ムズガルド帝国編11

俺たちは無事にムズガルドの城下町へと潜入することに成功する


しかしある老人を助けたことがきっかけでゴブリン兵に追われてしまう


しかしその逃げた先である女性と巡り合うのだった



「あなたは…」

「お前は…」

二人は目を合わせる


俺は知り合いなのか…?

そう聞こうとしたその時、

荒々しい声が聞こえた

追手がもうすぐそこに迫っていたのだ


そしてもうダメだ…

そう諦めかけたその時…!

その女性は言った

一瞬で俺たちに何が起こっているのか察したようだった

そして小さく叫ぶ

「何やってる!」

「早く私の後ろの建物の中に隠れて…!」

咄嗟に俺たちはその女性の後ろの建物の中へと隠れる


「こっちだ!!!」

激しい足音とともにゴブリン兵が駆け寄ってくるのを感じた


俺たちは事の成り行きを静かに見守るしかなかった

そして耳をすましていると声がしてきた


「ウェリタス様…!?」

誰かを呼ぶ声らしい

誰だろうか…?

しかし呼ばれた者が誰かすぐに分かった


それは俺たちを助けてくれた女性だった


そしてその女性は平静を装ったように言った

「どうした?」

「いえ…!」

「こちらに逃げてきた者たちはいませんでしたか…!?」

「いや見かけなかったが…」

「そうですか…」

「ちっ逃げられたか…」

「だがまだ必ずこの辺にいるはずだ…探せ!!!」

「はっ…!!」

そして嵐のようにゴブリン兵たちはここから消えていった


俺たちはホッと胸を撫で下ろす


すると声がしてきた


「いつまで隠れているのだ」

「早く出てこい…!」

そう言われ俺たちは出てきた


そして俺は言った

「あの…助けていただいてありがとうございます」

「そんなことはどうでもいい」

「それより…」

何か訝しげにバージェットを見つめた

「そなた…どこかで会うたことがあるか?」

「まぁ見るからに下鮮の出身であろうから、私と関わりあうなどあろうはずもないが…」


「おい…」

俺はその一言に怒りを覚えその女性に向かおうとすると

バージェットは手で俺を制止するように言った

「いや知らねえな」

「さっき自分が驚いたのはかなり高貴な方だと思ったからだ」

「そう…か…」

その女性は何故か少し悲しげな表情を浮かべながら言った


そのときまた声がしてきた

「ウェリタス様!?」

敵か…!?と身構えるがどうやら敵ではないらしい

その女性の付人のようだった

そして先ほどおこったことをその付人に説明してくれている

しかし納得したようだったが俺たちを見る目は明らかに異質だった

そして俺たちを見て蔑むように言う

「おいお前たち…!!」

「貴様たちが何をやったの知らないがウェリタス様に感謝するんだな」

「普段ならお前たちのような下鮮者がこの御方にお目通りするような…」

「もうよい」

そこまで付人が言おとするとウェリタスは制止した

身分を明かすことに何か悪いような気がしたんだろう


そうこうしてる内に次の追手が来ようとしていた

大きな声が聞こえる

「ここら辺に潜伏しているのは間違いない!」

「しらみ潰しに探せええ--!!!」

「はっ…!!!」


俺たちには時間がなかった

またウェリタスに迷惑をかけるわけにはいかないので、

早々にこの場から逃げることにする


俺たちはウェリタスとその付人に深々と頭を下げるとその場から離れて行った


そして離れるワタルたちを見て付人は怪訝そうに

ウェリタスに伺いを立てていた

「ウェリタス様…何故あのような下鮮な者たちを…?」

するとそのウェリタスは困惑した表情で答える

「それが…」

「私にも分からないんだ」

「何故あのような行動を咄嗟に取ってしまったのか…」

走り去るバージェットを見つめ言った

「しかし…あの先頭にいた男」

「何かが引っ掛かる」

「何かが…」



場面は変わり

「はぁ…はぁ…」

全員大の字になり倒れこむ

「疲れたぁ…!!!」


「この辺まで来ると流石に大丈夫だ」

