フェアリーフレンドシップ

かつおだし

1話

ひねくれ少女

 真昼の日差しを白い壁と街路が反射して、目に刺さるかのようだった。

「──あれか」

 その白の中に溶け込んでいた扉を見つけて、男は呟く。

 立ち止まってポケットから薄汚れた手書きの地図を取り出し、自分の周りと扉の位置を確認する。

 そうして地図に付けられた赤いバツ印が扉の位置と一致しているとわかると、男の胸中にはわずかな安堵と達成感が湧き上がった。

 だが、男はそれに浸ることなく、扉の前に移動する。ほとんど壁と一体化しているような石造りのそれは、ここに辿り着く前に聞いた話を思い起こさせる。


 ──ありゃひどい人嫌いだからなぁ、追い出されてもおかしくない。


 男に地図を書いて渡した人間はそう言っていた。ここまで来れば、その話にも納得できるというものである。なにしろこんなの奥に住んでいる相手だ。まっとうな感性を期待するべきではないだろう。

 男は一つ呼吸を整えて、押し開きの扉を開けるべく力を込め──そうして、少女と出会った。

 

 

 


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