第11話 共同戦線

ヘルプを確認後、地図を開く。


ボスの名は【ゴブリン小隊】

場所はドクロマークで表示されるらしく、現在は街から南南西に20km程の所にいる。


幸い、馬を飛ばせば参戦が間に合いそうな距離である。


それに、ボスと言えど最初の奴だし、種類もゴブリンなので恐らく1体1体は大したことはないだろう。だが、問題なのはその数だ。



「柳さん小隊ってどのくらいの数になるんですか?」

「軍においては最大50人の規模になりますな。

……そして、初日ではなく今になってこの知らせを追加するあたり、実数は少なくとも最大数である50近くはいると考えた方が良いでしょうな」

少し間を置いた後、再び柳さんが口を開く。

「…もし、立花殿が今までレベル1のまま村に残る選択をしていた場合、この状況からどうやって生き延びようとしますか?」

「?…えーと、俺なら…」


質問の意図がイマイチ掴めないが。


先ず、安全地帯と思っていた拠点がそうではなくなる。

そして、県庁所在地ならボスの対象になるのが最後になるのが確定している。

そうなると、他の拠点と比べまだ安全といえる其所へどうにかして移動しようとするだろう。


だがそれは他の、拠点に滞在しレベル上げをしているプレイヤーも同じと思っていい。

…上手く彼等と同行する事が出来れば一気に危険度も下がる。

だが、PT人数が増えると経験値とGが減るにも関わらず、今更レベル1の足手まといを入れようと思う人が果たしてどれだけいるだろうか?

…殆ど無理と考えた方が現実的だ。


仮に入れたとしても複数人PTだと、既にその内部である程度の信頼関係が構築されているだろう。

その彼等が心変わりをし、此方をPKすべく動いたらどうなるか?


絶対に勝てないし、逃げようにも向こうが馬をもっていたらそれも無理。持っていない場合でも、最初から敏捷にかなりの数値を振り分けていないと逃げ切る事は困難を極めるだろう。

これらの可能性を考えると、この方法はリスクが高すぎる。



他には、同じレベル1で危機感を感じている人を誘いPTを組むのが良いだろう。…が、その場合は既に2回レベルアップしたモンスターと戦わなければならない。


それもどの程度まで上がったのか分からず、加えて回復アイテムも無く、ヒールすら覚えていない状態で…だ。


初期装備である木と布の装備を全て売れば、なんとか回復薬を1つ購入する事は出来るが。


それでも1戦目から死人を出し、俺も殺られる可能性が充分にある。

正直、これもまたリスクが高い。


他に…何かないか?

比較的安全にその状況から脱け出す方法は。




暫く思案しているとある考えが浮かんだ。


…同じレベル1の人を狙ってのPKならば今までの案と比べて、かなり上手く行く可能性はあるんじゃないか?


他は0に等しいがこれは互いにレベル1である以上、勝算は少なくとも5割はあるとみていい。

それに、PKを続け危険度を上げ賞金首になれば、獲得経験値も増えレベル上げも容易くなる。


注意すべきはレベルが上がっているプレイヤーに目を付けられない様に事を済ませる。それと、最初の相手を誰にするかだ。

少なくとも同年代から働く年代はいざとなると返り討ちにされる可能性もあるため対象から外す。

かといって、老人も柳さんみたいなパッシブ持ちの達人がいる可能性がある以上これも同様。



…ならば、狙うべきはろくに文字も読めず、操作方法も理解していないであろう幼子か。

少し甘い言葉で誘えば拠点外へ連れ出すのも恐らく簡単だろうし、戦闘になっても返り討ちにされる事もほぼ無いといえるだろう。


そして、レベルさえ上がってしまえば他と差が出る。

後は他のプレイヤーを同じ様に強引にでも連れ出し殺して行けば、一気にレベルも上がるだろう。

余り最初から賞金首ランクは上げたくはないが、それを気にしていられる状況でもないしな。


加えて、サブミッションも達成出来、大金も手に入る。

こんな時に金なんて俺としてはどうでもいいのだが、それに目が眩む奴も当然出てくるだろう。



「……色々、色々と考えたんですが、レベル高い人が去った後に、他のレベル1を狙ってPKを行いレベル上げる。

その後に県庁所在地に移動するのが、一番可能性があると思います」

「そうですな。今はまだそれを行動に移す者は少ないでしょうが、日が経つ程に多くなりましょう。

なればこそ、より早く合流すべく動かねばなりませぬな」

「確かに。その為にも今回のボス戦には参戦して、駿馬購入の資金を確保したい所」







街へ戻った後西門のすぐ側で、金剛こんごう強臣かつおみと名乗る長身で筋骨隆々、顔に深い皺がある色黒男が話し掛けてきた。

どうにも今回のボス討伐に参戦する人を探していたらしい。

参戦の意思があるなら、10分後までに他の参加者が集まっている南門へ行ってほしいとの事。



準備を終え、行ってみると俺達を含め十数人が集まっていた。



丁度時間になり、先程会った金剛さんが説明を行う。

この場でのPT構成について特に強制は無し。

先に行った幾つかのPTとは互いにフレンド登録を済ませているので、何かあれば通信を送る様に言ってある。

又、通信はスピーカー状態にし周囲の人にも聞こえる様にする。

現地では指示を飛ばす事もあるが、基本各々が戦いやすい様に立ち回ってくれて構わないとの事。


一通り説明を終えると直ぐにボスを目指し、金剛さんを先頭に南門から馬を飛ばした。

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