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  • 第二話 後編への応援コメント

    真白様の企画から読みにまいりました。
    えっと、直球で伝えたい一言「この作品、好きです!」

    Lina Ictus Fluctus 様のような、丁寧な読み込みかたはできませんが…。
    各章に割り当てられた『源氏物語』の巻名が「人がそこにいるようで、もういない」、「確かに触れたはずなのに、手元に残らない」、そのような人物たちであるため、この作品でも、そのような関係性を示していたのかな、と思っております。
    特に、最初に「幻」を持ってきているあたりが、紬の「物語は終わっている」状態を示しているようで…。

    人が人を失ったあとに見るもの、悲しくて切ない喪失の物語として受け止めさせていただきました。

    作者からの返信

    コメントありがとうございます。
    「この作品、好きです!」を見た瞬間、嬉しさで飛び上がりました。
    丁寧に読んで頂けて本当にありがとうございます。

    「確かに晴れたはずなのに、手元に残らない」
    自分もその辺りを意識して書きました。
    あの日見たものは幻かもしれない、でももしかしたら本当は幻じゃないかもしれない。
    案外、人間の思い出はそんな不確かな出来事の連続で出来ているんじゃないかなと思っています。

    「紡の物語は終わっている状態を示しているようで…」
    その通りだと思います。
    多分、紡の物語はあの日から終わる定めだったのだと思います。
    両親との日々、結と輪との日々、それらは終わりを迎えてしまう。
    しかし物語の終わりは新しい物語の始まりでもある。
    きっと紡は第二章に向かっているのです。
    しっかりと確かな足跡を残して、心の赴く方に。

    なんてことを考えながら書きました笑
    紡視点で書いていたので感情移入してしまって恥ずかしいです。

    とにもかくにも感想ありがとうございました。
    本当に嬉しいです。
    今度ヤギバイト、読みに行きます笑

  • 第二話 後編への応援コメント

    「【読み合い】余韻のある物語を読みたい」からきました。
    ホラー作品にも、怖さの奥にある仕組みを読む面白さを感じています。
    少し長文になりますがお許しください。



    雪の日、暗い部屋で古い本を読んでいる紡。障子の向こうに人影が映って、「私、あなたのことが好き」という声が聞こえる。けれど障子を開けても、誰もいない。足跡もない。

    この出だしに、引き込まれました。

    古い本、白い雪、黒い文字、誰もいない縁側。紡と結と輪、三人の幼馴染の関係。読みはじめは、怪異の気配をまとった百合ホラーとして、あるいは三人の関係が少しずつ変わっていく話として読んでいました。

    この作品の奥で静かに支えているものについて、私なりに考えました。

    最初に気になるのは、当然「あの声は誰だったのか」「雪女の本はどこへ消えたのか」「結が語る神隠しとは何だったのか」だと思います。これらは最後まで説明されません。声の主も、本が消えた理由も、神隠しの内容も、分からないまま置かれています。

    けれど読み返すと、この作品はそれらを解明する方向には進んでいないように思いました。むしろ、分からないことは分からないまま残したうえで、紡にとって「これは確かだ」と言えるものの種類が、冒頭と終盤で変わっていく話なのだと感じました。



    一「幻」で、紡は蔵から見つけた古い本を読んでいます。黒い文字と白い頁が、読んでいるうちに「もう目では追えないほど」に混じり合う。その瞬間、空気が揺れて、障子の向こうから声がします。

    「私、あなたのことが好き」

    障子を開けても、誰もいません。雪の上には足跡ひとつない。

    普通なら、ここで「誰もいなかったのだから、声も気のせいかもしれない」となるはずです。けれど紡にとっては逆で、「誰かがいたということ」と「誰かが好きと言ったこと」だけが、確かなものとして残ります。

    白い雪の上に、墨が一滴だけ落ちて、消えずに残るように。

    中盤、結は紡に「東京の大学で妖怪を勉強したい」と打ち明けます。そのきっかけとして語られるのが、紡の家で見た古い本でした。一「幻」で紡が一人で読んでいたあの本が、ここで結の将来の話につながっていく。

