魔女のリ-ダ-が博識でしかも鬼強いらしい」

「魔法がやっかいなのでモンスターたちは魔女の領域には近づきたがらないんだとか」

「まぁ聞いた話だし、実際に会ったことはないがね」

「バ-ジェット詳しいんだね」

「まぁ商売がらな(笑)」

「白魔女仲間になってくれるといいなぁ」

「おい、ツバサ!」

「仲間が多いに越したことはないけど気安く仲間っていうなよ」

「バ-ジェットが仲間になってくれたのは嬉しいけど…だけど俺正直今でも反対なんだ」

「えっ?」

「バルクスと敵対するということは巨大な魔界軍と敵対するということなんだ」

「反乱の件もあるしな」

「俺とツバサは事情が事情だし、ただバージェットは…」

「うん、そうだね…」


その時バ-ジェットが凄い剣幕で反論してきた

「おい!」

「誰が反対だって?」

「俺は来たくついてきてるんだよ、そこのところ誤解するな!」

「すまん…」

「ごめんなさい…」

「分かってくれればそれでいい」

しばしの静寂が流れた

「明日の峠を越えればいよいよ魔女の領域に入る」

「そろそろ寝るか」

「そうだね」

「おう」

俺はバ-ジェットに対して何てことを言ってしまったんだろう…

死ぬかもしれない、それなのに一緒についてきてくれてるのだ

素直にその気持ちに感謝しよう




そして夜が明け峠にさしかかった時に

何かに追われてるモンスターを発見した

魔女だ!

魔女がモンスターに追われている

どういうことなんだろう

この領域では魔女が最強ではないのか?


「魔女の領域に入られる前に何としてでも捕らえろ!」

「何なら殺してもかまわん!」

「魔女の領域に入られると手出しできなくなる!」

「グゲゲゲ!」

魔女は傷だらけのようで、完全に疲弊してるようだった


「ツバサ!バ-ジェット!」

「助けるぞ!」

ツバサとバ-ジェットが驚いた表情を見せている

「えっ…?」

「おいおい冗談だろ?」

「今後敵対する勢力だ…少しでも減らしておいたほうが…」

「そんなの関係ない!」

「目の前の追われている魔女を見殺しにしろっていうのか!」

「そんなのバルクスやキングと一緒ではないのか!?」

「敵も助ける…味方も助ける…そんな甘い考えならこの先厳しいぞ」

バ-ジェットが真顔で質問した

「その時はそのときだ!」

「俺は目の前で困っている人を見捨てて見殺しなんかできない!」

「ふふふワタルらしいね」

「ったくうちの大将は…」

二人は諦めの表情を見せている…

しかし、二人の表情はどこか嬉しそうでもあり爽やかだった


「しかし厄介なモンスターに追われてるようだぜ」

「魔術師ゴブリンやフラワードラゴンがいやがる」

「巨人ゴブリンもいるね!」

「魔術師ゴブリンはモンスターの攻撃力や防御力を上げちまう」

「とくに攻撃力の高いフラワードラゴンや巨人ゴブリンとのペアは

気を付けないと命を落とすぞ!

「了解!」

今はこっちの存在に気づいていない…

「みんな、魔術師ゴブリンを先に倒す!」

「了解!」

「オオオオオ!!」

魔術師ゴブリンに剣を突き刺そうとした矢先

視界から突然巨大なコブシがこちらを捉えているのに気づく

「巨人ゴブリンだ!」

咄嗟に剣の矛先を変え剣を盾にする

次の瞬間剣が巨大化し衝撃を防いでくれた


「ぐぉっ!」

他の二人はどうやらうまく回避したみたいだ

「ワタル大丈夫か!?」

「ああ大丈夫だ!」

「剣が巨大化し俺を衝撃から守ってくれたみたいだ」

これがゴブリンソ-ド…

「何だお前らは!」

魔術師ゴブリンが驚いた表情で問い詰めてくる

「ハァハァ…ありがとうございます」

魔女が自分を助けてくれたのが

信じられないといった表情ではあるが

感謝の意を述べてくる


と話してるうちにフラワードラゴンが突っ込んできた

「ワタル危ない」

ツバサがフラワードラゴンに攻撃をしかける

「5連斬!」

ツバサが鮮やかに舞いながら

目にも止まらぬ速さで5回連続で攻撃を決めていく…


相変わらずツバサのスピードは見事だな…

村長との修行でツバサに敵わないと悟っていなかったら

今の自分のスタイルはないだろう…

この人間と変わらぬ体型を活かして力だと巨大モンスターには敵わないし

スピードを極めようだのと思ってただろうな…フフフ


「へえ…凄いな…」

「ワタルから速いとは聞いていたがまさかこれほどとは…」

バ-ジェットが驚きの表情を見せている


「グゴゴ!?」

フラワードラゴンが痛みに耐えきれず立ち止まる

「浅かった!」

「しかし硬いなあ」

「でもこの黒刀…少し試し切りに切ったつもりだったのに凄い切れ味だ…」

「おまけに軽い!」

「これなら…」


「でもコイツら強いな」

「昔村にいた時より巨人ゴブリンが強くなってる!」「多分魔術師ゴブリンが攻撃と防御を上げる魔法を唱え済みなんだろ」

バ-ジェットが答えた


「だからか!」

「巨人ゴブリンのコブシがやたら重かったのは…」

「ゴブリンソ-ドが守ってくれなかったら、かなりヤバかったかもしれない」

「お前ら何やってる!」

「さっさとやってしまえ!」

「バ-ジェット…黒魔女を守っていてくれ」

「りょ-かい」

「ツバサ行くぞ!」

「うん!」

「初空!」

「土崩し!」

さすが防御魔法使われてるだけあって硬い!


