饒舌と寡黙のブラックマンバ #13 シシリー・マッツ

「ノエル。ここからは知識として知っておけ。おれたちイーギスが避けては通れない相手、シシリー・マッツの起源をな」


ミルクを溶かした珈琲を口に含む。

長くなるかもしれないからと、気を利かせたライムが給仕してくれたのだ。

オリバーの視線はひたすらノエルを向いている。

「今から百三十年前の炭鉱都市レッキンゲンでこいつらは生まれた。正確な記述もねえし、内部の人間じゃねえから誰も詳しいことなんざ知らねえが、まあ割と大昔からあるってこった。イーギスより古いぞ」


ノエルよりも一年先輩のライムにとってはオリバーの語りは既知の内容だろう。

しかし初めて聞くかのような面持ちで静かに耳を澄ませている様子はノエルにとって尊敬できるものだった。

「今の頭首はファビオ・シシリーという名の爺さんで四代目になる。ずっと世襲なんだよ。で、この組織をここまで巨大化させたのはこの爺さんの手腕によるものだ。取り巻きの幹部どもも優秀なやつが多いと聞く。何人か面を拝んだことがあるが、確かに”そこにいる”のが惜しいヤツもいるな」

そこまで言って、オリバーはカップに口を付けた。

喉を湿らせる男の表情をじっとノエルは見つめる。


「この街にやつらが移ってきたのは三代目のときだ。中に商売センスのあるやつがいたんだろう。金融、不動産、運輸といったまっとうな事業に参入して一気に勢力を広げていった。もちろん大本は非合法だ。だが、今では、傘下には堅気のフロント企業も数多い。だから、そうとは知らず、シシリー・マッツのグループで働いている真面目な一般市民はその実、かなりいるんだよ」

腕組みをするオリバーの説明に聞き入るようにノエルは真剣な表情を浮かべた。

タトゥーの入った太い腕には薄くなった裂傷と思われる傷跡が何本も走っている。


「確か、エウロア陸運サービスやデラウフェウ銀行などはその一つなんですよね?」

ノエル同様に黙って聞いていたライムがノエルの知っている単語を挙げた。

まだマーセルに来て日が浅いノエルでもその二つの企業は知っている。

自分が利用したことはないが、利用者は多いと評判だ。

「ああ、だからある意味でマーセルの発展に貢献してきた側面も否めないってわけだ。一見しただけじゃ見分けは付かねえだろう」


ここまで聞いてノエルは初めて口を挟むことにした。

素朴な疑問がひとつある。

「それでも悪党の企業なんでしょ?なんで市民が知らないままでいるの?良くないことじゃん」

眉根を顰めるノエルにオリバーはニヤリと唇を歪めた。

「…なるほど。この状態はおかしいって言いたいんだな」

「そうだよっ。マフィアなんて存在してたら善良な市民が困るじゃない。いくらちゃんとした企業を持ってるからって、そういうのは伝えたほうがいいんじゃないの」

茶化すような言い方にノエルは口を尖らせる。

だが腕組みを解きテーブルに身を乗り出したオリバーの表情は一瞬で真剣なものに変わっていた。


「だが、そうすればどうなる?ことは良い悪いっつー段階は終えちまっててな」

「え?」

「良くないから取り除く。なるほど、言葉にすればシンプルだな。だが、すでにあるものを失くしちまえば次に来るのは痛みだ。この場合、その恩恵を受けている市民たちにな」

「…そりゃそうなんだけどさ。マフィアの企業何て信用ならないんじゃ」


「確かにやつらは悪党だろう。そこは同意するぜ。しょうもねえことばっかしやがってと、俺だけじゃなく、ヱテンナさんを筆頭にイーギスの幹部は相当頭が痛えだろうさ。でもな、ノエル。そういう言い方は外では絶対にするなよ」

