ちょっと珍しいゴブリンと仲間と絆の物語 ~星の夢のかなたへ~

だんご大家族

プロローグ

ゴブリンと聞けば何を思い描くであろうか

野蛮で弱くて最下級のモンスター

誰しもがそう思い描くであろう

ただ限らずしもそうではない

人間にも良い人間や悪い人間がいるように、

数は圧倒的に少ないが良いゴブリンや良いモンスターだって当然いる

良いゴブリンたちを例えてみると毛並みが白いことからホワイトゴブリンと呼ばれている

この物語を読み終わってゴブリンについて少しでも誤解が解ければ筆者は幸いである




ワタル

本作の主人公

顔や姿は人間に似ている

まっすぐな性格だがそれが回りをひきつける不思議な魅力を持った少年


ツバサ

ワタルとは幼なじみで顔は童顔

とある秘密を抱えているのだがそれを一人で苦しんでいる


バ-ジェット

盗賊のゴブリン

ム-ドメ-カ-

盗賊になった経緯は不明

何か過去がありそうだが…






ここはとある最果ての辺境の地

ホワイトゴブリンたちが何百年か前に穏やかに暮らせるように作った村がある

物語はそこから始まる


「起きろ!起きろってば!」

「うーん…だが断るムニャムニャ」

「断られちゃったよ!断られちゃったよ!」

「うるさいよ」

パコン

「あっいてっ」

とまぁ何気ない日常でバカやってる俺の名前はワタル

ゴブリンの中ではホワイトゴブリンと呼ばれる種族の中の1人だ

人間にとっては1匹だろうがそれはあいつらが勝手に命名してるだけだ

みんなは特に気にしてないみたいだが俺は匹と呼ばれるのが癪なので1人と自分で言っている

もう1人の相棒の名前がツバサ

小さい頃から十数年一緒に暮らしている幼なじみみたい感じだ

ただツバサは俺たちとは違って…

「大変だ!」

「またあいつらが来たぞ!しかもあんな大勢!」

「300はいる!」

醜悪なゴブリン部隊(ブラックゴブリン)が村に入ってくる…

「くっツバサ!隠れろ!」


「なんでいつも隠れるのさ!」

「あいつらや悪い奴らをやっつけるため

そして村のみんなを守るためにに今までやってきたんじゃん!」

確かにみんなを守るためそして悪いやつを倒すために鍛練してきた

俺たち二人は剣技を磨いている

ゴブリンが弱いと決めつけてるやつもいるがそれは鍛練をしようとしないからだ

今まで二人で村長に剣技を習いながらただただ修練してきた

上級モンスターとかならまだしもそこら辺のゴブリンに負ける気はしない

ただし今回は相手が多すぎる


ツバサの存在は何としてでも隠さないといけないのだ

それがツバサを育てると決めた時に村のみんなで決めたことだ

「ツバサ!分かってるだろ!」

「僕の身体がみんなと違うから?」

「そうだ!」

奴らをツバサに絶対に会わせるわけにはいかない

ツバサの存在は奴らにとって宿敵なのだ

もし見つかればすぐさま討伐隊が編成されて俺たちはツバサを匿った罪で皆殺しにされるだろう

俺たちならいい

ただ俺たちとは全く関係のないツバサを巻き込むわけにはいかない

「ゲゲゲ」

「早く出てこいホワイトども!」

村長がゴブリン部隊長の前へ

「こんな大勢で今回はどういったご用件でしょうか…」


「人数がいる」

「もうこれ以上は村のみんなを連れて行かれるわけにはまいりません」

「俺たちに逆らうっていうのか!!」

「俺たちならまだいい、キング様のご命令に

逆らうっていうのはどういうことかわかってるのかグゲゲゲゲ!!!」

キングとは俺たちゴブリン族を束ねる王様のことだ

ただその王様もこの魔界からすれば

最下級の位に属しており上からの命令でゴブリンを集めるのに躍起になっている

戦争のためにモンスターといえど魔界全土から徴兵されるのだ

人間が俺たちゴブリンのことなんかどうとでも思っていないように

同じモンスターであっても上の連中からすれば俺らの命の重さなんて蚊ほども思っちゃいない完全使い捨ての道具さ

確かに能力的には弱いさ

魔力も使えなければ力も弱い知能も低い

ただ俺たちは生きてるんだ!