バージェットは言った


城下町のかなり外れのほうまで来ていた

追手の様子もない


夜も更けていた


そしてしばし休憩してから、

気になっていたあの質問を再度バージェットへとぶつける


「バージェット…」

「ウェリタスとは知り合いなのか?」

バージェットは闇空を見上げながら答えた

みんなバージェットに注目している


「い…や…」

「知らねえなぁ」

「凄い高貴な方だと思っただけだ」

先ほどと同じ答えだった


「でも…」

「凄い豪華な装飾品の鎧だったね…」

「びっくりしちゃった…!」

「凄い位の高そうな人だったけどお姫様か何かな…?」

そうツバサは言った


「それは違うぜ」

バージェットは答える

「姫は鎧なんか着ねえ」

「そして話は少し飛ぶがこのムズガルド城には俺が知ってる限りでは第7士団ある」

「上への士団へと上がるごとに強さが上がっていく」

「まぁ元々の身分も関係あるけどな」

「それにさっき逃げた先で戦ったやつ…」


「うん…!」

「凄い強かったね…!」


「あれは多分下位士団の副長クラスのやつだろう」


「うっそぉ~!?」

みんな目を丸くする


「アニキ…!」

「あいつ相当強かったっすよ…!?」

「あれで下位士団の副長クラスって…」



そうあの男が現れなければ俺たちはあんなに追い詰められることはなかったのだ

それにお互い全力ではないとはいえ

俺たち全員相手に五分五分の戦いをしていた


「はぁ……」

みんなため息が漏れる

改めて層の厚さを体感したのだろう


そして続けて言った

「さっきも言った通り上の士団へと上がるごとに強さも上がっていく」

「それに身に付ける装備もだ」

「そしてここから本題へと入るが…」

「さっき見たあのきらびやかて豪華な装備」

「ウェリタスだね…!?」

「ああ」

「あんな装備は下位士団で着られるはずがねえ」

「例え中位士団や上位士団でもだ」

「上位士団の中でも唯一着れる団長職」

「それはつまり…」

みんなゴクリと息を飲む


「あれは…」





「第1士団長だ」



工工工エエエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエエ工工工


(; ・`д・´) ナ、ナンダッテー !! (`・д´・ (`・д´・ ;)!!!!!!!



みんな仰天する






時を同じくして…

ムズガルド城の中にあるムズガルド帝国第1士団長ウェリタスの寝室のベッドにて


そして目を閉じ思う

何故だろう

ここ数日とても胸が苦しい…


それに

ムズガルド城下町で出会ったあの男…


お前は一体…


そして意識は夢の中へと落ちていく


また同じ夢を見ていた

昔から何回も同じ夢を見ていた

しかしここ数日この夢を見る頻度がさらに高くなっていた



また声が聞こえる

私を呼ぶのは誰…?

振り向くとそこには黒い影が立っている…

あなたは…一体誰なの

何かを必死に伝えようとしているのが感じとれた



そしてしばらくしてまた別の声が聞こえる

もう一人私を呼んでいる影がいることに気がつく


この夢は初めてだった

あなたは…誰…?

そう聞くとその黒い影は1つの紙切れを私に渡そうとしているのに気づく


て…が…み…?

それは手紙だった


あなたは私に何を伝えたいの…

この手紙には何が書かれているの…?


そして再びあの黒い影が頭の中を激しくフラッシュバックする

「ウェリタス!?」

「ウェリタス!?」

「ウェリタス!」

「ウェリタス!!!!」


「い…や…!!??」


ウェリタスは悲痛の叫び声をあげ、

そして言い様のない不安へと陥る



「たす…け…て…」

「ジャキ…さ…ま…」


ウェリタスはベッドの上で一粒の涙を流していた




そして意識は完全に闇の中へと沈んでいった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る