第12話 討伐!ゴブリン小隊1
行軍中、他のPTがどの様な構成なのか気になり、ひし形に展開している陣形の最後尾から【分析】を使用する。
先ず左前方にレベル11の戦士、騎士、魔法使いの女性3人PT。
右前方はレベル10の騎士2人、弓兵、僧侶の男女各2人PT。
そして、先頭を駆けるレベル13の戦士が1人、レベル12の足軽、騎士、魔法使い、僧侶の男性5人PTである。
騎士が少し多いのを除けば各PTのバランスは取れていると思う。特に、今回限定の急造PTかは分からないが、5人PTにも関わらず既にレベル13が居る所には期待が持てる。
真っ直ぐ南進を続けるボスを追い1時間経過。後十数分で追い付ける距離まで来た頃、先に出発したPTから先頭を駆ける金剛さんに連絡が入る。
『こちら
少し早口で話す男の声からは、多少の焦りが感じられる。
「金剛だ。状況を教えてくれい」
『敵の数は50程。前衛は通常のゴブリンとゴブリン戦士。
そこから少し数十メートル離れた所にゴブリン弓兵、魔導師、僧侶。
それと他と比べ、一際大きな個体であるゴブリンリーダーを確認。
更に、後衛職のそいつらを守る様にゴブリン騎士が展開している。
奴等は既に集落の直ぐそこまで進行し、現在集落に居るプレイヤーが交戦中。
だが、レベル一桁中心の為戦況は劣勢。
我々も彼等を助けるべく側面から敵前衛に攻撃を開始。
しかし、後衛の魔法や回復スキルにより思うように敵を削れず逆に此方が押されている状況だ。
出来るだけ速めの援軍を頼む』
「相分かった。儂らはもう十分程の所まで来ておる。
到着まで遅延に徹し極力消耗を避けるのだ」
『了解。なんとしても持たせて見せるさ』
再び戦闘に戻ったのか、それを最後に通信は切れた。
「状況は聞いての通りだ。先に好きに立ち回って良いと言った手前あれじゃが、儂の指示に従ってくれぬか?」
皆、今の状況に多少なりとも危機感を感じているのだろう。その言葉に反対する者はいなかった。
十数分後─
漸く草原地帯の遠方に、建物の周囲を膝下程の高さしかない柵で囲われた拠点と、そこを攻め立てる敵の姿を目視出来る距離まで迫った。
見た限り、前衛と後衛は数十メートル離れており、前衛部隊は拠点の目と鼻の先まで肉薄している。
また【索敵】で調べた所、ゴブリン小隊はその全ての個体がドクロマークで表示されていた。
これは、一匹でも拠点に侵入されたらお仕舞いという事だろう。
「このまま一気に後衛を突く!儂に続け!」
金剛さんがそう言い放ち距離を詰めていく。
背後ががら空きの後衛に攻撃を加える事に成功すれば、一気に戦闘は有利になるだろう。
しかし、俺達が視認したとほぼ同じタイミングでゴブリンリーダーに発見されてしまう。
見通しの良い草原地帯なので、こうなるのは当然なのだが。
そして、集落方面へ盾を揃えていた騎士部隊を、此方へ向け進路を防ぐ様に横並びで展開。それに伴い、後衛部隊も前衛の援護を止め、騎士の後ろに隠れる様に移動した。
これで多少は先行したPTは楽になるだろう。が、今度はこっちに魔法や弓矢が飛来する。
能力がさほど高くない為、単発だとあまり痛くないが騎士部隊で足を止められると、後衛を叩くのに余計な時間がかかる。
だが幸い、騎士部隊はあまり数が多くなく、俺と柳さんを抜いても此方が数で勝っている。
ならば、その優位を生かさない手はない。
「柳さん!俺達は前の人達を騎士部隊にぶつけ、大回りして後衛を横から潰しましょう」
最後尾に付けていたので、この状況から後衛に直接打撃を加えれる確率はこの方法が一番高い。
「確かにそれなれば、上手くいきましょうな。承知しました」
答えると直ぐに、馬を大きく迂回させていく。
そのすぐ後、金剛さん達が盾を構える騎士部隊の手前で下馬し、戦闘を開始する。
少し遅れ、懸命に矢を放ち騎士の援護を行っているゴブリン弓兵の横腹に、柳さんの剣戟が襲う。
メキッ、と鈍い音を鳴らし、大きく体をくの字に曲げ他の敵を巻き込みながら吹っ飛ぶ。
これで弓兵の陣形が崩れる。
いける!
一気に攻勢をかけようとした時、横から風が唸りを上げると共に鈍い衝撃が迫る。
「ちっ!」
咄嗟に盾で防ぎはしたが、大きく体勢を崩し、足を完全に止められた。
しかし、我ながら今の攻撃を良く防げたもんだ。確認するより早く手が動く事ってあるんだな。
体勢を整え、見るとそこには筋骨隆々、2メートル程の体躯を持ち、こん棒を担ぐゴブリンリーダーが居た。
再び降り下ろされたこん棒を後ろに飛んで避け、手早く【分析】で能力を確認する。
【ゴブリンリーダー】
lv.20
─────
HP: 1500/1500
MP: 200/200
攻撃:108
防御:72
魔攻:55
魔防:55
器用:42
敏捷:60
運:20
─────
周囲の他のゴブリンはレベル10程度に対しこいつは20もある。
流石リーダー格というだけあり、能力も他のゴブリンより全体的に高いな。
俺が勝ってるのはMPと器用さだけじゃないか。
攻撃は三桁到達してるし、加えて、スキルが視れない以上少しの油断も出来ない。
「立花殿、こ奴は私が相手を致しましょう」
「いえ、俺が足止めしとくんで、柳さんは後衛の始末を頼みます。
貴方なら時間も掛からないでしょう?
これが多分、こいつらに勝つために一番の方法だと思うんで」
「…承知致しました。すぐに戻ってきます故、立花殿。どうかご武運を」
言うや否や柳さんは後衛に斬り込んで行く。
その邪魔をさせない為、ゴブリン隊長の進路を防ぐ様に対峙した。
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