新星の探索者たち

高来 和良

第1幕

?日目-県内某所・プロローグ-

 VRMMO。

 「仮想現実大規模多人数オンラインゲーム」の英訳の頭文字を取った略語であり、今まで数多くの小説やアニメの舞台となった存在である。

 その存在は物語に登場した頃こそは「実現不可能」とされていた。しかし昨今では技術の進歩により特殊なゴーグルをつけながらプレイするだけでなく、自分の姿や身体能力を機械で読み取って忠実に再現したキャラクターで遊ぶことが出来る物まで登場していた。

 ただ物語に出てくる物と全く同じ、ゲームの世界に実際に入って体を動かしたり敵と闘ったり物を食べたり……するまでには届かず、多くの企業がそれを目指して未だに試行錯誤を繰り返していた。

 そんな中、ある時のゲームショウで衝撃的な発表が行われた。

 世界初となるVRMMOのα版の完成とそのテストプレイヤーの募集。

 多くのゲーマー達が夢に見ていたゲームがついに完成したこと。

 実績の全くない企業がその開発を担当していたこと。

 「NEW PLANET」という題名でジャンルはRPGである、という以外の情報が出なかったこと。

 発表までその情報が一切漏れていなかったこと。

 これら多くの要素が重なった結果、発表と同時にネットでは色々な意味で話題となった。

 そこにはちゃんとログアウトできるのか、人体に影響はないのか、運営会社は仕事をしてくれるのか、そもそも発売できるのかなどなど不安視するコメントも多々あったが、発表からちょうど1ヶ月後に公開されたテストプレイヤー募集のページのサーバーが大量のアクセスにより公開からわずか数分で落ちてしまった事態からその期待度の高さは見て取れた。

 「あなたの知らない新しいゲームを、ここに。(鋭意製作中)」というキャッチコピーが書かれ、笑っているように見える白い仮面をつけた人物が手を差し伸べているホームページで発表されたテストプレイの期間は最長2年。開催地は日本某所。

 ゲーム中で死んでしまったらそこでゲームオーバー、コンティニューすることはできない。テスト中のログアウトは基本不可。報酬はゲームクリアか死亡時までに手に入れたアイテムや称号などを現実世界で換金してお支払い。

 2年間生き残れなくてもある程度の戦果を残すことさえ出来れば一生を遊んで暮らせるだけの報酬が貰える……かもしれない、という謳い文句の入った募集要項はゲーマー達だけでなく一攫千金を狙う一般人の注目や関心を膨れ上がらせる要因となった。

 それから約半年間続いたテストプレイヤーの応募総数は約5万通に上った。

 その中から名誉あるテストプレイヤーの権利を勝ち取った99人は涙を飲んだ数多くの人々の期待と嫉妬を背にその舞台へ足を踏み入れるのであった。

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