言い切り、真一文字に結んだオリバーの口元が余韻を持ってゆっくりと再び開く。

「それとこれとは話が別なんだよ。さっきも言ったがな、やつらは雇用創出というプラスの面を、その日暮らしの物乞いも多いマーセルにもたらしちまったんだ。マーセルが華やかだと?違うぞ。しかしそう思っている人間が多いのは残念だ。勘違いするなよ、俺は別に連中の肩を持ってるわけじゃねえ」


「人の口に戸は建てられねえ。気づいている奴らも当然いるだろう。だが、今なおこの秩序が保たれているのは、広めることが良いことだと思ってねえからだ。違うか?ばらせば激震が走る。あらゆる動揺が一瞬にしてマーセル中をかけめぐるだろう。痛い思いをするのはシシリーだけじゃねえ。無垢な人達には何が襲い掛かってくるだろうよ」

第二の州都マーセルは聖シオン内で最も経済的に成功をおさめた街だ。

そして当然人口も多い。

跳ね返ってきた衝撃はマーセル経済の信用にヒビを入れる恐れを内包している。


「それを恐れて、今のままであるのを選んでいるんだよ。いいか、勘違いするなよノエル。これは正しい正しくないという単純な問題じゃねえんだ。極めて現実的な選択肢の一つなんだよ」

「…うーん、分かるんだけど、なんていうか、これってあたしの頭が固いのかな。まだちゃんと腑に落ちないよ」

片手で側頭部を撫でながら、ノエルは唸り声を上げる。

「まあ、そんなに深く考える必要はねえ。今言ったことが全てでもないしな。あくまで選択肢の一つにすぎねえってことよ。ただそうすることが理にかなっているからそうしただけであって、他にベターな策があるならそっちを取ればいい。それが難しいんだがな」


ゆっくりと吐かれた男の言葉の文節には妙な説得力があった。

何も難しい理屈ではない。

この街は色々なものが折り重なって構成されている。

一般市民だけではなく、イーギスもあれば、鏡鷹隊もあり、マフィアもある。

人種も文化も様々で一つとして同じものがなかった。


そんな玉石混交な現実が選んだ今のマーセルの在り方をノエルは尊重している。

郷に入れば郷に従えと言う先人の言葉もある。

それに、そもそも真っ向から異を唱えるだけの知識も能力も十八になったばかりの自分が持っているわけもない。

押し黙るノエルの横でライムが座り直し小さく身じろぎした。


「イーギスで学ぶわたしたちとしては、市民活動への悪影響は一番避けないといけないことです」

ノエルが首を巡らせると両の拳を膝の上に置き、彼女は俯きながらも力強く言い切った。

「警察もここに足を踏み入れないということは、つまりはそういうことなんだと思います」

市民生活の隅々に入り込み、人々の日常を支える存在になった非合法組織ほど扱いづらいものはない。

下手に触れば社会全体への反動が大きく、マーセル警察も迂闊に手出しできないのは想像に難しくない。


「お前の言い分も理解できるさ。だから無理に納得しろとは言わん。でもな、良くも悪くもマーセルはこういう歴史を重ねてきた。そしてその中で歴代のイーギス学長も選んできたんだよ、やつらとの共存共栄の道を」

男は峻厳な面持ちで口を動かし続ける。

光があるところに影は存在する。

そして強い光は強い影を生む。濃淡の激しいマーセルという街の素顔を見た気がした。

ノエルは自分の中で何かが張りつめていくのを感じずにはいられなかった。


言って聞かせるようにオリバーは続ける。

「知らぬが仏って言葉もあるだろ。だがあいにくこの言葉は一般人だけに適用される便利な代物でな。叩けば埃も出るだろう。だが彼らの日常を奪う権利は俺たちにはないんだ。常に胸に秘めておけ。俺たちの存在理由は何だ?そこを忘れるな」

