人外に近づくケーマさん。

前回までのあらすじ

ロロナとリシアが捕まった。

ケーマさんは、ふたりがいると思われる塔に入る。


――――――――――――――――――――――――――――



「よし……」


 オレは松明に火を灯す。

 ファイアーボールも使っているが、念のためというやつだ。


「これ頼むな」

「いいいいっ、いのちに代えても!!」


 フェミルは松明を受け取ると、両手でガシッと握りしめた。

 頭の耳もお尻の尻尾も、緊張で張りつめている。

 犬とかウサギの獣人というより、猫の子みたいな感じだ。


「そこまで気張らなくてもいいぞ? あくまでも予備だから」

「ひゃいっ!」


 緊張しまっているのだろう。声はうわずっていた。

 オレはローラの後ろに立つと、背中を突いた。


「よし、行け」

「先頭アタシ?」


「罠がある可能性は高いからな」


「それでアタシを先頭にするのっ?!?!?!」

「大丈夫。多少のケガならヒールで戻る。死ななきゃ安い」

「ケガは前提?!」


「そういうことなら、わたしが先頭でも構いませんが……」

「それはダメだ。ヒールですぐに治ると言っても、ケガしたら痛いだろ?」

「どーしてその国士無双なやさしさを、アタシには向けてくれないわけぇ?!?!?!」


「そこはやっぱり、人間として……?」

「ケーマのドエスうぅ!!」


 アホの子ローラは涙目で叫んだ。


「っていうかアタシのケーマなら、トラップぐらいは見てから回避できるでしょ?!」

「無茶苦茶言うなよ」


 なんて話をしていたら、横手にあった壁から矢が飛びだしてきた。

 パシリと掴んでベキッとへし折り、海砂の中に捨てた。

 何事もなかったかのように言う。


「無茶苦茶言うなよ」

(とてててて)


 ローラは無言で海砂のところへと行き、沈みかけていた矢を拾ってきた。


「ん!」

「……」

「ん!!!」


 やれやれだぜ。

 オレが先頭になった。

 ファイアーボールを右手に、ラセン階段を登った。


 じゃりっ……、じゃりっ……、じゃりっ……。


 一歩踏みしめるごとに、不気味な音が響いた。

 ヒュオォ――と吹き抜ける風の音も、地の底に沈みゆく亡者の声のように聞こえる。


「ふえぇん……」

「はうぅ……」


 ローラとフェミルが、五段下で震えてる。

 無理もない。

 ただでさえ不気味で横に落ちたら終わってしまいそうな場所の上、かなりの頻度でトラップがでてくるのだ。


 今もガチャリと踏んでしまった。

 壁からビュッ! と槍がでてくる。

 素手で掴んでへし折り捨てた。


 そして十段ほど先に進むと、またも足元がガコッとへこんだ。

 壁から紫色の毒のガスがでてくる。


「ケーマ!」

「ケーマさま!!」


 ローラとフェミルが悲鳴をあげる。


「げほっ、げほっ」


 オレは軽くむせながら、ガスを素手で払って言った。


「気をつけろよ。これかなり強い毒だわ」

「かなり毒って言うんなら、もっと強い毒を食らってるみたいな姿を取るべきじゃない?!」

「いやまぁ、理屈ではそうなのかもしれんけど」


 なんて会話をしていたら、頭の中で音が響いた。

 てれれ、てってってっー。


 レベル    1681→1716(↑35)

 HP      22437/22652(↑315)

 MP      22157/22157(↑165)

 筋力      23010(↑410)

 耐久      24860(↑161)

 敏捷      22816(↑250)

 魔力      21654(↑400)


 上昇スキル

 毒体質LV3 250/500(↑270)



 あがりすぎいぃ!!

 もう本当に、強烈な毒であったことがうかがえる。

 つーかレベルあがるんだな。

 天然の植物由来の毒で作ったガスだったりするんだろうか。


 以前にオレは、ニワトリを食っていた。

 この世界のニワトリには、軽い毒があった。

 しかしレベルはあがってた。


 つまり毒であるからと言って、レベルがあがらないわけではないのだ。

 にしてもまさか――。



 毒ガスであがるとは。



 あとは恒例というか、定例のような謎のスキルも身についた。

 それがこいつだ。



 げほげほLV2 0/150


 ◆スキル解説・げほげほ

 めっちゃくるしい。

 いき、できない。

 たすけて。



 スキルにつける説明じゃなくないっ?!?!?!



――――――――――――――――――――――――――――

異世界エルフチェーンソーもよろしくお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881992866/episodes/1177354054882252146

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