それなら!

ゴブリンソ-ドは巨大化し俺を守ってくれた…

守ってくれたということは…!


巨人ゴブリンの上空へ飛ぶ

するとみるみるゴブリンソ-ドが巨大化していく…!

「空中…巨大一刀両断!」

「ウォオオオ!!」

巨人ゴブリンが悲鳴を上げながら真っ二つに割れた

ゴブリンソ-ドが元の大きさへと戻る


ツバサの方へ目をやるとツバサも戦闘開始のようだった

俺たちが囮になってるからか黒魔女への攻撃はないようだった


フラワードラゴンへと果敢に立ち向かっていく

この剣は軽い…そして切れ味も抜群だ

斬るのに力もいらないし、軽いのでもう一段階強くなれそうな気がする…

もっと速くもっと速く…

「ウォオオオ!」

「竜巻5連撃!」

ツバサが竜巻の風のようになって舞い上がる

「ゴゥモウウウ!」

フラワードラゴンがどさりっと横に倒れた


「くそ覚えてろよ!」

魔術ゴブリンが逃げようとするがバ-ジェットが待ち構えていた

「斧桜!」

「グギャッ!」

「ふぅ…終わったか…」

三人で歩みよりハイタッチしようとした瞬間、何かに気づいた黒魔女が叫んだ

「まだよっ!気をつけて!」

そう叫んだ瞬間

「ダ-クサンダラ!」

そう確かにどこからか聞こえた


天空の雷鳴が三人を直撃しようとする…

あまりの突然の出来事に誰一人として動けなかった

黒魔女を除いては

「防魔壁の風!」

三人の目の前を一瞬魔壁ができダ-クサンダラの直撃は何とか阻止する

しかし、あまりの衝撃に三人とも瀕死の状態に陥る

「身体が…うご…か…ない」

「ぐ…お…」

「黒…魔女…逃げてっ!」

ツバサが精一杯の声で叫ぶ

しかし黒魔女も重症がひどく動けないでいた


すると向こう側から怪しげな男が動き出した

「あらっあらっいけませんね-」

「ドクターベルケル様の意向をうけて

ちょっと様子を見に来たらゴブリンが二匹と黒マントの男が

1人いるではありませんか」

「しかも私の使い魔を三人ともやっちゃってくれたみたいですし」

ツバサは人間であることを隠すため黒マントをしている

「ゴブリンごときがこの暗黒魔道師様に逆らおうなど…」

「黒魔女は実験のため、殺さないでいてあげますが」

「他の三人はさようなら…」

実…験…?

「今度は丸焦げになってしまいなさい」

「ひゃひゃひゃひゃ!」

不気味な笑い声とともに両手を空にあげ

「ダ-クファイラ!」

そう唱え暗黒の炎が三人を覆いつくそうとした瞬間


「流氷の伊吹!」

「氷の吹雪!」

聞いたこともない魔法でダ-クファイラを防ぎ

「いでよ、アイスロックモンスター!」

氷の塊のモンスターが眼前に現れる…

「なにやつ!?」

暗黒魔道師も驚いている

「弱い者いじめはいただけないねえ…」

「白魔女どもかっ!」

と暗黒魔道師が叫ぶ

周りを見てみると白魔女が7、8人はいる


「何故白魔女が黒魔女とゴブリンの小僧どもをかばう…!?」

確かにそうだ

白魔女に会おうとしていたが面識もないし、

何よりここは白魔女の領域ではないはずだ!

「ちょっとゴブリンの子たちに用があってね…」

えっ俺は頭のなかを整理できずに何がおこっているのか分からなかった

「どうするっ?これ以上この子らをイジメるなら私らも黙ってないし」

「あんたもただじゃ済まないよ?」

「くっ…」

「まさか白魔女が出てくるとは予定外でした…」

「いいでしょう…!」

「実験体を連れてかえれないのは残念ですが…」

「ただし小僧ども…!」

「次会ったときはこうはいきませんよ」


「一番前の小僧!貴様の名前は?」

「ワ…タ…ルだ」

「ワタルか覚えましたよ」

「私の名前はハイデル」

「暗黒魔道師ハイデルです」

「白魔女の貴様らも!今度会ったときは本気でいきますよ…ほほほほほ」

そう笑いながら暗黒魔道師ハイデルは闇に消えていった


助かった…の…か?

今いる白魔女は確かに白魔女であらう

出で立ちも酷似しているし、この場面でウソを言うわけがないからだ

ただ一つここで疑問が残る

何故俺たちが白魔女を訪ねてくることを知っていたのかだ

しかも魔女の領域を越えて…

横を見ると黒魔女も1人の白魔女を見つめ驚いた表情を見せている


「姉…さん!?」

そう言われるとその1人の白魔女もピクリと反応し黒魔女を見つめる

「マ-…ニャ…!?」

「やっぱり姉さんなのね…ミネア姉さん!」

えっえっ黒魔女の姉が白魔女…!?

全員キョトンとなる…

この時の光景を誰かが見ていたら笑い話になるだろう


とりあえず白魔女のご一行様に白魔女の本拠地に

連れて行ってもらうことにした


いろいろ聞きたいことは山ほどあったが疲れが三人ともピ-クに達し

とりあえず本拠地に着くまで休ませて頂くことにした

横を見ると疲れてそして安心したのか黒魔女も寝てしまっている

実験といっていたがこの少女はこんなボロボロになるまで一体どんな仕打ちを受けたんだろうか…

思うだけが心が痛くなる

「姉さん…ムニャムニャ」

しかしあどけない横顔を見てると突然目の前が真っ白になって静かに瞼を閉じた

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