戦人戦記 -Warriors' Chronicle-

日刀火輪

序章〜Prelude〜

Ep.00 序言〜Prologue〜


 現在、地球上で最も強い存在は人間ではない。


 ――否、正確にはかなり前から"それ"は存在していたのだが、人類は"それ"を見ても何も感じていなかった。

 それは存在するが我々にかかわるものではない――そう、思っていたのだ。

 だが非情にも、大西洋上空に浮かぶ"それ"は、今から50年ほど前、突如、人類へ攻撃を仕掛けてきた。

 人類は"それ"を『アルゴス』と呼称し、反撃を開始したのだった。

 しかし、正体すら不明な敵の強大な力にはなすすべもなく、逆にアルゴスから蟻のように湧き出る『サテライト』たちに、完全に返り討ちに遭ってしまっていた。

 アルゴスから出現したサテライトたちは、そのまま米国東海岸へと上陸、侵攻を開始。

 しかし米国政府は持つあらゆる兵器を総力使用し、何とかそれらの掃討に成功した――筈だった。

 それでもアルゴスから週に五~六体ほど生まれ続けるサテライトによる波状攻撃で、東海岸の防衛はほぼ無力化されてしまった。

 ところが、ある科学者の発見したある法則により、事態は急変する。

 それは、「自軍勢力が小さければ小さいほど、敵の使用する攻撃手段が弱体化している」というものであった。

 これを知った米軍は、調査のため装甲車などを使用しない陸軍の歩兵小隊のみでの迎撃を決行。

 すると、サテライト達の攻撃が、『物理的打撃』および『小口径弾の掃射』のみとなることが判明したのだった。

 その後、度重なる検証の結果、人員十五人以下かつ女性兵と一部の特異な男性兵のみで編成された小隊で挑むことで、完全に攻撃手段を『物理的打撃』のみとすることに成功。

 これを知った世界各国の政府は、女性兵士の育成を開始し、戦場へと投入するようになった。

 そして現在もその形式は続いており、米軍の開発した『PP-027』という特殊な増強薬を投与することで、超大型銃器を装備できるようになった他には変化はない。

 だが、彼らとの戦いが始まって何年も経過した現在においても、なぜアルゴスやサテライトが人間を攻撃しているのかは未だ謎のままである――。


             蔵本 大吾 著『現代戦争記』第三章冒頭より抜粋

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