    紡は「別に、全然悪くないじゃない」と応援する言葉を返します。けれど同じ日の日記には、「行かないでほしい」「言えない」と書きます。


    言えない。


    このひとことが、形を変えながら何度も出てきます。

    夏祭りの日、紡が高熱で寝ている間に、結と輪は付き合い始めます。

    秋、三人で出かけた川辺で、結から「紡はどう思っているの?」と聞かれた紡は、「私は私だし、結は結だし、輪は輪」「みんな違うの」「私に合わせる必要なんてないわ」と言ったあと、こう続けます。

    「私、あなたのことが、大嫌い」

    地の文は、すぐにそれが「嘘。嘘ばっか」だと教えてくれます。好きなのに、出てくる言葉は逆になる。そしてそのとき紡の視界に流れる黒いものは、「文字になって、文になって、一冊の本になって」いく。

    ここから、「読むこと」と「書くこと」の位置が、少しずつ入れ替わっていくように感じました。

    七「澪標」では、蔵にあったはずの雪女の本だけが見つからなくなります。

    「ない。ない。ない。」

    なぜ消えたのかは書かれません。誰かが持っていったのか、最初から記憶違いだったのか、それも分からない。

    ただ、その本がない、ということを確認したあとで、紡は商店街でペンを買い、新しいノートを開いて、初めて自分で書き始めます。

    ここを「失われた本を、卒論で取り戻した」とまとめてしまいたくなりますが、それは少し急ぎすぎだと思いました。消えた雪女の本と、終盤で卒論として向き合っている物語が同じものなのかどうかは、本文では確認できません。確認できないことは、確認できないまま、並んで置かれている。

    本を読んでいた紡から、物語を書こうとする紡へ。

    そのあいだに何があったのかは、説明されません。説明の代わりのように、八「絵合」の冒頭で、一「幻」と同じ書き出しが戻ってきます。

    「雪が降っていた。その日は一日中、外で細かな音が鳴っていた。」

    一「幻」では、この文のあと、紡は古い本を読んでいて、文字が目で追えなくなる瞬間に声がしました。八「絵合」では、紡は一冊の文庫本を閉じ、卒業論文として「私の物語の始まり」を書こうとしています。そのペン先がノートに触れた瞬間、また声がします。

    「紡」

    紡は「結?」と呼びますが、返事はありません。窓を開けても、そこには一面の白い雪があるだけです。

    一「幻」の声が「読むこと」の限界で起きたのに対して、八「絵合」の声は「書くこと」が始まる境目で起きているように見えます。場所も時間も違うのに、声が現れるのは、どちらも紡が文字と向き合う境目です。声の正体が同じなのか、結なのか、それとも別の何かなのかは、ここでも決められないと思いました。

    それでも、紡は外へ出ます。

    ここで大事なのは、再会が確認されることではないと思いました。「気持ちが届いた」という話でもない。紡は「何も分からない、ただ。……会いたくなった」と言ったあと、こう続けます。

    「あの日、誰かが部屋の中にいたということ。私が誰かに好きと言ったこと。分からない。何もかも。……でもこれだけは分かる。私はずっと。あなたが好き」

    一「幻」で確かだったのは、「誰かがいた」「誰かが好きと言った」という、紡の外側にあることについての確かさでした。八「絵合」では、その確かさはいったん「分からない」ものになります。けれど、それと並ぶように、「私はずっと、あなたが好き」という、紡自身についての確かさが新しく置かれます。

    これは、一「幻」で確かだったことがそのまま戻ってきた、というよりも、それとは別の種類の確かさが、初めてここに置かれた、というふうに読めました。

    そしてこの新しい確かさは、六「蓬生」で紡が「私は私だし、結は結だし、輪は輪」と言ったあとに来ています。

    「ずっと一緒」という、三人で共有していたはずの言葉が、いったん個別のものに分けられたあとで、「私はずっと」という、紡ひとりの言葉として戻ってくる。連絡を取っていない二人に対して、です。