戒めにも似たオリバーの言葉にノエルは喉を鳴らす。

言葉の重みがずしりと肩にのしかかるようだった。

イーギスの存在理由はロキからもさんざん聞かされているが、他国からの脅威に対する防衛だけではない。

一般市民の安寧を保全することもその一つだ。


守るものがあるから自分たちは存在できる。

それがなければ、本来存在する必要のない”過ぎた存在”なのが自分たちイーギスだ。

「ちょっと話が込み入りすぎたな。ちょっと視点を変えるか」

これまでのシリアスな雰囲気を振り払い、打って変わった気軽な調子でオリバーはノエルとライムの二人に視線を向けた。


「先の戦争が原因で警察の数は激減。厄介なことに、街のサイズの割に監視するモンが少ねえ。裏返すと、俺たちが活躍しなくちゃいけねえ状況が増えるって事にもなるんだが。まあ、サツが少ないことをいいことに、好き勝手しやがる馬鹿どもも多いから、街に出れば接触することもあるだろうな」

「そう言えば、一週間前にフィッツロイさんがひと悶着おこしたばかりですよね。一か月前には新入生の女の人が巻き込まれたようです」

ライムが声を上げる。

「ジャックのやつか。大方、あいつの強すぎる愛校心ってやつが逆にでたんだろ。ったくしょうがねえやつだな」


知らない固有名詞が出てきたが、ノエルはここはスルーした。

「新入生の方はよく知らねえな。無事だったのか?」

「なんともなかったみたいですよ。学生の間では陰で結構話題になったので。私もちらっとしか見ていませんが、褐色の肌に金髪の女生徒で、何だか雰囲気が怖かったです」

「へー、褐色って人目に付きそうな外見だね」

何かがノエルの中で引っかかるが思い出せない。

「じゃあ、結局さ、あたしたたちはどうしたらいいの。やつらを見た時に見て見ぬふりをするわけじゃないでしょ?」

菓子を口に放り込むオリバーを見ながらノエルは質問した。


つまるところ、問題はここなのだ。

指針がなければ行動できない。

それを理解せず間違った行動に出て、イーギスに迷惑をかけるのだけはごめんだ。

「もちろんだ。ただ会社と同じように、やつらかどうかは見た目では分からん。でもそれじゃ困るだろ。だから俺がお前にとっておきの見分け方を教えてやる」

目尻に笑みを刻んだオリバーがテーブルに片肘をつく。心なしか、ドヤ顔なのが気になるが。

「暴れてるやつがいたら、それが目印だ」



いじめっ子たちを退治する腕白少女。

これは地元のレーンヴァルトにおけるノエル評だ。

幼少時からノエルが通っていた剣術道場では男子を含めても同年代に好敵手と呼べる相手はおらず、単純な力比べになると分が悪いこともあったが、多くの場合で後れを取ることはなかった。

力で勝てないなら他の何かで優位に立てば状況はひっくり返せるからだ。

普段やんちゃな男子もノエルの前では途端に大人しくなることを町の住民はほとんど知っている。


師範からは正義感や倫理観というものを叩き込まれたし、先に通っていたルカとライは強きをくじき弱きを守るという精神を心の底から守っているようだったので、彼らに憧れるノエルはそういう役回りをこれまで以上に率先して務めるようになった。

何かあれば首を突っ込む癖が染みついたのもちょうどこの頃からだ。

だから、暴れてるやつがいたら止める、ということは改めて意識するほどのことではない。

ノエルにとってはもはや日常的な動作の一つでしかない。


脱力したノエルはドヤ顔で言う目の前の大男を軽く睨んだ。

「…そんなの、当たり前じゃん」

「言ったろ。普通に仕事してやるやつもいるし、見た目は分かんねえんだ。まさか、怪しいヤツラを一人一人問いただすわけにはいかねえだろ。ただ、街で馬鹿なことをしてるやつがいたら止めなきゃいけねえ。その時、シシリーかどうかは関係ねえ。結果それがシシリーの仕業だったとしても、俺たちがやることに変わりはねえよ」

