悪の総統はじめました

瓜蔓なすび

俺と悪の組織編

第1話 戦慄! 悪の組織ヴァイスインペリアル!

1-0


 突然だが、皆さんは悪について、一体どうお考えだろうか?


 世界は、悪であふれている。


 なんて、いきなり言い切ってしまったが、まずは安心して欲しい。


 これは別に、世間に対して斜に構え、厨二病的なことを言っているわけではない。

 もちろん哲学的な話でもなく、右や左の思想的な話でもない。


 そもそも、ただの高校生であるこの俺に、そんな世の中のなんたるかなんて、分かるわけがない。


 これはもう少し、シンプルな話だ。




 多くの子供が夢中になる、正義のヒーロー。


 テレビの中で縦横無尽に活躍し、弱きを助け、強きをくじく。

 世界を自らのものにしようと暗躍する悪を倒し、正義をす。


 それは例えるなら、五色に色分けされ、爆発と共に現れる五人組であったり。

 よくバイクに乗っている、孤独な改造人間だったり。

 時間制限付きの、別の星からやってきた光の巨人であったり。

 別の世界の女王様とか、神様なんかに選ばれた女の子達であったりする。


 そんな素晴らしい正義の味方の活躍に、憧れたことがある人も多いことだろう。


 しかし、ならば、そんな正義の味方に打倒されてしまう者たちのことも、皆さんは覚えているだろうか?


 世界征服のためと言いながら、なぜか幼稚園の送迎バスなんかを襲ってみたり。

 正義の味方を倒すのが目的のはずなのに、なぜか相手の変身ポーズや、必殺技の発動を律儀に待ってみたり。

 初登場した時は、正義の味方より圧倒的に強いのに、勝てる勝負でも、なぜか相手を見逃し続け、最終的に敗北してみたり。

 突然の内ゲバで弱体化し、うっかり滅んでみたりする。


 そんな、正義には決して勝てず、延々と負け続けている割には、最後の最後まで、余裕のポーズは崩さない、悪のつどい。


 そう、いわゆる悪の組織、と言うやつである。


 ここで、冒頭の発言を訂正したい。あれでは、言葉が足りなかった。


 世界は、悪の組織で溢れている。


 なにをバカなことを言っているんだ。


 誰もが、そう思うことだろう。

 その気持ちは、分かる。

 

 俺自身も、もしそんなことを本気で言い出す奴がいたら、まずは相手の正気を疑うだろうし、思い切り笑い飛ばすかもしれないし、そいつの精神状態を、本気で案じてしまうかもしれない。


 とりあえず、その言葉を信じることなど、しないだろう。


 だがしかし、これは真実なのだ。


 世界には、悪の組織が存在しているという、シンプルな真実だ。


 どうして、そんなことが分かるのかって?


 それは、これから話そう。 


 これから話すのは、俺と、――悪の組織のお話だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る