第9話 街
4:30
目が覚めると同時に不愉快なメッセージが目に入る。
「モンスターのレベルが上がりました…ねぇ」
溜め息まじりに呟き身を起こす。
これはあれか、日が経つ事にモンスターも強くなっていくって事なのか?それとも、プレイヤーが一定数のモンスターを倒したら上がる仕組みなのか?また、このメッセージは特定のプレイヤーのみに来るのか、それか全員に来ているのか?
現段階では未だ特定は無理だが、どう考えてもこれが今回だけとは思えない。
結局特定出来た所で、他の人と差を着け続ける為にもレベル上げは余念無く続けていかなければならない。
とはいえ、1晩泊まってもMPが半分も回復してない事を考えると、今までみたくスキル乱発は避けた方が良いか?
そんな事を考えつつ姉さんの生存確認を終えた時、下に名前が×マークで覆われている人に目が留まる。
山田 太郎[キャラクター名:モグラ]
死因:あいうえおによるPK
こいつは確か…何度か一緒にプレイする機会があったクラスメイトだったか。
余り親しくは無かったので悲しくはないのがまだあれか。
しかし、この世界で死んだら本当に現実でも死ぬ事になるのかというのも疑問ではあるが。
案外、普通に目が醒めていつもの生活を送っているかもしれないしな。
それにしても、さっきからやけに宿の外が騒がしいが何かあったのか?
昨日は殆どの人が寝ていたからかなり静かだったのだが。
宿屋の外へ行くと西と東の両門付近にそれぞれ結構な数の人だかりが出来ていた。
その少し離れた所に居る柳さんと合流する。
「何かメッセージ来てたんですが、柳さんにも来ました?」
「えぇ、その事で少し聞いて回ったのですが、どうやら全員に来ている様ですな」
「そうでしたか……」
騒ぎの原因はそれだったのか。
「前橋に行く前にモンスターのレベルがどのくらい上がったのか少し調べても良いですか?流石に気になるので」
「勿論ですとも」
話している内に開門時間となり、他の人達が土煙を上げながら駆けて行き俺達も煙が消えた後に出発した。
05:31
砂漠地帯
開門後、他の人がモンスターと戦っている所に横から【アナライズ】で情報を集め、その後、馬に乗り現在地に至る。
因みに馬には、
↓の説明はヘルプ[馬の機能説明]に記載
馬にもHPが設定されており、0になると強制的に馬が装置へ戻り、丸1日使用不可になる。
走行限界に達したら微動だにしなくなる。
因みに、今乗っている馬のHPは500とあまり高い方では無いと思われる。
「この辺りのモンスターも昨日と比べレベル上がってますね」
「その様ですな」
結果、種類によって違いはあったが、平均1~2レベル上がっている事が分かった。また、全く上がっていない種類は確認出来ず、倒した際に得られる経験値は上がる前より少し増加していた。
まだ差はあるし、俺達のレベル上げについてはこれ迄のペースでも大丈夫だとは思いたい。しかし、こうなると村で待機を決め込んだ人達の方が賢かったんじゃないかと思えてくる。
まぁ、姉さんが居る以上その選択肢はあり得ないのだが。
それからは当初の目的に戻り、前橋を目指す。砂漠や草原、雪原や荒れ地等、様々に変化するフィールドを進行方向に居たモンスターを倒しながら馬を2時間走らせ馬を降り、そこから徒歩で3時間程歩き続ける。するとようやく草原地帯の前方に高さ5m程の石造りの城壁を視認出来た。
「地図で確認した所、あれが前橋街で間違いないです」
「もう少し早く着けるかと思いましたが、存外時間がかかりましたな」
「ですね。今日は一通り施設を見て回ったら休むとしましょう」
「えぇ。そう致しましょう」
10:14
群馬県:前橋街 8
「やけに人が少ないですね。太田村だと待機組だけでも3桁は居たのに」
「そうですな。まだ街に到着出来た人は殆どおらぬようですな」
「でもまぁ、これなら宿屋の取り合いも起こらずに済みますね」
「ほっほっ、確かにそうですな。
では、一通り見て回ると致しましょうか」
