19 観光イベント企画の進捗状況と今後のスケジュール報告
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十月某日、幸一は定例会議にて、これまでの観光イベント企画の進捗状況と今後のスケジュールを報告した。
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伊河市の観光イベントの一環として、伊河市のオリジナルキャラクターを制作することが正式に決定した。
制作したオリジナルキャラクターの利用方法として、伊河市の広報活動を主に利用される。詳しい利用方法は、市役所のサイトやパンフレットに掲載され、伊河市について、そして伊河市の観光名称について紹介案内することになる。
まず始めに、来年四月に開催される湯乃花祭りのマスコットキャラクター兼案内役として活用する。
キャラクターイラストのデザイナーは野原風花氏を起用し、キャラクターは伊河市の観光名所の一つである高咲山に生息している猿をモチーフにする予定である。
そして、そのキャラクターに合った声優を起用する。
※銀行ATMなどで採用されている音声ガイダンスに似たものである。音声で観光名所の案内を行う。
その声優(声の担当)は『伊吹まどか』を起用予定。
○○年十一月末までに、キャラクターデザインの完成予定。
××年一月末までに、本キャラクターを使用したプレサイトの完成予定。
××年二月末までに、三月中に湯乃花祭りの開催告知に合わせてキャラクターを公開。
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キャラクターデザイナーや声優に対して、長の役職が付く人達も幸一と同様に詳しくは無かったので案の定質疑が飛んだが、そこまで厳しく追求されることは無く、当たり障りの無い返答(若者に人気がある、知名度が有り広報的にも抜群などと)で難無く事無き得た。
野原風花のイラストを見せたが、イラストの善し悪しの判断も、自分たちの感性が古いものだと前回の会議で稲尾市長に突っ込まれて以来、長たちは極力若手の意見を理解し、汲み取ろうと努力をしているようだった。そして意外にも、声優を起用するということには、そこまで否定的な意見は出なかった。
むしろ、「確かに、パソコンで文章を読むのは辛い歳になってしまったから、音声が有ったら便利ですね」といった様に好意的であった。
肝心の稲尾からも、
「なるほど、声優ですか……。そう来ましたか……」
何かを考え込んでいるかのように暫し黙した後、
「良いですね。やってみましょう!」
と、太鼓判を押して貰ったのである。
何はともあれ稲尾市長を始めとする、他の長たちの承認を無事得ることが出来、本計画の予算が正式に降りることになった。
こうして、高野幸一が企画した伊河市のオリジナルキャラクターを使用した、町興しの観光企画が本格的に動きだしたのである。
会議が終わり、休憩室で幸一は大きな息を吐いていた所、
「先輩、お疲れ様です。無事に難関を越えましたね」
薫が労いの言葉と共に駆けてきた。
「そうだな、ひとまずね。飯島さんもお疲れ」
「いえいえ。私はまだそんなにやっていませんけど……。でも、声優の件がすんなりでしたね」
「ああ。もっと、ねちっこく聞いてくると思ったけど……」
「だけど、声優は岩崎潤さんが起用出来なくて残念ですよね」
「仕方ないよ。なんでも岩崎さんは、気管支炎の病気で暫く活動休止を余儀なくされたみたいだからね……」
岩崎潤が所属する事務所に連絡を取ったが、つい最近、長年患っていた気管支炎が悪化してしまい、完全治療させるために長期休職すると伝えられたのであった。程なくして世間にも正式発表されて、ネットのニュースにも取り上げられた。
スケジュールの都合から岩崎潤の復帰を待てない事情もあり、残念ながら、岩崎潤を起用出来なかったのだ。
「そうなんですけど、本当に残念ですよね……。無事、治って貰いたいですよね……」
「マネージャーさんの話しでは、岩崎さん本人もやりたがっていたそうだけど、いかんせん喉の病気だし、完治するまでの期間が未明だしね」
「あと、平岡さんがプッシュする声優も全員ダメでしたよね。声優って、結構忙しいんですかね?」
岩崎潤だけではなく、第二第三候補の声優もスケジュールやギャラの都合などで折り合いが着かず、引き受けてくれなかった。その事で平岡は激しく落ち込んでしまっていたが、そこは特に気にする必要は無い。
「みたいだね。ほぼ毎日、仕事が入っているらしくて、あとギャラの方も多少なりとも関係はあるみたいだね。平岡さんが薦めてくれた声優は、今人気絶頂のアイドル声優みたいな人たちだったし、普通の声優とは扱いが違うみたいだね」
「そんな中、先輩の一押し声優が引き受けてくれて良かったですね」
消去法ではあるが、伊吹まどかが残っていたのであった。
「まだ正式じゃないけどね。でも、マネージャーさん曰く、事務所的には何の問題は無いみたいだから、こちらから正式に決まったと連絡すればOKだって」
「そうなんですか。この企画、最後まで無事に上手くいくと良いですね」
内心、自分の企画が正式に動き出すことより、妹の声にそっくりの伊吹まどかに会えることの方が嬉しいと思っていることを、薫たちに気付かれないように胸の奥に押し留めていた。
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