「ワタル…そんな怖い顔してどうしたの?」

心配そうにツバサは俺のことを見つめている

「いやごめんちょっと考えごとを」

ゴブリン隊長が不気味に笑い威圧するような声で言った

「近々大きな戦争がある…今日はお前らの中から50匹連れて行く!」

「ホワイトどもに逆らう権利なんてない!」

「そんなっあんまりです」

「村の人口の半分も連れていかれては…」

「うるさい!」

「ヒデブ!」

「ホワイトどもの村がどうなろうが知ったことではない」

「もし逆らうならキング様から皆殺しにしろとのお許しも出ている」

「やれお前ら!」

「グゲゲゲゲ」

その時に投げ縄みたいに一斉に丸くなった縄の先端を投げ

首にかけられ捕まったものからひきづられていく

「いやあああ!」

そこからはまさに地獄絵図だった

笑いながら首を跳ねているゴブリン

家に火を放つゴブリン

ロープを首にかけられ窒息してる者もいる

20人は捕まったであろうか…

こんなの虐殺ではないか…

俺は何もできないのか!

こんなのあんまりだ!

俺たちは抵抗することさえ許されないというのかキング!!

「ゥゥゥゥ」

長老の方に目をやると目頭を抑え必死に震えながら我慢している

「グゲゲゲゲ多少傷ものになろうがどうでもいい!」「連れて行け!」

俺は…俺は!!

その時にどこからか聞き覚えのある声がした

「やめろおおおおお!!!」

嫌な予感がして隣を見るとツバサがいない…

ツバサのやつ!

「お、お前は…」

「何故人間がこんなところにいる!!!!」

「ニンゲンだニンゲンがいるぞ」

ザワザワ…

「ホワイトども…まさか人間をかくまっ…」

「人間?」

ツバサは一瞬驚いた表情を見せたがそれもすぐに消えた

「直角剣!」

直角剣はツバサの一番得意とする技だ

低空姿勢で一瞬で相手の懐へ近づきその反動を利用して直角に剣を空へと舞い上がらせる

直角剣と叫んだ刹那あっという間にゴブリン部隊長の懐へ近づいていた

ゴブリン部隊長は自分に何が起きてるのかも分からないだろう

力強く天空に舞い直角剣を決めゴブリン部隊長を真っ二つにした

「グゲッ」

ゴブリン達は硬直している

まさか抵抗されるとは思わなかったのだろう

キッと周りを睨んだ

「はぁ…バカた・れが…」

村長が嗚咽を漏らしながら少し嬉しそうに小さくぽつりと言ったのが聞こえた

「仕方ない!みんな!こやつらをを全滅せよ!」

「おおおおお!!」

その言葉を待ってたかのように村全体が震えた


ホワイトゴブリンは村長や俺とツバサ他の少数のホワイトゴブリンを除いて

通常のゴブリンと比べ非力なホワイトゴブリンが多い

静かに暮らしたいと願うものも多い

争いも好まない

いやお互いにそしてブラックゴブリンにいくら罵声を浴びせられ罵られようとも争ってるのも見たことはない

その人たちが今は必死な形相でゴブリンに戦いを挑んでいる

殺されるかもしれないのにだ

むしろ100対300

勝てないと分かっていても戦いに挑んでいる

ツバサが勇気をふりしぼって前に出た

村長や村のみんなも必死になって戦っている

俺は何をやっているんだ!

ツバサや村のみんなを守る?

守られてるじゃないか!


