ハロウィンなんて、つまらない

ハロウィンなんて、つまらない。


普通の子供はオバケの仮装とかをして、大人たちからお菓子をもらったりするらしい。だけど、ぼくみたいな施設の子供にそんなイベントはない。ぼくはその日の晩ご飯の後、いつものように年下の子たちを寝かしつけてからベッドに入った。


その夜、ぼくはふしぎな夢を見た。


物音にさそわれて施設の外へ出たぼくは、犬のかぶり物をした人に連れられてカボチャの馬車に乗った。馬車にゆられて行き着いた先は、お菓子の家だ。ぼくは大喜びでかべの板チョコをはがして、つまみ食いした。

家に入ると、仮面を着けた夫婦がおもてなししてくれた。

二人の温かなふんいきに、ぼくはふと両親を思い出していた。

おいしい料理のおかわりをもらったとき、うっかり「ありがとう、お母さん」と言ってしまった。すると、夫人はあわててぼくの口を押さえた。

「ぼうや、だまっておいて。はくしゃく様に見逃してもらっているのだから」

夫人がそう言うので、ぼくは素直にうなずいた。

楽しいひと時はあっという間で、もうぼくが帰る時間になってしまったらしい。仮面の夫婦に見送られ、ぼくは再びカボチャの馬車に乗った。運転手はまた、あの犬頭の人だ。よく見たら、昔、家で飼っていた犬に似ている気がした。


    †


目が覚めたぼくは、なぜだか涙を流していた。

同時に、胸の中がぽかぽかと温かい何かで満たされているような心地がした。


ごそごそとポケットの中を探ってみると、見たこともないお菓子が三つも入っていた。

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