出自不明の美しい女剣士が、皇太子と出会い、国を揺るがす陰謀に立ち向かう――旧きよき少女漫画のテイストを感じさせる、王道ロマンス小説です。
主人公のリウィアスは、全盲というハンディキャップを持ちながら、容姿端麗、剣を遣えば鬼神のような強さを誇る、完璧超人のような女性。
そんな彼女が、祖国に仇なす敵をばったばったとなぎ倒すさまは、まさに爽快。過不足ない描写で描かれる戦闘には、臨場感があります。
偶然の出会いから皇太子に見初められた主人公が、皇太子のためにその身を捧げ、悪と戦う。その筋立ては、悪く言えばありがちですが、それゆえの安定感があります。
王都を囲う森に住まう獣たちが、王都を外的から護る存在となっているという点は、独自性のある設定だと思います。獣に森を通過することを許される「護人」、「代理人」という存在も物語と密接に関わっており、世界観とストーリーがきちんと噛み合わさっています。
残念な点を挙げるとするなら、クライマックスの戦闘が、ほとんど主人公側の思惑通りに進み、やや緊迫感に欠けたところでしょうか。
しかし、純真で一途な主人公と王子様とのラブ・ロマンスという、王道物語を楽しみたいというかたにはおすすめできる作品であるといえます。