ふと気がつけばブラックゴブリンと戦っていた

みんな必死になってブラックゴブリンと戦っていた

満身創痍になりながらも周りのゴブリンは倒した

周りを見てみると

「残り50体か…ハァハァ」

何体ブラックゴブリンを倒したかも覚えていない

ツバサの方にも目をやるとツバサも周りのブラックゴブリンは倒したようだった

「ツバサ!」

ツバサがこっちを見る

俺が生きてるのを確認してホッとしてるようだった

お互い目を合わせコクっと頷いた

「いくぞ!」

「うん!」

お互い残りのブラックゴブリンめがけて突進した


時間がたち気づけばブラックゴブリン残り一体になっていた

「ホワイトどもこんなことしてただですむとでも…」

「僕はお前らを許さない!」

ツバサの最後の一振りがブラックゴブリンを切り裂いた

「やったあああ!!!!!」

「うおおおお!!!!」

村全体が歓喜に包まれた

あの圧倒的な不利な状況から生き残ったのだ

しかし次の瞬間静寂に包まれる…


「生き残ったは50人か…」

「結局連れて行かれたのと同じ運命か…ちくしょう!」

と村の誰かが言った

しかし300体相手に俺とツバサ、村長そして少数のホワイトゴブリン以外に

圧倒的にブラックゴブリンに劣る村民で戦ってこれだけ生き残ったのは奇跡に近い

それとみんなが暗いのはもうひとつ理由がある


今後のことだ

徴兵しに行った部隊がなかなか戻ってこないのを不審に思って

必ず偵察の兵が送り込まれてくるだろう

向こうは村民の数を把握してるはずだし村民の数を確認すると

反乱がおこったのだとただちに察知するだろう

その偵察兵も全滅させることもできるかもしれないが、

例え全滅させたとしても次の偵察部隊にはそうはいかない

ただちに上級モンスターを引き連れて偵察しにくるだろう

上級モンスターにはさすがに歯が立たない…

しかも初めの偵察兵の時に全滅できるとは限らない

あの時の戦力で敵に逃げられずに全滅できたとは奇跡に近いのだ


いきなり上級モンスターを引き連れてくることはないだろうが、

偵察兵は少数だろう

しかしいくら多勢に無勢とはいえ上級ゴブリンや巨人ゴブリンが複数いれば勝てないかもしれない

数体くらいなら俺とツバサ、村長で何とかできるかもしれないが…

しかし村民をカバーできない


しばしの沈黙が流れたあとで村長が決意したように語りだした

「みんなも分かっているだろうがこのままだと我々は皆殺しにされるじゃろう」

「そこで一つ提案だがこうなった以上村民の残りのメンバー全員でこの地を離れようと思う…」

ザワザワ…

「村長行く当てはあるのですか?」

と村民の1人が質問した

「行くあてはないことはない…」

「しかし皆のもの今は休もう」

「幸いここは辺境の地だし1ヶ月は偵察兵が来ることはないじゃろう」

「先を急いでも仕方あるまい」

「ところでワタルとツバサ二人に折り入って頼みがある」

「なんでしょう?」

「ここから1週間ほど歩いたところに医草という草が生えてる山がある」

「そこに取りに行ってくれまいか?」

「みんなケガをしていてな…治すのに必要なのだ」

「分かりました」

「こんなことがあった後のすぐにですまないな…」

「みんなのためですから」

そう言うとそこで万が一に備え見張りを数名残しみんな一端解散した


朝がきてふと目が覚めると横でツバサが思いつめた表情で窓から外を眺めていた…

「ツバサ…どうした?」

「なんでもないよ」

昨日あれだけのことがおこったのだ

心情を察しそれ以上は質問しなかった

身支度を整え村長に挨拶をした

