しろくろファンタズム
楓麟
序章
000 しろくろ
しろいねことくろいねこ。
二匹の猫が夜の街に現れた。夜な夜な、我が物顔で歩き回るその猫は、普通の猫とは違う、不思議な毛色と雰囲気を帯びていた。
白い猫は月の光に照らされて銀に輝き、
黒い猫はその輝きを跳ね返して、同じくその毛を銀に染めた。
白い猫はしなやかに、そして艶やかに。
黒い猫はその後ろを、影法師のように寄り添って駆ける。
それを見た人々は思わず立ち止まり、魅入ってしまうほどであった。
いつのことだろう、黒い猫の姿が見えなくなった。
白い猫が寂しげに、なあおと鳴きながら、ひとり夜の街を彷徨うようになった。
そうして、いつしか二匹の猫はこの街から姿を消した。
再び二匹が姿を現したのは、それから数十年後のことである。人々の記憶からとうに消えてしまった猫たちは、しかし当時と変わらぬ美しさで夜を支配した。
しろいねことくろいねこ。
今宵も二匹は仲良く歩く。
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