ムズガルド帝国編14


民家の中に重い空気が流れる


俺たちはバージェットの帰りを待っていた

バージェットは帰ってくると言ったとはいえやはりみんな不安なのだ


俺だってそうだ

それに昨日のこともある


そんなときツバサは言った

「バージェットは必ず帰ってくるよ…!」

「それにあんなことになっても僕たちに何も言わないのはきっと理由があると思うんだ」


「だから僕は…」

「バージェットを信じるよ」


「そうだな」

「そうっすね…!」

「ええもちろんよ…!」

「バージェット様が逆賊だなんて何かの間違いよ…!」


「だから…」

「バージェットが帰って来てもいつも通り接してあげよ?」


「当たり前だ!」

「了解っす!」

「バージェット様…!」


みんな一斉に大きな声を出してうなずく


そんな矢先にバージェットは帰ってくる


バージェット「戻ったぞ」

ウェリタス「戻った」


「おかえ…」

俺たちはいつも通り接しようとした


しかし俺たちの目は点になる


工工エエエエェェェェェヽ(゚Д゚;)ノ゙ェェェェエエエエ工工!!!!!!!



何故ならそこにウェリタスがいたからだ


それからしばしバージェットからの釈明があった


「なるほど…分かった」

ワタルは言う


「あの時は助けてもらって当然感謝している」

「それにこんなこと言える義理じゃないの分かっているが、

本当に俺たちを捕まえる気はないんだな?」


「当たり前だ」

ウェリタスは即答する


「私はこの男について知りたいだけだ」


その答えを聞いてみんな安心したようだ


するとヨサクは興奮気味に言った


「あんた…ムズガルド帝国軍第一士団長でしょ…!?」


「そうだが…?」


「おおおおおおおおお---!!!!!!!」

みんな興奮する


ウェリタスはヨサクたちの反応の意図することを察知した


「だから身分をあかすことは…」


ウェリタスはそんなこと言いながらもまんざら悪い気分ではなさそうだった


そして得意気に言う


「しかし…」

「ふっ」

「こんな下鮮なものたちまで私のことを知っていようとはな」


いやそのことはバージェットから聞いたのだが、

この事については誰も触れないでおこうと思った



そんなことを考えているとバージェットは真剣な顔をして

ウェリタスに再び確認するように聞いた


「さっきのあの話…間違いねえんだな?」


ウェリタスは答える

「無論だ」

「私が嘘を言うはずながなかろう」


バージェットはそのことを聞くとそれからしばし目を閉じている


何か考えているのだろうか…?


するとバージェットは決意した表情でワタルに言った


「ワタル…」

「ん…何だ…?」

「ここに来た最大の理由は徴兵に紛れることだったよな?」


「ああそうだけど…」

ワタルは今さら何を言っているんだと困惑した表情で言う


しかしバージェットは少しニヤリとしながら言った


「あの話が本当なら徴兵に紛れる必要はなくなるかもしれない」

「望みはかなり薄いけどな」

「賭けてみる価値は十二分にある」


「?」


みんなバージェットが何を言っているのかよく分からない


「最大の敵を味方につけるんだ」

「こんな頼りになる味方はいねえ…!」


「最大の敵…?」

「それを味方にする…?」

「バージェット何を言って…」


いまだにバージェットが何を言っているのかよく分からない


そしてワタルは確認するように言った

「最大の敵って…」

バージェットは答える

「今この地での最大の敵はなんだ…?」


ワタルは困惑した表情で答える

「それはムズガルド帝国ぐ…」


そこまで言おうした時…!

ワタルは驚愕の表情を浮かべる!


「まさ…か…!?」


「ああそうだ…」

バージェットはニヤリと笑う



そんなバージェットとワタルの話の内容を知ってか知らずか、

さっき自分が言ったことが重要な気がしてポツリと言う

それはワタルたちにとってとても重大なことだった


「キング様に変わってジュニア様が現在の王になっているのが何か…」



その言葉を聞いた瞬間…!



みんなは再び仰天する


工工エエエエェェェェェヽ(゚Д゚;)ノ゙ェェェェエエエエ工工.