    足跡についても、同じことが言えると思います。

    一「幻」では、障子を開けても「たった一つの足跡さえ」ありませんでした。八「絵合」では、紡は「何もない雪の上に、私の足跡を残し」ます。

    これは、誰かへの合図というより、紡が立っている場所そのものが変わったということなのだと思います。障子の内側から、確認する側として外を見ていた紡が、今度は雪の中に、自分の足で立っている側になる。

    最後の一文も、印象に残りました。

    「暖かい雪が深く深く、積もっていった。」

    この作品の雪は、ずっと「肺を凍てつかせる」「目が痛くなるような白」として書かれてきました。冷たくて、痛くて、何もかもを覆ってしまうもの。

    それが、最後の一文だけ、「暖かい」になります。そして「深く深く」という言葉が出てくるのも、この終わりの場所です。タイトルの「深雪」が、ここでようやく本文の感触として立ち上がるように感じました。

    雪に与えられてきた言葉が、最後に変わる。

    その変化が起きる理由は、はっきりとは書かれていません。そこがいい、という言い方は少し雑かもしれませんが、私はそこに惹かれました。

    声の正体、雪女の本が消えた理由、結の神隠しの内容。これらは最後まで「分からない」もののままです。それを補って読みたくなる気持ちは、私の中にもありました。

    この作品が置いているのは、「分からないことの答え」ではなく、「分からないことを抱えたまま、紡にとって何が確かなのか」という、その内容の移り変わりなのだと感じました。

    一「幻」と八「絵合」、同じ書き出しのあいだで、紡が何を読み、何を書こうとし、何を新しく確かなこととして置いたのか。

    読み終えてからも、その二つの同じ書き出しのあいだを、何度も往復したくなる作品でした。

    作者からの返信

    コメントありがとうございます。
    こんなにも丁寧に読んで頂けて、まずはとにもかくにも感謝の極みです。
    私自身、こんなに不親切なお話を投稿して大丈夫かな、と危惧していたところでした。

    この『深雪』では、極力説明しないこと、紡に寄り添った視点で物事を描くこと、を第一に書きました。
    紡はみぞれの日から、物語最後の東京の雪の日まで、きっとまだ心の整理が出来ていないのです。
    だから、彼女の口から自分の心の説明ができないのです。
    黒と白、墨と雪。これらが少しづつ意味を変え、世界の中に繰り返し現れる……これもまた感情が確定していない紡にとっては世界の真のあり方でもあります。
    それは見えそうで見えない月を覗き込むような幽玄の世界であり、失われていく両親や結たちを繋ぎ止めるための、紡の心の防衛線だったのだと。
    彼女なら日記にそう書くだろうなあと。

    なんてことを考えなら書いていました笑
    ひとまず最後はもう一つのテーマの、もののあはれに着地できて良かったです。
    説明しないことは悪文と隣り合わせなので、好意的に捉えてくれる方がいて、非常にホッとした、というのが本当の気持ちでもあります。

    読んで頂けて、しかもこんなにも丁寧な感想まで頂けて嬉しいです。
    本当にありがとうございました!


    最後に、なのですが、作者の私としましては、一章と八章には仕掛けを施してあります。
    もちろん、説明をしていないので、そうも読めるかあ、くらいのものなのですが。
    八章で紡は「あの日、誰かが部屋の中にいたということ。私が誰かに好きと言ったこと」と言います。
    紡の内面の話、とももちろん読めますが、もし物理的な話だったら。
    そして、結が妖怪を好きになった理由は、紡の家で読んだ『雪女』の物語。
    一章で部屋の中にいた人物が読んでいたのは、『雪と、哀れな女の話』。
    一章で部屋の中で本を読んでいた本当の人物とは……。
    解釈の一つに過ぎませんが。
    本編で、どこか気持ちの読めなかった結の心を読み取る補助線になったらなあ、と思っています。