第1話 お雑煮

これは、とある戦場の物語である。


「お正月といえば、お雑煮ぞうにですよねえ」

「なぜ君がここにいるんだね、ゆかりさん」

唐突とうとつに始まったが、これはとある戦場の物語である。



「お雑煮が食べたいんですよ~! おぞうに~!」

繰り返すが、これはとある戦場の物語である。

話を聞いてほしい。いやもうあきらめた。そんな感情を内に秘めながら彼、膳場某

は料理に取り掛かるのだった。




「お待たせしました。お嬢様」

 はぁ、と若干疲れた雰囲気を醸し出しながら、膳場は彼女にお雑煮を提供するのだった。


 そもそも、お雑煮とは何なのか。お雑煮とは、日本の正月に欠かせないアレであり。風物詩だ。

 しかしながら、色々なタイプのお雑煮が日本にはある。共通するのは餅が入っているスープ的なヤツということだけで、入れる具材はさまざまであり、味付けでさえ共通ではない。お雑煮は、バラエティに富んだメニューだとも言える。地域によって、家庭によって、さまざまな雑煮があるのだ。お雑煮に使う餅の種類でさえ、日本全国で共通というわけではないのだ。


「あ、このお雑煮のおもち丸いですね。いつものと違う~」

「……うちの母方の実家は西日本のほうでね。

 大まかに言って、西日本は丸い丸餅、東日本は四角い角餅をお雑煮に使うんだよ。それで餅や味付けにも違いがあってね、」

膳場のトークは正月から絶好調だった。しかし、ゆかりはそんなことほとんど聞いちゃいないようだった。


「へえ~」

うにょ~んと餅を伸ばしながら、


「えへへ~」






「そういえば、あんこが丸餅の中に入っているお雑煮もみたことあります。テレビで」





「」





「」

「送っていくよ」

「膳場さんのそういうとこ、だーい好き」


【今日のゆかりメモ】

東は四角い。西は丸い。



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