「行ってきます」

「二人なら問題ないと思うが邪魔をしてくるモンスターもいるので気を付けてな」

「しかし二人とも剣技は見事に成長したな」

「昨日の戦闘は初陣とは思えない見事じゃった」

「いやいや村長にはまだまだ敵いませんよ」

「ふふふすぐに追い抜くさ」

「元気になったらまたたっぷりと稽古をつけてくださいね」

「今後のこともあるからさらにスパルタでいくぞ?」

「あれ以上のスパルタ!?」

「はははは」

「二人ともやっと笑顔になったな」

「しかし村長どこでその剣技を習ったんですか?」

今までも聞いたことはあったのだが見事にはぐらかされてきた

村長は神妙な顔になりこう答えた

「じきに分かるさ…お前たちならきっと…」

「ふっこれ以上は言うまい」

よくは分からなかったがいずれ分かると聞いて疑問だったことが解決したような気がした

「さて!ツバサ行くぞ!」

「うん!」


二人が見えなくなって村長はぽつりと言った

「いつか二人とも過酷な運命と直面する日がくるじゃろう」

「これ以上の過酷な運命を背負うならここで静かに生涯を閉じてもいいと思っておった」

「昨日の出来事で死を覚悟したがそれを二人ともはねのけおったわ」

「二人ともたくましく元気に育ったぞ…パルム…みんな」

その日が来るまでわしもまだまだ死ねぬなフフフ」


1週間ほど歩いて村長が言っていた山へやっと着いた

山といっても当然木が生えているわけではなく

瓦礫にうっすらと干からびた草が生えてる程度だが…

3時間ほど探してみたがなかなか見つからないなぁ

その時モンスターの気配を感じすぐさま構える

「ワタル!ウッドスカンクの群れだ!」

「ウッドスカンク?」

「へへへ村長からここら辺に出没するモンスターは確認済みさ」

「頼りになるな」

「ウッドスカンクは角に木が生えたスカンクでその角で攻撃を振り回してくる」

「それと角で攻撃したときにお尻の穴から強烈な臭いのするガスで

攻撃してくることもあるみたい」

「それを群れでしてくるから厄介みたいだね」

「ただ動きは単調なのでそれを見切ればそう手こずる相手ではないみたい」

「ワタルいくよ!」

「おう!」

少し手こずりながらもウッドスカンクを全滅させた

その時

「見てワタル!」

そこには医草が辺り一面に生えていた

医草は少量で集団で自生することが多く、

正直3日くらいは覚悟していたのだけど

「ツバサこれならすぐに帰れそうだな」

「うんそうだね」

医草を集め終わって村へ帰ろうとしたその時…

「ちょっと待ちな!!!」


声が聞こえたほうを見てみると一人のゴブリンが立っていた

「誰だ!?」

ワタルは思わず尋ねた

「俺はバ-ジェット」

「盗賊のゴブリンだ」

盗賊…

この魔界では人間界と同じように盗賊や山賊といったはぐれものが存在する


「小遣いついでに医草を集めてこようとしたら…ついてるな」

「その持ってる医草と有り金全部渡してもらおうか」

「なに命までは取りはしねえ」

「金はいいけど井草は村でこれを心待ちにしてるみんながいる…無理だ!」

「そんなことしるか!」

「言葉で言っても分からないらしいな…」

その場の空気が突然重くなる

「ツバサ!」

「うん!」

バ-ジェットが高笑いを上げながら一気に近づいてくる


近づいた瞬間バ-ジェットがマントの中から武器を出した…次の瞬間!

お互い武器が火花を散って交錯する

「斧か…」

「盗賊稼業がら力仕事がおおいものでね」

「しかしこの初撃に反応するとはねえ…」

「この男…」

「この小僧…」

…強い!


