第10話 スライム
「さ、今日はいよいよバトルだね。冒険者の一歩を踏み出すよ。やったねー、カッコイイねー。『フン! ザコめが!』みたいにキメないとねー。冒険者の男の子なら、ここからが本番だからね」
「えーー。何するの?」
「簡単だよ。そこにいるでしょ、スライムが。あれをエクスカリバーでちょいっと、つっつけば終わり。ねっ。簡単でしょ。どう? どう? どう? やる気出てきたよね?」
「うわっ! へんなの来た。うわーーー」
「ねっ、ねっ、ねっ。相手はスライムだよ。冒険者のはじめのはじめに倒す相手だよ。ドラゴンでも、魔王でも、怪獣でも、宇宙人でもないんだよ。そんなに驚いちゃダメでしょ」
「やだやだ、来ないでー」
「もう、なんで、そんなに元気に逃げ回るかなー。それで魔王とか倒せるのかなー。神様、心配になっちゃったよ。……うーん。じゃ、まずね、ちょっと触ってみようか? 大丈夫。もし、攻撃されても痛くないから。ねっ、ねっ」
「やだ! 触りたくない」
「だからー、オリハルコンのフル装備で、エクスカリバーの剣を持って、スライム相手に逃げ回る勇者なんて、聞いたことないよ。我儘を言わずに、ほら、左手で触るの。こらっ、暴れないの。さっさと触りなさーーーーい!」
「いやだよーー。働いたら負けだよーー。あっ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。へ? なに、なに、なに? 今、ボンッってスライムがはじけちゃったよ。神様、ヌルヌルまみれになっちゃったよ。ビカム君、何したのかなー? それスキル? 魔法?」
「あーーぁ、触っちゃった。キモッ」
「えーーーーー。指先で触っただけで倒しちゃったの?? って、えーーーー、なんでレベルアップの音楽鳴ってるの?? なに、これ。なにが起こったの? 神様、急いでビカム君のステータスを確認するよ」
「もう、寝てるね」
「うん、いいよ、いいよ。今だけは寝てていいから。ちょーっと待っててね。って、なに、これ? ビカム君のレベル、MAX+1になってるよ。なに、これー、神様マニュアル読まないと……。なんか大変だよ! 一大事だよ」
「ぐぅー」
「なになに、レベルMAXから、さらにレベルが上がる確率は1%。しかし、そのあとは青天井で上がっていく、うんぬん。これかー、これだったのか、ビカム君が勇者に選ばれた理由は。大発見だね」
「ぐぅー、ぐぅー、ぐぅー」
「って、当然、熟睡するよね。うーん、ここは起こさずに神様、顔にいたずら書きしちゃお。ウケるよね。いいよね、それくらいしても罰はあたらないよね。……そんじゃ、瞼に目を書いて、キュッキュと。ギャハハハ。これはウケるね!」
「うーん。お姉さん、もふもふなんだね」
「……なーーんか、腹立ってきた。もういい。遊びはおしまい。ビカム君、起きて、朝だよー。本当は朝じゃないけど、マニュアルの確認が終わったよー。起きてねー」
「あれっ! ここ、どこ?」
「また忘れたみたいだねー。もうそれ、お約束だねー。その程度じゃ、あまり驚かなくなったよ。神様も成長しているね。やったぁー! だね。ねぇ、ねぇ。ビカミ君も嬉しいよね。ねっ、ねっ」
「フッ。じゃ、ま、そういうことで。お休みなさーい」
「なんか、まーた、鼻で笑ったねー。神様とは、どーも合わないねー。お休みじゃないからねー。でも、これで、ようやく、次の街に行けるから。ようやく猫耳お姉さんがいる街とは、おさらばだね。やったね! じゃ、起きてね」
「い・や・だーーー。寝るのーーー」
「いやだじゃないの! それに、何がいやなのか、神様は知らないし、知りたくないしね。これ以上、君に何かを言わせると、危険だね。きっと腹立つよね。さ、だだこねないで、ほら、行くよ!」
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