ノエルとライムの顔を交互に見比べながらオリバーは続ける。


「ただ暴力だけに訴えるただの武闘派集団だったら話は早えんだよ。一昔前のようなな。それなら、イーギスの最大火力をぶつければいいだけだ。鏡鷹隊も黙っちゃいないだろう。だが、時代の変化とともにこいつらは姿をうまい具合に変えて適応してきた。だから、今なおシシリー・マッツってもんが存在してるし、そいつらを抑えることも俺たちの役目の中に入ってきたんだ」

国外から迫りくる敵意の排除だけではなく、警察や鏡鷹隊が国内反乱分子との衝突も辞さないという理屈は分かる。

だが、イーギスもそれをするという言葉はノエルに少なからず驚きを与えた。

「ねえ。改めて確認したいんだけどさ、警察とあたしたちって何が違うのかな。それ聞くと、なんか、よく分かんなくなってきたよ」


自然ノエルの顔は曇り気味だ。

理解が追いついていないのは明らかだった。

そんなノエルに向けて腕組みしたオリバーは短く告げる。

「大人と学生だ」

「ねえ、オリバーさん。今のあたしの顔は十分真顔だと思うよ」

オリバーの顔も十分真顔である。

「分かってるよ。そんな睨むな。でもな、当たらずとも遠からずなんだぜ?」

「オリバーさん、流石にそれは大雑把すぎないかと」

苦笑するライムが小さな声で突っ込みを入れる。


「ん、何なの一体?」

少しイライラした顔のノエルが再び口を開く前に、オリバーが菓子の乗った皿を寄越してくる。

「いいか、警察とイーギスは比較対象にならねえよ。するなら警察と鏡鷹隊にしな。ざっくり言うと、その二つの下にあるのがウチって捉え方で十分だ」

無言でチョコレートを摘まみ、心配げな表情のままノエルは口の中に放り込む。

「ライム。お前が今度説明してやれ。なかなか本題にはいれねえ」

わざと音を立ててオレンジジュースをすするノエルに目の前の男は神妙な面持ちで口を開いた。

「で、色々脇道にそれたりしたが、こっからがお前が聞きたかった本題だ」


「そこの跡取りがお前がムカついていると言ってる、さっきのジャスなのさ」


そう宣言したオリバーがノエルの反応を見守るように見つめる。

隣のライムも幾分神妙な顔つきで自分を見ているのが感じられた。

時間にして数秒。瞬き一つせず三人はしばらく見つめあう。

ノエルは手元のグラスに紅茶を注ぎ少し飲んだ。

口の中に残ったままのチョコの甘さが喉の奥に流されていく。

いつしか食堂は落ち着きを取り戻し、遠くではランチタイムの食事にありつく生徒たちの姿が目に入った。

揉め事は慣れっこなのか立ち直りは早い。

思えば結構長い時間話している気がする。

時刻は正午を少し回っていた。


「…マジ?」

「マジだ。天地天命にかけて」

「オリバーさん、天地神明にかけての間違いだと思いますよ?」

身動き一つせず、目線だけを動かしライムが真顔で突っ込む。

「そうとも言うかな」

へらへらと笑うオリバーだ。


「愛想が悪くて、ぶっきらぼうで、俺様気取りで、上から目線のボケナスで、目つきも悪けりゃ口も悪い、あのいきりくさった根性曲りの危険人物があろうことかマフィアの跡目っ?冗談でしょ?」

「お前は罵詈雑言の天才か。しれっと言いやがって。でも嘘じゃねえ」

真顔のライムがこっくりと頷く様子を見たノエルはオリバーに再度向き直った。

「あのさ、素朴な疑問一ついい?なんでそんなやつがここにいるの?」

当然思考はここに行きつく。

他に聞きたいこともあるが、それらは一旦後回しだ。


「さあな。それは本人に直接きけ。まあ俺がお前に伝えられるのはそこの御曹司がいるってことだけだ。それを受けて、お前がどうするかはお前が決めればいいことよ」

あっけらかんと言い放つオリバーはノエルに口を挟ませずに一気に続ける。

「マフィアの息子だからって別に気兼ねすることはねえぞ。遠慮もな。特別扱いだって俺はしてねえ。一人の生徒として接すればいい。当たり前だが、やつもちゃんと学費払ってんだからな」