そしてワタルはツバサに言った

「この男俺1人でやる…ツバサは離れていてくれ」

ツバサはワタルの決意を察し了承する

「うん、分かった」

ツバサが連撃を得意とするなら俺は一撃必殺…パワー型だ

バ-ジェットのあの通常よりは小さい斧からは想像できないパワーが感じられた

ツバサには不利だろう


ここにくるまでウッドスカンクや他のモンスターと戦って分かったことがある

それは俺たちが確実に強くなってることだ

この前の死戦が強くしたのだろう

ツバサもそのことを感じているはずだ


「ふぅ-」

心を落ち着かせ大きく剣を構えた

「ようやく戦闘モ-ドか」

「受けてみろ斬空剣!」

斬空剣は大きく構え一太刀

ただそれだけだ

ただし上手く空気を見切って斬ることで

空気が真空の刃と化しそれが凶器となる

斬空剣がバ-ジェットを襲う


「うぉ!?」

「今のは危なかったぜ」

バージェットは思わず冷や汗をかいた


やはり単発では無理か…攻撃技の組み合わせでここぞという時にこの技を決めないと避けられると

村長に口を酸っぱく言われてたっけ…

「こんな技隠しもってるとはな」

「俺も本気でいくか」

途端にバ-ジェットの纏う空気が変わる


何かヤバい…!そう直感的に感じた

「途中で終わったんじゃつまらないから最後までもってくれよ」

そう言った途端猛然と斬りかかってきた

嵐のような連技にただただ耐えるしかない

「ヒャッハ-」

それからはただただ斬り刻まれるだけだった

意識が朦朧としてる中最後の一撃が自分を襲おうとしてるのを感じた

「楽しかったぜ、あばよ!」

自分の死を覚悟した瞬間

「ワタル!」

ツバサの声だった

その声が俺を踏みとどませてくれた

何とか最後の一撃をかわす

「こんなところで死んでたまるか!」


俺の今の力ではツバサみたいに連撃は無理だ

いけたとしても2、3回…

なぜ俺がパワー型を目指すに至ったかは、それはそれぞれ個人の好みだったり

自分の力を最大限いかせる特性だったりするだろう

俺はツバサみたいにスピードが早く連撃ができるわけでもない

魔法も使えるわけでもない


これから強大なモンスター相手にするならまずそれを、

粉砕することのできる力が欲しいと思ったからだ

俺にもっと力があれば…


その時ふと村長が言っていた言葉を思い出す

「ワタルよ個人の力には限界がある」

「当然勝てない相手にも巡りあうだろう」

「そのときに自然の力を感じるのじゃ」

「大地の力、風の力、天空の力など…」

大地の力…そう思った瞬間力がみなぎってくるのを感じた

何だこの感覚は…力強くそして暖かい

ん?ぼんやりと頭に映像が流れる…

なに何かを見せたいのか…?

魔界では見たこともない大きな木だ…巨大樹?

モンスターと人間が遊んでるのが見える…

これはゴブリン…えっ若かりし頃の村長!?

そこで映像は途切れた

何だったんだあの映像は…


しかしこの力ならバ-ジェットなんかに負ける気がしない!

「おい、その力は何だ…反則だろ…」

「自分でもよく分からない」

「よし腹くくった」

「次の攻撃で最後だ」

「望むところだ」

「ふっその真っ直ぐな目は負ける気はさらさらないってか」

一気に斧技で決める!

「ハンマーストーム!」

「オラオラオラオラ!」

「第一の型…初空!」

ハンマーストームを剣で払いのける

「第二の型…土崩し!」

バ-ジェットに斬撃を加え体勢が崩れる

「いまだ!」

「しまっ…!」

剣を大きく構える

「ふぅ…斬空剣!」

「ウォオオオオオ!!」

青白い光が刃となってバジェットを切り裂く!

「俺の負けだ…」

バ-ジェットがどさりと倒れこむ

「すごい!勝ったねワタル!」

「ハァハァ」

ワタルがどさりと座りこむ

「もう立てないやハハハハ」

「ツバサ手を貸してくれ」

「うん」

「みんなが待っている…村へ帰ろうか」

とぼとぼと医草を持って帰ろうとしたとき

「ちょっと待て何でとどめを刺さない!?」

「だが断る」

「お前を本気で殺そうとしたんだぞ!?」

「だが断る」

バ-ジェットに背を向けたまま立ち去ろうとする

「何かっこつけてんだよ!」

男と男が命をかけて勝負したんだ…俺だけカッコ悪いだろいが!!」

クルっと振り返りバ-ジェットの目を見て言った

「ばかやろう!!」

「命にカッコ悪いも勝負もあるか!!!!」

「命は生きてこその価値があるんだ!」

「命を粗末にするな!!!」

「文句があるんだったら回復してまた出直してこい!」

「何度だって相手してやる」

「ウウウウウ」

バ-ジェットが下にうつむきながら大きな涙の粒を流していた



バ-ジェットが落ち着くのを待って

今度こそ村に帰ろうとしたとき激しい胸騒ぎが頭を貫いた

なんだ…この嫌な予感は…

ツバサを見ると同じ感覚があるらしく激しく同様していた

なんだこの背筋も凍るイヤ-な感覚は…

「村の方角からだ!」

ツバサが慌てて言った

まさか…村にもう偵察兵がきたのか!?

いや村長が1ヶ月は大丈夫だと言っていた

まだ1週間とちょっとしかたっていない…いくら何でも早すぎる!

「ツバサ…急いで帰るぞ!」

「うん!」

急いで帰ったとしても3日はかかるだろう…頼む間に合ってくれ!