一通り街を歩いた結果、中心地に村にも建てられていた時計台がある。そこを中心に四方に道があり、大きく4つの区画に分かれていた。
又、その他に村と比べかなりの違いを確認出来た。
北区は武器屋や道具屋に宿屋等、村にあった施設が立ち並んでいた。
品揃えに関しても村と比べ格段に良く、武器屋ではCランクの装備まで購入可能だった。だが、肝心の値段が一番安いCランクの物で数千Gするので、とても手が出せる物では無いが。
装備に使う素材を納品した場合でやっと1000Gを切るのだが、その素材も全く見たことが無い物ばかりだった。
まぁ、仮に買えたとしてもランク相応の熟練度が無いと装備出来ないので、現在短剣Eランクの俺には全く関係が無い事なのだが。
道具屋では、日に60km走る[駿馬]が購入出来るが、これも約3000Gと高く今のところとてもではないが、買えそうにない。また、ここでもMPを回復する道具はなかった。
東区は、ギルド申請所と不動産屋、それと村では訪れなかった希望の集積所がある。
ギルド申請所は設立する際にここへ申請を出さなければならない。そこでNPCから情報を聞かされた。
どうにもゲームだった頃に登録していたギルドは全て解散させられているらしい。
元々、それに所属していない俺には関係のない話だが。
因みに現状俺達は2人だし、作っても仕方ないのでギルドを発足させる事はしなかった。
不動産屋はギルドの活動拠点になる建物や東区と南区に建設されているプレイヤーの家を購入出来る。それに、南区の市場でプレイヤーが店を構える際に必要な場所を提供してくれるようだ。
東区の隅にポツンとある希望の集積所はプレイヤーがGを使い、その金額が一定以上になると拠点レベルが上がる。都市へ発展させるには必須の物だ。
南区は先に紹介した通り、プレイヤー用の住宅と市場がある。しかし、今は人が居ない為閑散としている。ゆくゆくは人でごった返す様な場所になっていくのだろう。
西区は酒場や薬剤店、それに加え鍛治場や料理教室等が立ち並ぶ。
酒場では料理を食べる事で回復や一時的な能力upが可能らしい。だが、回復する料理はやはり他と比べ高い。
薬剤店では回復アイテムが販売され、素材を納品すればMP回復アイテムも追加されるらしい。
また、鍛冶屋や料理教室等と同じく自分で作る事も可能で、経験を積めば専用のスキルも取得する事が出来るようだ。
そして、城門は東西南北の4ヶ所に増え、種類は櫓門になっていた。
また、門番に問いただした所、開門時間は変わらないが閉門時間は20時に延びている事を確認出来た。
城壁は内側に何ヵ所か造られている階段から上る事が可能でありそこから街を
それと、城壁の近くにゴブリンが居たので試しに上から【ウィンド】を当てたらちゃんとダメージが入る事も確認出来た。距離が離れていた為、結局逃げられたが。
一通り回った後、宿屋に到着。
外から見たらどこにでもあるような民宿なのだが、内装はビジネスホテル並みに綺麗に整えられていた。
柳さんと別れ部屋に入り、部屋の説明文に目を通す。
街の宿屋では1時間でHP:100MP:10回復するようだ。
相変わらずMPの回復量が渋いな。
だがまぁ薬剤店もあるし、素材さえ揃えればなんとかなるだろう。
ベッドに横たわるとそのまま身を預けこの日を終えた。
[希望の集積所]
─────
集落では只の石ころ、村では拳程の石、街では高さ1m程の岩と拠点の発展に伴い大きくなっていく。
此所にGを使用すると、一定額で拠点レベルが上がる。
レベル10の状態で上がると拠点の規模が大きくなり、その際一番多く使用した人にその拠点の発展方向を決める事が出来る。
この為、最終的には
使用額は規模が1段階大きくなる度にリセットされる。
集落lv.1~10
集落lv.11→村lv.1
村lv.1~10
村lv.11→街lv.1
街lv.1~10
街lv.11→都市lv.1
都市lv.1~10
都市lv.11→商業都市又は城塞都市のいずれかを選択して発展。
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