あの男の悪いところを列挙すれば、マシンガンのようにすらすら言える自信がある。

自らの権力を鼻にかけたり立場を悪用するようなやつだったら、もっといけ好かない思いをしていただろう。

「んー、まあなんとかあたしなりにやってみるよ」

そもそも出会い方が出会い方だった。

あの人を寄せ付けないような刃物のような性格なら普通の邂逅など望むべくもないだろうが、せめてもう少しマシな出会いをしていれば、ここまで悪感情を抱くこともなかったとは思う。

一つ先輩だが同じ科である以上、顔を合わせてしまうこともこの先出てくるだろう。


しかし、あの殺気立った一匹狼との会話などこちらから願い下げだ。

少々過剰反応かもしれないとは自覚しつつも、ノエルに改めるつもりもない。

強いて言うならば、同級生じゃないことがせめてもの救いだ。

これで同い年だったら、卒業まで同じ時間を過ごすことになる。

それは流石に勘弁してもらいたい。


とはいえ、親が危ない方面の有名人であっても、ここイーギスに置いてはジャスも大勢いるうちの一人の生徒であることは頭の中では理解できる。

受け入れるのに時間がかかりそうなのは心情的なブロックがあるからだ。

「でも、一つアドバイスするとしたら、お家のことには触れないほうがいいと思いますよ」

ライムの言葉にノエルがはっと思い出す。

「ライムがあいつをシシリーって呼んだ時さ、血相変えてたけど何あれ?なんか関係あるのかな」


「理由は分かりませんけど、去年、冗談のつもりでそれに触れた男子生徒が彼に病院送りにされてますね」

「誰?」

「ノエルは知らないと思いますが、リンさんという槍術科の三年生です」

「あー」

ノエルが初日に出会った禿頭の男の名前だった。

訳も分からず殴りかかられたことを忘れはしない。

大人しくサンドバックになってやる謂れはないので、ノエルは奥の手を使った。

そのおかげでこの通り今日も元気にピンピンとしているノエルに対し、反対にあの男はピンピンとしていないだろう。

さぞかし最悪の休日を送っているに違いないが、自業自得というものだ。


ただ、確かにあの男ならやりそうだ。

大方年下で愛想のないジャスの触れてはならないものとやらに触れてしまい、あえなく返り討ちにあったと言うところだろうか。

「どうかしましたか?」

「ううん、なんでもないよ。でもさっ、名前を呼んだだけでキレるなんてねえ」

「ジャスさんはわたしには警告だけでした。わたしあの時、絶対に殴られるって思いましたから。あの、ノエルも本当に気を付けてくださいね?」

緊張の面持ちでライムに心配される。

彼女はなぜジャスを恐れているのか。

確かに危ないやつだからライムの性格なら怖がるのは分かるが、もっと別の何かがライムを過敏に怯えさせているように思える。


再度猛烈に知りたい欲求に駆られるが、待つと言った手前、下手に詮索することだけはしたくなかった。

「まあ、人間だれでも一つや二つ触れてほしくないことはあるさ。あいつも例外じゃない」

背中を伸ばしたオリバーが背もたれにもたれかかった。

ぎぃっと音が鳴る。この男の体重ならどんなに質のいい椅子でも長くは持たなそうな気がした。

「俺が言うのも何だがな、構えなければジャスは無害だ。悪名高いマフィアのボスが親父とはいえ、やつも同じとは限らん。自分から何かをするわけでもないしな」


オリバーの話はこれで終わりかと思われたが、まだ続きがありそうだった。

そう思ったのは彼の表情からどこか牧歌的だった笑みが消え、似つかわしくない真剣みが増してきたからだ。

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