急いで帰ろうとしたそのとき

「待て!」

「今はお前の相手をしてる暇はない!」

「村のみんなが危険かもしれないんだ!」

「いや別にもう邪魔をしようとは考えてねえよ」

「ただ…」

「ただ!?」

「急ぎなんだろ!?」

「こいつを使っていきな」

バ-ジェットがピーと口笛をふくとあるモンスターが飛んできた

咄嗟に剣を構えたが

「このモンスターは!?」

「ランバ-ドだ」

「飛ぶことはできねえが走ることならできる」

「歩いて1週間くらいだったよな!?」

「こいつなら1日半もあれば連れてってくれるだろう」

「ありがとう!!」

二人同時に言った

「あと俺も連れてってもらうぜ?」

「えっ?」

「お前さんたちの村ピンチかもしれないんだろ?」

「頭数は多いほうがいい」

「それは助かるけど…」

「よし決まり!」

「どうせ拾った命だ…それにお前さんたちの村にどんな人がいるのか気になるしな…」

「ありがとう」

「な-に気にするな」

「小僧ども…いやワタル、ツバサ」

「フフフフ」

「はははは」

少し気が晴れた気がした




嫌な予感がしつつも1日半で村へ着いた…

「何だこの光景は…!?」

「こんな…ひどい…」

辺り一面火の海と化していた

ところどころ村のみんなの死体が転がっている

「村長!?」

慌てて村長の家に行く

村長が串刺しになっているのを発見する

「そんなウソだ…」

「帰ってきたらまた稽古してくれるって約束したじゃないですか!!!」

「誰が…こんなむごいことを!!!!」

「僕のせいだ…」

「えっ?」

ツバサが泣きそうになっている

「僕がこの前逆らったばっかりに…」

「ツバサそれは違う!」

「あのときはお前に救われた!」

「俺はあの時動くことができなかった」

「でも…でも…僕の…」

「ツバサよく聞け!」

「あのときにお前に救われたんだ!」

「お前が声をあげなければみんな戦おうとはしなかった!」

「あの状況からすれば全員皆殺しにされてもおかしくはなかったんだ!」

「それと前の報復とはまだ限らない!」

「いくらなんでも早すぎる」

それから一晩泣き続けた

夜が開け村長を埋葬しようとしたその時に

村長の身体から光が溢れた

「ワタル、ツバサよ…」

「もしこれを見てるときにはワシは生きておらんじゃろ」

「バルクスが動きおった…」

「バルクス!?」

「魔界のNO2の男だ」

バージェットがそう答えた

「この前のこと、もしくはお前たちのことかと思ったが

どうやらそうでもないらしい」

「あやつは暇潰しに村一ついたぶりながら皆殺しにする」

「それが運悪くこの村が標的にされてしまったということじゃ…」

「しかしお前たちや宝に気づかなくて本当によかった」

「宝?」

「いつかお前たちに渡そうと思っていた剣が2つある」

「ワタルお前にゴブリンソ-ド」

「ツバサお前に黒刀じゃ」

「ゴブリンソ-ドはこの村そしてゴブリン族の宝」

「黒刀はお前が放置されたいた真横に大事そうにそっと置いてあった剣じゃ」「村の祠に行ってみるといい」

「それとこの前言っていた行く宛というのは白魔女」

「北の森の白魔女を訪ねてみるとよい」

「最後に…お前たちは…大事な息子だった」

「村長おおおお!!!!」

村の祠へ行くと確かに厳重に封印された奥に祀ってあった

「これがゴブリンソ-ド…」

「これが僕の唯一の手がかりの黒刀…」


二人して息を飲む

手にとると力が溢れてくる

天空にかざすとまばゆい光とともに空へと消えていった

外へ出て三人とも集まり空へ剣ををかざしそして交わし誓った

「俺はバルクスを決して許さない!」

「命を何だと思ってるんだ!」

「村長、そしてみんなの仇を取る!」

「僕もみんなの仇をそして自分のル-ツを探し出しに!」

「俺はどうせ拾った命だ」 「魔王軍相手だろうとどこまでもついて行くぜ!」

「いざ、往かん」

「北の森の白魔女へ!」

「おう!!!」

三人が一つになった気がした

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