工工エエエエェェェェェヽ(。Д。;)ノ゙ェェェェエエエエ工工!!!!!!!!

(;゚ ロ゚ )ナン!( ; ロ゚)゚ デス!!( ; ロ)゚ ゚トオオオオオオオーーーーー!!!!!!!!




「う…そ…だ…ろ…」

「今の王はキングじゃないの!?」

「初耳っす…!」

「驚いたわね…」


再びバージェットは希望の目を輝かせながら言った


「キングではなくジュニア…」

「あいつなら…!!!」



ウェリタスは驚愕した表情で言う


「ジュニア様を…知っているの!?」


「まぁ…」

「ちょっとな…」


そして話を逸らすかのように言う


「キングならドクタ-ベルケルの話をしても一笑にふし

すぐさま俺たちを捕らえ皆殺しにするだろう」

「そんな奴だ」


「だがジュニアなら…」

「ほんの少しだけなら話なら聞いてくれるかもしれない」

「それに全てを賭けるしかねえ」

「もし全てがうまくいけばムズガルド帝国軍全てが俺たちの味方になってくれるはずだ!!!!!」


「!?」


だがツバサは心配そうにワタルを見つめる


そう…人は違えどムズガルド帝国の王は俺たちの村を襲ったんだ

徴兵という名の虐殺のもとに…


だが今はそんなことにこだわるべきではない事は分かっている


だが…


そんな俺の気持ちを察してかバージェットは言った


「お前が俺たちの大将だ」

「お前が嫌なら…」



村のみんなの顔が頭の中に出てくる

村長、みんな…


そして決意して言った

「いや…構わない」

「村長や村のみんなは言ってくれてる気がする」

「俺たちのことはいい」

「お前は前を向いて進めって…!」



「そう…か…」

バージェットは俺の心を確かめたようだった


それでもツバサはある不安を口にする

「ホワイトゴブリンのワタルの言うことなんか信じてくれるの…?」

もっともな不安だった


しかしバージェットは言う

「いや…それについては考えがある」

「むしろこれなしではジュニアの説得には欠かせない」


「それは…」

「ムズガルド城の中央に高くそびえる塔」

「あそこの最上階にあるお宝が眠ってる」


みんなゴクリと唾を飲む

「そこにはラ-の鏡がある」


「ラー…の…鏡…?」


「ああ」

「真実の…鏡だ」

「その鏡は映ったものの真実を全て写しだす」


「ジュニアの前でその鏡にワタル…お前の思いを全て込めろ」

「それでジュニアに届くかもしれん」

「俺たちの思いが…」

「そして真実を…!」



そしてバージェットは今後の作戦を話し始める


「騒ぎが治まる明日の深夜」

「ある地下水路からムズガルド城内へ進入する」

「そして一気に中央の最上階を目指す…!」

だがバージェットは注意するように言った

「何事もなく無事に最上階へ全員たどり着けるのが理想だが物事はそんな単純じゃない」

「それにあいつらはそんな甘くない」

「そして何がおこるかも分からない」

「もしかしたら仲間の誰かが犠牲になるかもしれない…」


バージェットは語尾を強めて言う

「だが決して立ち止まるな…!」

「仲間を犠牲にしてでも前に進まなきゃあいつらを越えてはいけない…!!」

「全てはドクターベルケルの野望を止めるために…!!!」

「希望は…ある!!」


お互い見合う

そしてコクりとうなずいた




あなたたちは…一体何を考えているの…?

ウェリタスはあまりの出来事に固まっていた

思考がついていかない


ドクタ-ベルケルって魔界軍の幹部でしょう…?

それが何で…?


それにバージェットやワタルたちに戦慄を覚えるのを感じた


あなたたちはたったそれだけの人数でムズガルド帝国軍に挑むつもりなの…


あなたたちの何がそうさせてるの…

一体何を抱えているの…!?


何だろう…

それが何か分からない

でもバージェットの言葉が…!

みんなの言葉が…!!

自分の胸の中に熱く流れ込んでくるのを感じた



そうウェリタスは思ったとき後ろで何か音がした気がした

急ぎ後ろを見てみると丸太が倒れた音だった

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